お前は詩を読んだことがあるか、あるいは書いたことがあるか?自分を自分たらしてめているものについて、衝動的に言葉をぶちまけたことがあるだろうか、身体の中心から、お前自身を引き摺り出そうと試みたことが…言葉を綴る時、言葉で知ろうとしているのではない、そこから喚起されるイメージが無意識下で形を成していく、その、知覚しえない成就を夢見て、詩人どもは言葉を吐き出し続ける、理論やスタイルではない、本物の詩人たちのことだよ、真っ当な理由によって言葉に立ち向かうやつらの話さ、何故書くのか?詩人など時代遅れだ、何もかもGoogleやWikipediaで知ることが出来るこの現代社会で、情報として整理されない羅列はもはやなんの意味も成さない、詩人など時代遅れだ、もしかしたら、書く、というその行為すらさえも…液晶画面に表示されるものがすべてになってしまって、人間たちはそれを自分で処理するという工程を忘れてしまった、「あそこにこう書いてた」「誰それがこう言っていた」そんな言葉が真実の根拠のように飛び交う世界、その時その瞬間、目の中に飛び込んできたものだけがすべて
ブラッド・メイクス・ボイス
言葉で知ろうとしているのではない、俺はさっきそう言ったはずだ、言葉は入口に過ぎない、あらゆるプロセスの扉を開ける鍵に過ぎない、ひとつの単語で終わりにしてはならない、ひとつの単語には様々な解釈がある、肯定にも否定にも成り得る、そして理解という目的に至るにあたって、当然選択肢はひとつだけになる、とりあえずだ…何度かの工程の中で、意味は枝分かれするはずだ、考えれば考えるほど結論の可能性は増えていく、もしもお前がそうでないのなら、お前は自己満足だけで一生を終える大間抜けというわけさ、それはともかく―導き出されたいくつかの答えは吟味され、あらゆる可能性において考慮され、たったひとつだけが選択される、もちろん、始めにこれだという答えが見つかるのならそれでもかまわない、けれど、そいつは検証されたほうがいい気はしないか?本当にそれが一番いい答えだと、確信を持って先へと進む材料になったほうが、そこからの道は歩きやすいはずだ、こんなやりかたを知らないものたちは多い、作業に慣れ、毎日に慣れ、人生に慣れる、そうしてだんだん考えなくなってしまう、そんな連中はほとんど考えないままに遺伝子を残し、初めから何も考えることのない存在が蔓延してしまう
ブラッド・メイクス・ボイス
俺は詩の中で死ぬ、そして生き返る、言葉の連なりによって切り刻まれ、血を吹き上げ、再構成されるのだ、生き返った時、幾つかの無駄が省かれている、生きる上でどうしようもなくこびりついてくる苔のようなものが削ぎ落されているのだ、そうすることで俺は生き方を思い出す、血管を流れる血の温度を、その目的のことを、思い出す、思い出す…それは俺という存在の純化だ、俺が詩を書くことによって、俺という存在が純化されているのだ、勘違いしないで欲しい、俺は綺麗なものになりたいわけではない、俺はそんなものに憬れてはいない、ただただ貪欲に、生きる心、目的をもって、人生を遂行しようとする、至極人間的な野性の在り方を、俺が書くものによって示し、飲み込みたい、俺が書く理由は、生きる理由はそこにしかない、ここに、こんな風に生きているものが居るぞと世界に示したいのだ、お前だって本当はそうじゃないのか、理由なんて突き詰めればきっと、誰だってそういうものになるんじゃないのか、懸命さについて…自分自身との戦争だ、自分を撃ち殺し、切り刻み、バラバラにして放り出すことは、書くことが出来るものにだけ与えられた特権だ、俺は俺の為の規則しか持たない、俺の為の戒律しか持たない、俺の為の国境しか持ち得ては居ないのだ
ブラッド・メイクス・ボイス
詩人が、草花や、愛や夢や真心についてばかり語り、心の病を自慢して生きるだけのものだなんて俺は思いたくないんだ、なんでもかんでもピュアなハートで片付けようとするなんてまっぴらごめんだ、詩人は戦士だ、武器を手に、自分自身の眉間に狙いをつけるのだ、撃て、撃て、撃て、撃て…概念のブリットがそこを撃ち抜くとき、あらゆる生に通じる道が開ける、あらゆる人生に通じる道が開ける、あらゆる真理に、あらゆる嘘に、あらゆる純粋に、見るもおぞましい醜悪な何かに、命あるものの宿命、倫理や道徳の範疇には収まらない、生命のすべての在り方に通じる道が開ける、人生とは、成長とは、そのすべてに目を凝らし、知ろうとする行為だ、その結果、自分がどこに立っているかなんてたいした問題じゃない、模範解答だけで毎日を乗る切るやつらなんてみんな馬鹿野郎だ、お前の銃口は綺麗に磨かれているか、リボルバーの回転は確かか、そうしてお前の指は、ここだと思う時にきちんと引金を引くことが出来るか、瞬間の中に生きることだよ、瞬間の中に生きて、死ぬまで記憶にこびりついて離れないような一瞬に食らいつくんだ、俺が詩に向かう時、いつだって人生の最初の一日を生きている、詩人は戦士なんだ、それはこの世界に在るもののなかで一番スマートな衝動であり、野性だ、俺が何を言っているかわかるか?とある古い詩人はこんな風に言ったよ、
「吠えろ」って
ブラッド・メイクス・ボイス / ホロウ・シカエルボク