シャンパンが染み込んだ
カーペットが君の面影で
ぼくは
枯葉色のバスタオルの中で
串刺しにされる夢を見る
世界はいつだって午前二時で
救急車は
死体を運ぶのに忙しい
風の噂が耳に届くころには
お悔やみの言葉を用意しておくべきかもしれないよ
スターバックスのそばで
目つきのおかしい男が立ち尽くしていた
そいつは少なくとも
ぼくがそこを歩く間微動だにしなかった
客席の窓に背を向けて立って
コーヒーにはまるで興味がないみたいだった
手ぶらだった車道を見つめていた
見つめるものだけが決まっているみたいだった
ぼくは黙って通り過ぎたが
彼がこころを奪われているものが
ぼくがいつも言葉にしているものなんじゃないかって
そういう気がして仕方なかった
街角は今日も掃除が行き届いていて
晴れた日の深呼吸みたいな佇まい
体型の崩れた男たちや女たちが
自尊心だけを頼りにそんな街路にしがみついている
ぼくはペットボトルを捨てながら
同じ一言をひたすら繰り返している連中を小馬鹿にする
エンジェル、空に飛び立つときに
あっちに届けるものを忘れてしまったの?
明日は夜中に大雨が降るってラジオが言ってる
それまでに見つけることが出来るといいね
髪型や着る服を変えれば
人生はなんとかなると思ってるようなやつらばかりさ
ブコウスキーの詩を読みながら
チョコレートをきちがいみたいに口に投げ込むとき
身体の中で回路が切り替わる音がするんだ
そんな現象のことを上手く話すことが出来たらいいのにな
遮光カーテンを引いたままの窓
その隙間に見える光が一番明るい
だからカーテンは下手糞な閉め方をしておいたほうがいい
それだけでノートに綴る詩は
一行か、二行気の効いたものになるだろう
カーペットに洗剤を吹き付けて
シャンパンの染みをきれいに落とした
人生はいつだって新鮮なものさ
たったひとりの部屋でぼくは
「ハレルヤ」をうろ覚えで歌う
神はそこに居る
ぼくはふざけて
そいつの額を指先で弾くのさ
戦争の始まりだ