地団駄の夕方に哀歌を吹きながら
誰の影も無いうち捨てられたビルの踊り場で
ひとつの季節の終わりがかすれた雲にしなだれ過ぎてゆく
唄われた思いのすべてがグレイの記憶のセロファンに誤魔化され劣化したコンクリの歪んだ配列にひっそりと隠れるとき
突き抜ける天上の蒼は非情なまでに真実を湛えていた
廃棄された物陰から仰ぐ無限、迷いの無い光線が差し込む小さな窓の煌めきに魅せられるままに
腕時計の文字盤の規律を信じることを止めた
形骸の中で息を潜めている小さな神、そいつの蠢きを捕まえようとしていたのに
すでに途切れた旋律の中に俺は共鳴していた
空白は絹のように揺れる、天蓋を離れたカーテン
舐め合うような優しさの中で俺をしなやかに包んでくれるのかい
水に溶ける華、どんな生命であれば永遠を許してくれるの?
鼓動の無いものたちさえ亀裂の広がりの後で
粒子のように足元に沈んでゆくというのに
冬は澄んでいる、処女性のような触れがたい何か
真実はきっと零下の中で
途方も無い永遠を求めて凍てついているんだ
何もかも透けて、何もかも透けて曖昧な輪郭だけが
網膜の中で陽炎のように立ち昇っている
ここを昇っていけば屋上にたどり着くことが出来るのかい
足元は崩れたりはしないよね、流れ去るものに比べたら
亀裂なんてずっと確かなものじゃない
屋上にゆきたい、あの直線の原点を見つめることが出来るかもしれないのだから
光を教えて、目を背けたくなるような
魂の深遠まで照らしてくれる光のことを
俺はいつか解き放たれることが出来るのかい、砕けたセメントの粒が靴の底で憎しみのようなノイズ
閉ざされたドアの鍵は簡単に外れた、それにはもはや意味など無かったのだ
ノブに触れる指先は少年に似ていた、憧れと迷い
壊れてゆくときの中ではそれはよほど鮮やかに輝くのだ
ドアは開け放たれる、限りない蒼
俺は
お前になりたい
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