遅咲きの
シダレエンジュの側を抜けて
イヌゴシュユの先の
人口の小川に掛けられた橋を渡り
さまざまな低木が両脇に植えられた
凝った石畳の遊歩道を
さっきから
もう
交わす言葉もなく
あなたは
私の手を取って歩くべきかと悩んで
わたしは
こちらからその手を握るべきかと
幾度も
考えあぐねて
その分だけ
二人の歩幅はいつもより乱れる
蝉がみんな役目を終えてしまうと
夏は、もう
恐竜の時代ほども遠くて
高い
つっけんどんな太陽に顔をしかめながら
そのころわたしはアンモナイトで
あなたが
その側で眠ったシーラカンスだったら
どんなに
ロマンティックなことだろうかと
古代の海に未来を投げ捨てた
互いに
傷つくのを恐れて
心に
重たい鎧を着せてしまって
そのせいで
何をするにも
ぎこちなくしか出来なくて
いつも
往ってしまったものは
いやになるほど遠いけれど
この夏の余韻は
きっと
散々なまでに
鈍く疼くだろう
いつかと同じ石畳
いつかは
お伽の国のようだった背中
すべて
木っ端微塵になって
落ち葉に埋もれて
声もなく
死んでしまうのだ
ああ、陽射しが眩しい
思わず
言葉が漏れたけれど
あなたは
もう
それが聞こえないところまで
歩いて行ってしまっていた
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