不定形な文字が空を這う路地裏

Elegie







零れたまま、冷えて
テーブルで壊死したいつかのディナー、指でなぞると
思い出の腫瘍のような凝固が
声ならぬ声を呟く


すべては陽炎のようだ、カーテンを閉ざして
網膜のスクリーンを流れるサイレント
どんな現実よりも確かに
そこに居る生身のお前


心臓にナイフを突き立て、記憶をもぎ取ろうと思った、鼓動のたびに疼く思いは
なおも
新しい死を産む
そんなに難しい話じゃなかった
亀裂を
より深い底まで広げてしまうことは


早い朝がカーテンの隙間から
俺の消耗を窺っている
視線が疎ましく感じないのは
それがあまりにも圧倒的なせい


マイナス二度の湖の深く、そうと知らずに凍えてゆくような
そんな質感が絶えず浮遊してる
湿度の高い昨日までに
いくつの感情がふやけたのだろう


記憶など何も信じてはいけない、それはジェル状の拘束具のようなもので
どこまでも器用に伸びてくる…もしもその気になれば
呼吸を奪うことだって出来るに違いない


アスピリンに名前をつけた、去年死んだ犬の名前、慈しむように呼んで、水と共に飲み下した
胃壁が疲労していて、もう何も受け付けない
ビスケットを手に取ると、コマ送りのように砕けて灰になった
それでもまだ生きているかけらを指先で潰した、爆心部のように
白い粉が不確実な円を描く


ヴァーチャルなお前に
思いを残すことは
死体愛好家の
先天的な欲望にも似て
眼を潰そうか、鼻を削ごうか
糞の役にも立たなかった
唇を裂いてしまおうか
もしか囁いてくれるのなら、耳だけは
残しておくよ


俺のスタンスは先天的に傍観だった、瞬間的に自分に深く入る術が無い


眠りを求めて、身体が横になる





今度夢を見るときには
我儘が通るようにしてもらおう

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