不定形な文字が空を這う路地裏

ピースタイム・ポーレットシンドローム








壊れた小動物の死骸、数えると六と半分あった
もう半分をどうしても見つけることが出来なくて…あれはいったいどこへやってしまったのだろう?さっきまで一緒に遊んでいた名前も知らない子に聞けば分かるだろうか、だけどあの子はもう母さんと手をつないで帰ってしまった
半分だけのすずめ
半分だけのすずめは、片付けるのを忘れたブロックによく似ている
次にどれと合わせればいいかまるで判らなくなってしまうのだ…確かにその中にあるはずなのに
半分だけのすずめの半分のところをずっと指でなぞる…短い毛が指先を茶化して気持ちいい
他にも何かに似ていると考えていたら
落花生の割れた殻によく似ていると思った―手触りはそっちのほうが近いみたい
なぞるのに飽きるとそれを脇へ置いて
となりにいた子猫を抱えた
とてもよく出来た紙の人形みたいな軽さで固まっている、きっとこの子は自動車にやられたのだ…自分が生きるかどうか激しく知りたがったみたいに大きく目を開いている
あたたかさがないものは抱き上げても少しも通じ合えない、でもわたしはそうしているのが好きだった
足のないものや
腕のないものや
目をなくしたもの
舌を抜かれたもの
それらはとてもよくわたしに似ていると思った
だいすきだから埋葬はしない、砂に変わる前になると
彼らはひどい臭いを立てたりしないのだ、だから隠していたって感づかれることはない
ズック袋に入れてたからものと名前をつけたがらくたを上にかぶせておけばママはそれをきちんと調べたりしない…子猫の次は子ネズミ、死んでからだととても仲がいい
まだやわらかだったときに尻尾を蝶結びにしておいた―それははっきり言ってとても苦労した
生きていても死んでいても
ネズミの心は分かったことがない、彼らとはどうも見つめあっている感じがしない
それはどちらにしても私の勝手な感じ方だけど…この子に関して言えばもう死んでからだいぶになるし…それにしても
死んでからじっとしているネズミはびっくりするほどかしこい生き物に見える―だから生きているときははっきり姿を見せないのかもしれない
相対性とか量子とかよく分からないけど、そんなことを話させたら朝まで話してそう
すずめ、さっきよりひとまわり大きな
すずめは大きくなればなるほどおばさんに似ている、市場で買物をしているおばさんの後姿、このすずめを見ているとわたしはいつもそれを思い出す
このすずめはどういうわけだかくちばしが少し欠けていて―それはまるで古いカップのように―それがわたしはとても気に入っている
くちばしの欠けたところをなでてはとがりぐあいにうっとりとする
子犬、この子は生きているときから知っている
最初に自動車にやられたときに右のうしろ足をなくした
ひょこひょこはねてくる姿がかわいいのでいつもパンを分けてあげていた…わたしはあまりパンが好きではないので
あるときこの子が道でわたしを見つけて近づいてこようとしたときに、角の向こうから自動車の音がするのが分かった
わたしはなるだけ角に近いほうにパンを投げて、この子が近づくのをじっと見ていた、うまく逃げられなかったこの子の首のところを自動車は引いた、そして悪いことだとは知らないみたいに道の向こうへと走り去っていった―すごく早い車だった!
だからこの子はいまでは足が片方なくて首がほとんど真後ろを向いている…だからこの子と目を合わせるにはこの子を後ろ向きにしなければならない、わたしはそれがとても気に入っている
さっきのは白い猫…こんどは黒い猫
この子はとてもほそながくて…誰かのうでみたいに伸びている、この子になにがあったのかは少しも知らない
そんな格好で死ぬ猫はいないって友達は言ってた…つまり道でこの子を一緒に見つけたときに
ママが帰ってくるような気がする、のでわたしは彼らを集めてズック袋に詰め込んだ―紹介出来なかったのは友達が殺したハムスター



ママ、お帰り
今日のごはんはなに!?



今日のごはんはシチューだった、とうもろこしで出来ているの、とママは言った、なので、とてもおいしかった






手を洗っていなくて…指先から動物達のかすかな臭い






いい臭い

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「詩」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事