こんなにも長くかかるなんて思わなかった、カレンダーの日付が
気が遠くなる様な日々が在ったと告げている
俺にしてみれば一抹の夢の様だったのに
きらびやかな、しかし悪夢には違いない―そんな夢から急に覚めた様に
俺の心は懐かしい街へのエンジンを吹かす…あの娘はまだ俺のことを待っているのだろうか
親父が意固地になって守っていた、葡萄畑はまだ生きているだろうか―あの辺も大分汚れたと聞いたけど
今ではもう名前すら覚えていない女と
色事にうつつを抜かした納屋はもう潰れてしまったろうか?
マシンのうねりと共に、風に懐かしい匂いが混じる―俺は産まれた事を忘れていた
この季節にはいつも風邪を引いていたお袋の墓は誰かがきれいにしてるだろうか?
草ぼうぼうなら俺が引っこ抜くのみだ
誰に電話をかければいいだろう、俺のことを覚えている誰かが
馴染みだった酒場でまだ飲んでいるだろうか?
歳を取ったんだ、そんな風に冷やかされながらもう一度肩をぶつけ合いたい
俺は俺で無いものになろうと躍起になっていた、マクドナルドを上手く注文することや
ラウンジ・バーでどんな会話をするべきかなんてことに夢中になって
どぶ川の流れの様になっていく、自分の血の色に気がつかなかった
決心するんだ、ベイビー、決心をするんだよ
誰かが
誰かがあの街で俺の名を呼んでくれたら
誰かがあの街角で俺のことを呼び止めてくれたなら
これまでの暮らしをすべて蹴り飛ばして
もう一度最初から始めるんだ
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