不定形な文字が空を這う路地裏

結露がその窓に



冬には死んでいたんだ、指先の色はせめて腐らずにと願う様に
虚空の一点をおぼろげに示していた…振り返らないと知っていながら何度か呼び掛けてみる、そんな
そんな具合に

我に返るその瞬間には
ただただ、思い知らされるのみさ―そうだよ、せめて屍蝋化のあの滑らかさを
施しとして残してもらえればいいのにさ

意地が竦み上がる様な冷たさの中でなら術の無い亡骸になっても構わない―セロファンの様な碧がまぶたの遥か上、天蓋の様に淑やかに風に触れている…それはまるでメロディの様に胸の一番傷んだ部分に浸透して
憧れの様な温もりを密かに残してゆくのさ、踊子の裾の様に揺れた飛行機雲のかすれた所に

宛名の無い殺意がふらふらと誘われて消えて行った

冬には死んでいたんだ、冬には確かに嫌な響き方をする鼓動に圧迫されて
見えない時間の中で苦悶の寝息をたてていた早過ぎた剥製
脳髄の深い所で、よどんだ水がどろりとひとつ波を打つのが聞こえた―ああ、意識がまるでさよならの様に混濁していく…こんなになるまでなにを望んでいたのさ?

聞こえない声の方がずっと優しかった、届かない答えの方がずっと確かに感じていたのさ―そして指先はずっと虚空を探していた
夢だったんだよ、途方もなくリアルに胸に絡まったあのいくつかの感触は…認めるなんていつでも愉快なことじゃないけれど

結露に運命がしがみついていた、舌を伸ばして舐めあげたら…


きっと、錆かけた血液の趣がそこに残るだろう

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