不定形な文字が空を這う路地裏

休日、蜘蛛のルビーと蝶のカフェオレ









ホイップクリームの渦巻きの様に湿度が脳髄に雪崩れ込むので、すべてにおいて適当ではない状況が継続する
眼球の周りの体液が蒸発して絶えず瞬きが繰り返されるが、バランスが明らかに釣り合ってないのだ
それでも生き抜けば、何とかなるだろうと切なく信じてしまう夏、昔のアイドルの自殺のニュースがひっそりと流れる
押し潰す様な七月に、きっと彼女は負けたのだ
理由はどうあれ自殺のニュースにはいたく同情する様になった
俺は縄で縛り首を作ったりはしないが、そこに至る過程の心境にはきっと何らかのシンパシーを抱いているんだろう
他にも偉大なロック・バンドの最初のフロント・マンが死んでいた、こっちは病気だったけど
彼の歌声はCD化され、何度もリマスターを施されてこれからも残ってゆく
ビートルズが、ハード・ディスクに保存される時代
TOY-BOXは形を変えるが、きっと
詰め込まれるものはそんなに変わりはしないのだ、それは、いつまでもファンタジーだが
ある意味で一番縛り首に近い位置に居る様な危うさだ
何度水を飲んでも潤うことが無い
誰かが胃袋に穴を開けて俺の補給したものをかすめ取っている
小雨の中、まだ若い蜘蛛が窓の外に巣をこしらえていた
光に透けるとそいつの腹は洒落た宝石に似ていた、だから
俺はそいつにルビーという名前をつけて、そいつが巣を作るのをしばらく眺めていたんだ、休日の午後のことだよ
休日の午後とはそうして過ぎてゆくとしたものさ
そのとき、俺は思い出した
朝方、ニュータウンを走っているとき、バイクの籠の網目の中に飛び込んだ
カフェオレの様な羽の蝶のことを
マーケットの駐輪スペースで押し出してやると、しばらく休んだ後で楽しげに飛んでいった
あいつも今頃は
ルビーの様なやつがこさえた罠の中で干からびているかもしれない



休日の午後のことだよ―休日の午後とは

そうして、過ぎてゆくとしたものだ

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