不定形な文字が空を這う路地裏

開廷






なにかを言いそびれる夕方、君の言葉を待って、君の生ける一歩を待って
言葉を
殺してしまう夕方
あれはなんだった、あれはいつのことだった、そんな
そんな話をするみたいに距離をひっくり返そうとしていた
古典にあるように君は消極的でまたそのように僕はそれを善くは思っていなくて
必死になるのは良くないとあらかた気付いていながら妙にきらびやかな心情を吐露し続けた
たぶん君の方が先に気付いたんだ、ほんの少しのまつげの角度で僕らの世界は塗り替えられた、それは一幕のお終いのように絶対だった
意固地に踏み続けたアクセルの後に見落として来たものの多さに気付く、愚かだと知るには充分過ぎる距離だった
だから僕は躊躇した、独り言のような雨がぱらつく赤の無い夕方に
それは奇跡を待つようなものではあったけど、自分の落度だとすでに知ってしまっていたから
もう
なにも
思いつくわけもなく
懸命であれば美徳だとそんな風に感じていられたのはいつごろまでだったろう?
結果などどうあれ知ったこっちゃなかった
君のまつげの角度が、君の声の高度が僕をゆるやかに刺したから
なにかを言いそびれたまま僕は口をつぐんだ
被告席に立って、君の判決を待つ時が来たと
そう
感じたんだ
怖いのは、そうしたまま
感情が
干からびること

君、分かっているんだよね?

僕が
それに気付いたことには―

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