国語科における着語法指導(5)

2011-11-07 | 国語:着語法指導
一文一文をしっかり読ませ、
児童の読解における「抵抗と限界」部分で発問すること
を基本に、国語授業を流しています。

前回は、○×を活用した発問について書きました。
当然、それ以外でも様々な発問の形があります。

当然、難解語句でも、読み取りの足を止めます。

事前に(一人勉強などで)熟語の意味調べは、させますし、
その場で国語辞典をつかって、読み取りもさせます。

しかし、
ただ、難解語句のみをしらべさせることはしません。
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普段の授業であればスルーしてしまう語句
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ついてもしっかり調べさせ、その場で、検討します。


例えば『海の命』


主人公の太一と対峙するのは、巨大なクエです。

さて、クエとは漢字で、どう書くのでしょう?
そして、漢字もあるのに、なぜ、カタカナ表記なのでしょう?

これを、「クエ」という言葉が出てきたときに、問います。
(野口先生の講座で、10年近く前に学びました)

これは、教師が問わないと、
児童は(多分卒業するまで、もしくは一生?)
わからない事です。


それには、教師の教材研究が必要です。
その、教材研究により、45分の指導に、しっかりとした芯と、深みが
生まれるのだと思います。



ちなみにクエは、「九絵」と書きます。
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「九絵」という名の由来は体側にある縞模様。
これを時とともに変化させ体に九つの絵を描き出すと言われる所から来ています。
クエは釣り上げる事が非常に難しく熟練された漁師の業を必要とします。
大型になればなるほど釣り上げるのは困難となり、
市場に上がるのは稀です。その事から「幻の魚」と呼ばれています。
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↑この話を、教師が知っているか、知っていないかだけで、
 授業の深みも変わってくるような気がします。


国語科における着語法指導(4)

2011-11-02 | 国語:着語法指導

児童の読みにおける「抵抗と限界」部分に焦点をあてて
発問をしていくというところまで、前回書きました。

では、実際にどのような発問を意識していくか。

一番シンプルなものは、
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○か×か
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という2択です。

これで、児童の思考を追い込みます。
2択ですから、とにかくどちらかに自分の考えを決めさせます。
そして、全員が考えを持った上で、授業を進めていくのです。

例えば、「ごんぎつね」

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(第一場面における)ごんは、
かわいそうな狐だと思うか?

かわいそうだと思う人は○
かわいそうでないと思う人は×
をノートに書きなさい。
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「ひとりぼっちの~」という表記から、児童は、
かわいそうという意見に流れます。
すなわち、○が多数をしめるはずです。
×の児童は、少数です。

しかし、教師の解は「×」を前提として、
話しあいをすすめていきます。


もっとよく読んでいくと

>(貴重な食料源である)芋を掘り散らかす
>軒先の菜種油に火をつける

これは、人間にとっては「とんでもない」「悪逆非道の」
狐ということにもなります。

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「かわいそう」以上に「とんでもない」狐なのです。
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とんでもない狐、であるから、ごんは、
兵十に命を狙われるわけです。
そして、とあることから、ごんに「償い」の気持ちが芽生え、
そこから哀しい魂の交流が生まれます。


児童は、「かわいそうなごん」というところから思考を立脚させ
読み始めがちですが、それでは、読みの深まりがありません。

そういう、児童の「読みの抵抗と限界」を
○と×の2択で焦点化します。
そして、思考を整理し、話し合わせながら児童の不備/不足/不十分を
再構築していく事が、「着語法」の醍醐味でもあります。









国語科における着語法指導(3)

2011-11-01 | 国語:着語法指導
今回は、発問作りについてです。

まず一つ、誰にでもできる発問づくりを紹介します。
それは「テスト」を分析する事です。

テストの問題は、児童の学力を診断するために、
様々な角度から練られたものが配置されています。

その問題を参考にするのも、発問作りには有効だと思います。

例えば「大造じいさんとガン」のクライマックスの場面。
この場面がテストでも選択されていました。

テスト問題を分析しながら、その内容を発問に変換していくと
以下のようになりました。

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1 残雪はどんな気持ちでハヤブサを攻撃したのですか?

2 残雪は具体的にどのような攻撃をしましたか?

3 ハヤブサは、どういうところが「さるもの」なのですか?

4 戦闘が激しかった様子がわかるところを、
  残雪とハヤブサの描写で一つずつ抜き出しなさい

5 第2の恐ろしい敵とは誰ですか?

6 「堂々たる態度」とは、どのような態度ですか?

7 大造じいさんは、何に心を打たれたのですか
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物語の流れにそって、発問も流れていきます。
書き抜き、描写、気持ち、指示語など、いろいろな学力形成にかかわる
要素が入った発問ができあがります。

全てがこれ(テスト参考)ではいけませんが、
「発問作り」の参考にテストを活用するのは、
(特に初任の先生などには)有効なのではないでしょうか。



国語科における着語法指導(2)

2011-11-01 | 国語:着語法指導
教材文を、一文ずつ子どもたちに読ませながら、
「児童の読み取りにおける抵抗と限界」部分を
発問によりクリアにしていきます。
(野口先生は、不備・不足・不十分ともお話をされます)

「抵抗と限界」とは、児童だけの読解力では、なかなか本意を
読み取れない箇所を言います。

そこのみを焦点化して、精査していくのです。
これを「焦点精査」と言います。

その分、どんな児童でも解がわかる、簡単な問いは
授業の中ではほとんど扱いません。
時間が足りなくなるからです。
すなわち、「全文精査」は捨てるということです。
(ウオーミングアップや補助発問では扱いますが・・・)

児童の抵抗と限界部分。
例を示します。


例えば、「ちいちゃんのかげおくり」
出征に行く父を見送りにきた駅のシーンです。
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「体の弱いお父さんまで、いくさに行かなけらばならないなんて」
お母さんがぽつんと言ったのが、ちいちゃんの耳に・・・
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野口先生は、模擬授業において、

「母はなぜ、ぽつんと言ったのか?」

と問いました。

思い思いの解が出た後、野口先生は「全て違う」と話されました。

野口先生の解は
「(戦争批判は)当時、人前で大きな声で言えないことだから、
 ぽつんと言うしかなかった」
ということでした。

確かに、3年生の子供には、自力では読解できないできない内容だと
納得させられました。
しかし、教える「価値」のあることだとも思いました。
(今から10年前の模擬授業での学びです)