「寒くなってきたね」ムシャムシャ
「立秋を過ぎたあたりから一気に冷夏になりましたね。今までの日照りの辻褄合わせをするかのごとく雨も降り続いています。ちょっと降りすぎですけど・・・って、アイス食べてるじゃないですか。寒いんでしょ?」
「冷夏だろうとおいしいものはいつ食べてもおいしいんだ。特に寒いときは濃い味のアイスを食べたくなるものだよ」
「まぁ、この寒い中でガリガリ君食べてたら引きますけど。で、何食べてるんです?」
「チョコミントアイス」
「うわ」
「何だ嫌なもの見たみたいな顔して」
「私ミントは嫌いです」
「食べてる人目の前にして言うことか」
「歯磨き粉の匂いするじゃないですか」
「それは君、冤罪というやつだ。ミントが歯磨き粉の匂いじゃなく、歯磨き粉にミントの匂いをつけた商品が出回ってるって話だよ」ムシャムシャ
「なんでわざわざミントの匂いをつけたんですかね。あれのせいでミントは食べ物の匂いだと認識できないんですよ」
「口の中がさっぱりするからじゃない?」
「口の中がさっぱりするなら梅干しでもなめてりゃいいんです。唾液が出て虫歯予防になって一石二鳥」
「言ってもあれだよ?歯磨き粉にはイチゴ味とかバナナ味とかあるじゃん?あれらのせいでイチゴとかバナナが苦手になったって話は聞かないよ?」
「じゃあミントがそもそも食べ物の匂いじゃないんですよ。ただの香料です。メインにおいてはいけません。同じように匂いの強い葉っぱ他にもありますよね?例えば貴方この前食べてた・・・なんでしたっけ?」
「パクチー?」
「そうそうパクチー」
「あれも癖のある味だけど、肉料理の付け合せにするとおいしいよ?」
「あくまで添え物としてならアリですよ。けどミント味のようにそれを全面に出されると無理です」
「おいしいのに」ムシャムシャ
「あ、同じ葉っぱでもよもぎとかならいけるかもしれませんね」
「・・・どうだろう」
「よもぎ餅の要領で、ほら」
「ほら、と言われても。よもぎ単独で食べると苦いんだよ?お前は和の食材に対して期待し過ぎの感がある」
「歯磨き粉、よもぎ味」
「うわ、ぞわっとした」
「体に良さそうじゃないですか」
「どこに需要があるんだ」
「・・・少なくとも私は買わないですね」
「だろ?てかそもそも草ってのは苦くて癖があるものなんだよ。その中でまともに食えるミントはむしろ優秀な部類だ。それを何だ、自分が苦手だからって貶めるとは。自己中男め」ムシャムシャ
「うぅ・・・アイスを食べながら説教されるとは」
「いつも言いくるめられてたけど今回は俺が正しいこと言ってるな。ふふん」
「悔しいですがその通りですね。ところで」
「何?」
「さっき言ったパクチー、結構な量買ってましたけど」
「・・・うん」
「ちゃんと全部食べました?」
「・・・・もちろん」
「冷蔵庫の隅でしなびた草らしきあれはなんです?」
「・・・付け合わせにすればおいしかったんだよ?」
「パクチー単独でムシャムシャ食べて気持ち悪くなってたでしょ」
「苦くてさぁ・・・あ、いや違うんだ」
「何がです?」
「パクチーは食べ物じゃない。あれは薬なんだ。良薬は口に苦し。逆を言えば苦いものを食べ物として扱うことがおかしいんだ」
「そんな理屈が通じるか」
「よし、・・・よし。わかったわかった。パクチーは薬。そしてミントは香料。これで世は押しなべて事も無し。世界は平和だ」
「ではよもぎはなんでしょう?」
「・・・よもぎは食材って気がする」
「なんでしょうこの違い」
「これ以上の言及はやめとこう。世界平和にはグレーゾーンも必要だ」
「随分ちゃっちい世界があったもんです」
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