対話 「初日の出」

「今年も初日の出を見なかったなぁ」

「ここ数年ずっと見てませんよね」

「完全に眠っていた。そもそも、年越しから日の出まで6時間とちょっとしかないってのがおかしい」

「新年から何言ってんですか」

「俺は7時間は寝ないと耐えられない。つまり日の出までに起きるなら年越し前に寝なきゃいかんし、その逆もしかり。完全なデッドロック状態」

「ただの我がままです」

「日の出の時間を変える訳にはいかんから、大晦日に限って年越しは23時にすべきだ」

「のび太くんでもそんな理不尽言いませんよ。ただ貴方が我慢して早く起きればいいんですよ」

「起きた所で眠いからまた布団に入るのが関の山だし」

「いいじゃないですか。正月の午前くらいグダグダしても」

「あ、そう言えば元旦って元日の午前中を指すって聞いたことある。『旦』の字ってやはり『日の出』をイメージしてるんかね」

「はい、そのまんまです」

「『日の入』もシチュエーション的には同じ旦の形だよね。何故『日の出』だけ贔屓されるんだ、かわいそうじゃないか」

「『日の入』に感情移入する人初めて見ました」

「『日の出』は皆にありがたられて手を合わせてお祈りされるのに、『日の入』はスルー。この格差はなんだ」

「そんなこと言っても『日の出』だって持て囃されるのは元旦だけですよ。明日の『日の出』なんてほとんどの人が相手にしません」

「一番じゃなきゃダメなんだな。何か身につまされるものがある。せめて俺一人でも明日の『日の出』、いわば『翌日の出』を拝むことにしよう」

「勝手に拝んでください。でももう0時過ぎてますから7時間眠れませんけど」

「んじゃ無理か」

「諦めんの早っ」

「来年の自分に期待します」

「来年も駄目っぽい」