不定形な文字が空を這う路地裏

心が荒野を駆ける日は












心が荒野を駆ける日は
君の名前を覚えられない
僕は浮力をゼロに押さえて
眼を見開いて敵を呼ぶ
心が荒野を駆ける日は
君の言葉を上手く聞けない
気にするものが多すぎて
すべての韻律は抜け落ちる
君の影を死体にして
僕の動機に貼り付ける
心が荒野を駆ける日は
贄が無ければ血が踊らない
僕のパレードは誰にも見せずに
僕のパレードは誰にも聞かせずに
歪んだ心は無人の荒野をただただ駆けて行く
あなたがそこに居る
あなたがそこに居る
信じられないような暗闇の向こうに
あなたがそこに居て
生存の理由を懇々と問いかける
あなたは生存の理由について考えるのがとても好きで
そのせいで時々実績を疎かにする
貪る事に理由を求めるなんて
抗う事に理由を求めるなんて
理性が直感を超えるようになったらお終いだよ
心が荒野を駆けるから
僕は地面を見ない
心は素足だ
靴を必要としない
何もまとわないからこそ心と呼ぶ
縦横無尽のストリーキング、それが
僕の考える詩というものの実態なのだ
何もまとわないから
笑われるのは当然の事だ
煙る弾幕に
詩人は裸で突っ込んで行くのだ
何も生み出さない
何も認められない
身体は粉々になって
さらに燃えてあっという間に風に散る
世界という
火薬が巻き起こす爆風によって
要らないところまで吹き飛ばされる
僕は死体だ
すでに吹き飛んで済んでいる
だから心は荒野を駆ける
君の名前も覚えられずに
君の言葉も理解できずに
暗闇の向こうにあなたが居る
信じられないような暗闇の向こうに
僕はそうと認められたい
何にもならない言葉の亡霊だ
墓標すらそこには望まれなかった
だから誰にも惜しまれたりなんかしない
惜しまれたりする詩人なんか教科書に載ってしまって
こっちの世界で肩身の狭い思いをするだろう
心が荒野を駆ける日は
いろんな哀しみを見落としてしまう
シャッター、フィルター、パラノイア・スター
見ないで済ませて欲しいと
身体があるころに熱望したのは確かに僕でした
詩になりきれなかった僕の哀しみ宙ぶらりん
本気で見つけられまいとした
樹海の奥の首吊り死体
腐るまで気がつかなかった
元がどういうものか、なんて
どんなに眼を凝らしても感じられなかった
もっと見つめておけばよかった、もっと見つめておけば
今頃は静かに偲んで居ただろうに
荒野を駆ける、荒野を駆ける、体重を持たない泥人形のような存在
ヒトダマだ、と東の方では言うかもしれない
何もまとわない、縦横無尽のストリーキング、なのに
どこか不自由さがまとわりついてくるような気がするのは
あの時聞き逃した君の言葉のせいかもしれない、仕方がない
上手く生きていこうなんて命題は一度だって必要としたことなど無かったから
荒野を駆ける、荒野を駆ける、自分の影をも引き離したいみたいな調子で
裸足の足の裏で精一杯の韻律を踏む
僕の詩はそこに在りますか
僕の詩はそこに在りますか
暗闇を抜ければあなたが居るように
大声を上げれば悪魔が笑うように
いつでも僕の詩はその中にあるのでしょうか
心が荒野を駆ける日は、レーサーのように
孤独の木々の間を抜けて
世界の切れ目まで膝を回転させる
滞りなく終る事など無かった数々の醜態は回転によって埋葬され
それなりにまとまった墓碑銘によって成就するかもしれない、だけど、だけど、だけど
見つめていたものがひとつも
質感を持たずに終るなんてそんなのありかよ
受け止めるって決めたのは誰だったんだよ、無知なころに
受け止めきってしまおうなんて考えたのは、ええ、いったい誰だったよ
すべては変化するのかい、宿命とか運命とか
ていのいい言葉を利用しながら
したり顔が出来るようになったら一人前かい
僕は今だって何も信じてなんかいない
きっと死体はもう一度回転を始めるだろう
タービンが回る音が聞こえる、荒野の向こうで
静かに動き出す音がしている、暗闇の向こうで
あなたが居るんだ、あなたが居るんだ、あなたが居るんだ、あなたが居るんだ、そこにはあなたが居て
僕のタービンにひとときの理由を与えようとしている、心が荒野を駆ける日は
顛末を見落としたぶんだけ本質が見える事だってある
君の名前を覚えられないけど、君の言葉を聞き逃してしまうけど
ごめんよ、ごめんよ、だけど
動機が欲しく無かった事なんて本当は一瞬たりとて無かったに違いないんだ

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