対話 「買い物」

「この前ヌカ床にはまってるて言ったじゃん？」

「言ってましたねはい」

「あの後ヌカが腐った」

「あちゃあ」

「腐ったことに気付かずきゅうり漬けたら、一晩でメロンの腐った味になった」

「いいじゃないですか。カブトムシとか喜びますよ」

「フォローになってない」

「ご愁傷様です」

「最近寒いから油断して外に置いといたのがまずかった」

「素直に冷蔵庫に入れておけばよかったものを」

「冷蔵庫だと寒すぎてうまくヌカが育たないかなと思ったんだよ。でも野菜室に入れてたんだしそんな気にしなくてよかったんだろうな」

「後の祭りですねぇ」

「仕事忙しくて天地返ししてなかったし、遅かれ早かれこうなってたか。あーあ、軽い喪失感だ」

「落ち込みますか？」

「落ち込むさそりゃ。夏からすくすく育ててたんだもの。この喪失感はあれだ。たまごっちが死んだとき以来」

「大分昔の記憶引っ張り出してきましたね」

「ポチッチまで育てたのにカゼで永眠してしまった。享年20歳」

「どんだけ悲しいんだかイマイチわからないんですが」

「言っても750円ですから。普通に買いなおせばいい話。さっさと新しいの買いたいんだけど、お店に在庫無かったんだ。後で注文する」

「冬になると漬ける野菜も少なくなりますよね」

「うん。冬野菜定番の白菜は前言った通り漬けづらいし。大根は温めて食べたいし」

「ああ、鍋いいですね」

「一人暮らしの時は一人用鍋が重宝したよホント」

「色々具をぶち込むのもいいですが鳥肉と白菜だけでもいけますよね」

「ポン酢で食べんのがおいしい」

「いーですねー」

「この前一人用鍋が100円均で売ってたから買ったんだけど」

「100円？安すぎません？」

「うん、1週間で割れた。火にかけてたとこだからアブねかった」

「ある程度金をかけた方がいいですよそういうのは。長く使うものですし」

「何事にも初期投資が大事だなと気付かされたさ」

「いやいや、そんな大げさなことは言ってませんけど」

「大事だ、初期投資は」

「何同じこと2回繰り返してるんですか・・・ははぁ、何か無駄遣いしたなこの男」

「察しがいいが口が悪いなこの男。その通りだ。見よ！じゃん」

「・・・PHOTOSHOPELEMENTS15」

「俗に言うフォトショだ」

「知ってます。画像加工するソフトですよね」

「そう。月払いのダウンロード版もあったがこっちにした。素人だし安さ優先」

「その考えは安物買いの銭失いに繋がりますよ。で、おいくら？」

「12000円」

「まぁ、うん。妥当ですね。使ってみましたか？」

「そこだ問題は」

「どこだ問題は」

「パソコンが古くてインストールできんかった」

「ばーかばーか」

「うるせぇっ！」

「どうすんですかそれ。初期投資どころかただの無駄遣いでしょうが」

「いやぁほんとどうしよう。会社のパソコンにインストールしたらまずいかな」

「一応会社のですしねぇ。好き勝手にやる訳にはいかんでしょう」

「あーあ、どうせならパソコン買うかな。いい機会だし」

「今のパソコン何年使ってましたっけ？」

「多分7年位。当時は最新機種だったから今でも普通に使えるんだけどね」

「言ってもパソコンの世代交代は早いですし」

「ネット環境がおもっくそ遅いんだよね。WIFIが離れてるからしょうがないのかも」

「次は目星ついてるんですか？」

「パソコン全然詳しくないから、友達に教えてもらうかな。画像編集に特化していれば何でもいい」

「詳しくないったってそこは現代の若人、ある程度知ってるでしょう？いっそマックに変えては？」

「デザイナーとか使ってるイメージある」

「感覚的に動かせるとかなんとか」

「本物見てこないと駄目だな。今度仙台行ってみてくる。ついでにいいヌカ床も探してくる」

「パソコンとヌカ床を一緒に探すとか字面だけで酔いそうなパワーワード止めてください」