不定形な文字が空を這う路地裏

化石



干乾びた稜線に圧し掛かる呪いの夜
瞳孔の奥底に釈然としない精神とともに刻まれたのは
動脈の内側の色をくどいばかりに書き付けた、取るに足らない言葉の羅列だった
世界には目次が無い、同じ項目の前で何度も
遂行されない純度の血液を暗過ぎる床にぶちまける
存在しえない湖、その深遠でずっと音楽を繰り返すローレライ
幻の様な蓄積が心に築き上げた地層は決して誉められたものじゃなかった
空から降る雨は心臓を突き刺す針の様だ、無力な獣の様に
排気にまみれたアスファルトで俺は泣声を聞いていた
忌まわしい感情の加速、ここに来て要らない花瓶を壊す様に
俺を破片に変えてはくれないかい
何度も何度も同じ食事をした
そうすることでしか自分を確認出来ないみたいに
適当なサイズにしか広がらない胃袋に、日々がこびりついた爪を突き刺した
心はとっくに侵食されて穴ぼこになっていたのさ
似た様な腐食を昨日もその角で見た様な気がする、これまでに何度
嘘の様な街角に我が身を放り出したのだろう?
牙だ、無意味な牙が戯れに貫こうとしている
先端の奇妙な冷たさをこめかみに感じながら、気の抜けた太陽が再び昇るのを待っていた
誰も同じ明るみに留まることは出来ない
いつかと同じ後悔を湛えた楕円が痛みの様に日付を放つ
雨は、雨はどこに行ったというのだ、最後の執行の様に俺を貫いていた
垂直に落ちるあの淑やかな雨は
佇む街路に確かなものなど在りはしないのか、変化の中で俺は
変りきれずに静かに歪む鼻面を見て取る
どうしたっていうの、女はいつもなんでもない事の様にそれを否定するけれど
俺は確かにその湾曲に心を奪われていた
見せてくれる様な気がしたんだ、ねえ、そいつは俺に何かを見せてくれる様な気がしたのさ
血流に左右するもののすべては幻なんだって、ああ、そう言ってくれたら
俺はどんなにか楽だっただろうによ
震える指に記憶の雨がかかる、もう誰も
強固な天蓋の隙間を示してくれはしない
心は暗闇に寄りかかった化石だ
もう誰も
強固な天蓋の隙間をここに示してくれはしない



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