跳ね飛ばされ轢き潰された野良猫の屍骸に
群がる強欲な虫どもの羽音の交響曲
排ガスの匂いが絶えず風に舞う産業道路で
どこかが断線した水晶体をぼんやりと開いていた
街路樹は管理され刈り込まれる
道路に一番近い
緑は枯れ始めていた
いつかは息吹に溢れながらあいつも種子だった
哀しみを共有するために保存料の入ったコーヒーを飲む
栄養は錠剤で摂取され
欲望はフライチャイズへ向かう
長い長い旅路の果てに辿り着いた景色は
何処にでも建ってる店ばかりだった
プラスチックの軋みが無けりゃ
ご飯を買った気がしない
後ろめたさを隠すようにカテキンと綴ったペットボトルの重みは
こっそり人生をカウントしているような気さえする
真実を塗り潰したような女子高生のメイク
短すぎるスカートにこらえきれなくなった誰かが公衆トイレで静かに歓喜する
所々塗装の剥げたドアには
誰でもOKらしいなおみの携帯番号が書き殴られている
ちょっとした好奇心で
電話ボックスから接続を試みてみると
クタクタに疲れた声の女が出てもしもしと言った
俺が何にも言わないでいると
もう一度もしもしと勘繰った後電話は切られた
名前だけでも聞いてみれば何かの証明にはなったかなと思いつつも
もう一度番号を押してみるには興味が薄過ぎた
あの女の着メロはきっとパターン8とかだ
犬を散歩させてる神経質なまでに日焼け対策を施したスポーツウェアの女が
電話もしないで腰掛けている俺を怪訝な目で見たので
ドアを蹴っ飛ばしてBOXを後にした
あの女のBOXはきっと真っ白なんだろう
午後の公園に集まる奴らの顔は
説得の果てに幸せだと納得したような眉間をしていて
長く眺めているとペースメーカーをつけたプロレスラーの体力を測定しているような複雑な気分になる
きっとそんな比喩を考えるのを面倒臭いと考えた誰かが
違和感なんて単語をこの世に産み落としたのだろう
お値打ち価格で感性がお手討ちになるから
詩人は皆廃工場で首をくくるぐらいしか能が無い
遺書には特別気持ちを込めた韻を踏んで
夕日が一番綺麗に当たる窓のある事務室で
そうして構築された詩的なディテールにも
何処からともなく現れる虫どもの強欲な交響曲
カラーコントラストの故障みたいに白い蛆がうろちょろと無数に這って
綺麗に負けようとした詩人は関節のところから解体される
強欲な虫どもは百万の生体組織の味を記憶していて
それって結構凄いことなんじゃないかって思うんだよな
おまけに奴らはきっと好き嫌いなんかしない
出されたものはスカスカになるまで綺麗にたいらげるぜ
だってあいつら
生きることしか考えてないんだもの
わけも分からず
喰らって産み増やし
生命を繋ぎ続けることしか考えちゃいない
羽音を立てる螺旋
なあ
詩人なんか
出る幕もありゃしないよ
今日のスペシャルスタミナ弁当
ウィンナーの焼き加減が…
いま
ひとつ
最近の「詩」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事