不定形な文字が空を這う路地裏

運命は週末に観念的なガスをたて続けに放つ












俺というかたまりに対する不信感、人差し指をなぞる感触が腐乱している…洗面台に欲望の数だけ頭を打ちつけて流れ出た血液の温度を計測した(人ならず、人ならず…そこには人ならず、と表示されていた、古いデジタル液晶の微生物的なグリーン)、いらだった俺は冷たい牛乳を飲み干す―まるでプライヴェートをたわいないものに演出しようとしてるみたいですこぶる気分が悪くなる(あとで腹も痛くなるかもしれない)
わざわざ探して買ったアンティーク・モデルの金魚蜂、その中に超えた金魚が一匹…いつのことだったろう?気まぐれにこいつを神社の夏祭りですくったのは…日付が思い出せないほど昔の事には間違いない(エアー・ポンプと浄水システムの完備されたその中はここよりもずっと快適に見える)生物にとって敵がいないことの最大のデメリットは―頭がイカレたみたいにぶくぶくと太り始めることだ(なにかから逃げるための心配が要らない、安心は本能を極限まで麻痺させる)
げっぷをしながらコップを洗い、やることはもうない、俺はテレビをつける、五分後には消すことが判っていながら―求める事と日常的な動作は必ずしも一致しない、いや―日常的な動作の中に求めている事はたぶん数えるほどもありはしない―生殖とかね(それは日常の中なのか、あるいは外なのか?)とあるCMで懐かしいロック・ミュージックが流れているが―そのタイトルをどうしても思い出すことが出来ない(完全に記憶されたメロディなのに、名前がないだけでそれは不確かに思える)、三度同じコーラスを繰り返してからテレビを消した(リモコンは集中力をそぐ抜群の小道具だ―スイッチなんてそんな簡単にオンオフできないほうがずっといいはずだ…)、リモコンを投げ出してソファーに横になる、ハエトリグモが鼻先につうとぶら下がる―「向こうにしてくれ」と俺は言う
ハエトリグモはそれを無視して(虫だけに)俺の側に着地したが(尻の中に糸を切る装置があるのだろうか?)、やれやれという感じで俺の示した方へひょいひょいと跳ねてゆく―デザインという部分においては我等が創造主はたいした天才に違いないな…俺は雲の行先を確かめて寝返りを打つ…天井が見える(白地に薄いブルーの糞面白くない模様)、この天井にそこにある以上の様々なものを見て取った時代があった―それはあちらこちらで思春期なんて名前で呼ばれたりするものなのかもしれない(けれど本当はそれは若さではなく、けれど本当はそれは通過儀礼などでは決してなく)
週末に脳髄に征服の旗を立てるのは一週間溜め込んだあてのない眠気、あらゆる神経と血管のキモにラバー製のシールドを差し込まれたような…断絶(通電しない、という感覚にたしかにシンパシーを感じる)ハンダゴテと、それからハンダを生体用に開発されたやつを―後頭部のかたまりは遺憾ともし難い(ストレッチなんて本当に痛いときにはたいてい役に立たない、トレーナーを呼んでくる余力なんかないし―第一きちゃくれない)、横になるとひび割れた幾箇所からぽろぽろと角質のように部品がこぼれ落ちる…人差し指をなぞる感触が腐乱している
そういうときの特効薬をひとつも思いつけないのは別に不義理ばかり働いてきたせいじゃない(何でも報いに結び付けたがるのは半端な仏教徒の専売特許だ)…どんなにシステムを組み替えようが、ダウンするときはダウンするのだ(そしてそれはまた、ダウンするべきときと言えるのかもしれない?)俺はいらだちを殺す事に勤める、受け入れてしまえば傷みは少なくとも質を変える―要は傷みと関係ない世界の中へ入ってしまえばいいのだ、つまるところそれは睡眠だ(金魚蜂の金魚がリムジン・ベンツのように旋回する)
俺は眼を閉じた、エアーポンプの音が聞こえた…ぽぽぽぽぽぽぽぽぽと―忘却のように浮かび上がっては消える小さな泡、存在の本質、とやぶ学者ぶって名付けてしまいたくなるような運命の放屁(俺は臭いもしない屁の前で観念的に鼻をつまんで空気を攪拌した)、泡がつぶれたとき、その中に詰まっていたものはどこへ消えるのだろう?それは空気なんて名前で呼べるようなものじゃないような気がする、それは―もう少しロマンティックなテイストでそのあり方を示唆されるべき代物なのだ―ロマンティックな、あまりにロマンティックな運命の放屁だ、鼻をつまめよ、とんでもないものを吸い込んでしまうぜ―








真理なんてきっとそんな迂闊に取り込んでしまっていいものじゃないはずさ―たぶん…

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