不定形な文字が空を這う路地裏

オーライ、すべてパートタイム!








次第に歪んでゆく感覚のそれぞれに名前をつけて慈しみながら落ちてゆく速度をすべて脳髄の襞に書きとめだから狂ってないとかだから壊れてないとか正気じゃないだけだとか
酷い自己顕示欲に満ちた敗北宣言をそれとなくテーブルの隅の汚れにまぎれて残す、そうしたことで何が満足出来るわけでもないけれど少なくとも無様には負けなかったということを証明した気分にはなる―あがいた死体は評価されるなんて万一死んじまったら何の意味も無い美意識なのにね
無傷の頭蓋骨、それなのにそれなのに、脳漿は少し分離してしまった気がする、存在意義を無くしたプランクトンみたいに、体液のプールではぐれてしまったように、ああ、俺の記憶中枢、懐かしいグレイのノイズの中で顔の落ちた愛を読ませたりなんかしないで、部屋の天井に向かって、溺死気味の俺の泡、あぶく、ぶくぶく
ふらり、と遊園地のアトラクションにでも乗っているかのように座ったままの足元が大きく無軌道に揺らぐ、あーあー、迷い始めたんだ、もうどこにも帰れないんだ、はぐれた俺の脳漿、認識出来ない大切な愛情
孤独にさあ、詩なんてカテゴリーでどんなに気取ったフレーズをなぞってみたところで背中に忍び寄り音も無くへばりつく絶対的な暗闇に緩和なんか期待出来やしないよ、俺たちは言葉の風俗でひとときの快楽を買っているに過ぎないんだ、そうは思わないかい、ええ、背負い過ぎた詩人たち
敗北さ、そりゃそうさ、決まってるじゃねえか、心からの救済なんてそんな、一、二時間で終わるピュアネスに真理なんかわざわざ立ち寄ってくれやしないよ
何のために探しあぐねて居たんだ、そんな風に考えることはないかい―見つけられないものにロマンチックな名前なんか付けてさあ?夢はきっと叶う、そんなさ、五十年代の口説き文句だぜ、そんなこと言ってるやつは結局ベッドから出てくることは出来ないってもんさ―甘いお菓子にだって塩は混ざっているんだよ
言ってること判るかい、甘さや、優しさや、厳しさや、激しさだけじゃ何にもならないって話だよ
おお、俺、鏡に向かって独りでくっちゃべってた、まだまだ大丈夫だと思っていたのに、ボーダーラインはとっくに後ろに行っちまっていたよ…しょうがねえ、笑うんだ、そういう時は、笑うかどにはなんとやらってね
確か昨日は詩人だった、そういう気分だった、パート・タイムに過ぎないけれどもさ(気持ちが一番大事だなんてそんな戯言には俺は耳を貸さない、成功出来ないやつはただの趣味人さ)ところが今日はどうだ、狂人だ、ハッハ!こいつは素敵じゃないか、なんて詩的な光景だろう!
最高じゃないか、飛び降り自殺みたいなものさ、派手で、痛烈で、しかも迷惑な話だ、百円ショップで買った磨かれた文明の前で俺はまさにそいつを眼にしていた、あ、脳漿ってやつだな、だから脳漿なんだ、なるほどなるほど
飛び散った!そうだよ、まずい!
どこいった、俺を繋ぎとめる部品、俺をこの世に繋ぎとめる大切なメモリー、回路、配線図、プラグ、接続、どれをどこに、どこをどれに…説明書を探せ、あれはどこへやった?ずいぶん昔に捨てちまったような気がする、もう要らないって思ってさ
捨てるんじゃなかったなぁって今更後悔したってもう遅いじゃないか、小さな鏡の前で俺は笑い続けた、鏡は次第にぐんにゃりとして―


それで、まあ、次の朝には目覚ましの音で目を覚ますってんだから…





そんな、なあ、分かんないよなぁ?

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