あともう少しだけ

日々の出来事綴ります。やらずに後悔よりやって後悔。

対話 「傷口」

2015-03-02 23:15:13 | コラム
「僕は血の味がする」
「何言ってんですか?食人族へのPR?」
「漫画『ピンポン』でそんな台詞あったよね」
「それを言うなら「僕の血は鉄の味がする」でしょう」
「血と皿の字が似ているのって何かしらの理由があると思う」
「時期が時期ですから猟奇的な話は止めてください。・・・何で指先を見ているんですかってあら、血が出てますね」
「さっき人差し指を切ってしまった」
「ところでこの前出した写真コンクールの結果ですが」
「怪我にもうちょい触れてほしいなぁ」
「えい」ピトッ
「痛い!・・・物理的に触れてほしいんじゃないの。もうちょっと気遣えって意味」
「まだ血が出てますね。早く絆創膏貼ったらどうですか」
「この部屋に無いからいい。取りに行くの面倒くさいし」
「何して傷ついたんですか。どうせアンポンタンな事したんでしょ?」
「決めつけは良くないぞ。むしろ俺は被害者だ」
「じゃあ説明をどうぞ」
「写真飾る用に壁に大きいコルクボード貼り付けようと思ったのね。そしたらこう・・3次元方向にグニャグニャになってたんだ、ボードが」
「3次元。グニャグニャ。・・・ほう」
「両面テープで2点を固定すると他の2点が浮いて、その逆もまた然りで」
「要はボードが歪んでいたんですね?」
「そう」
「説明下手ですよね」
「俺のイマジネーションに描写が追い付いていないだけだ」
「だまらっしゃい」
「で、ボードの歪みを直すために木枠の端っこ部分に思いっきり力を加えてみたら」
「はいはい」
「木枠がずれて中から金属が出てきて」
「ああ、木枠の固定具が」
「それでズサッて指が切れた」
「面白くもなんともないです」
「面白く話そうとした覚えがない。一応その甲斐あってボードの歪みが直って張り付ける事ができたんだけど」
「指先の怪我って地味に面倒ですよね」
「よく使う部分だから余計にね。けど綺麗に切れたからか痛みが不思議とないんだこれが」
「結構深く切ったようですけど。問題は跡が残らないかってとこですか」
「そうなんだ。最近怪我したとこがアザになって残るようになってさ」
「年ですね」
「いやいや、俺まだ若いから」
「とりあえず傷が開かないように安静にしないと」
「そうだねー指先使う作業とか今はできないよね」
「今キーボード打ってますよね」
「止めなきゃいかんのはわかってるんだけど。でも中途半端な所で止めたくない」
「いつも『落ち』のつかない話しかしてないから大丈夫ですって、突然話を切り上げても。誰も気にしません」
「それはそれで落ち込む。おぉ、見て見て。傷口部分に盛り上がった血が固まった」
「いじっちゃ駄目ですよ」
「やばい、なんか今凄い傷が修復されている気分。血小板?だっけ?が躍動している感じ。俺の生命力がフルスロットルだ」
「こんな些細な傷でフルスロットルになる貴方の生命力が心配です。ところでノってるとこすみませんが」
「何?」
「ボードが落ちてます」
「・・・」
「『落ち』、ついたじゃないですか」
「・・・やっぱ絆創膏取ってくる」

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