不定形な文字が空を這う路地裏

穴開きの胃袋に極限まで詰め込む









偽証されたような朝が破裂の熱と共にやって来て窓の外は核爆発のように発光している、カーテンを閉じたままのこの部屋はまるで真空のように現在から隔離されていて、俺はたいがいの部品を土踏まずの穴から落としてしまったからくり人形のようだ、足首、手首をすり抜けていく風がひゅうひゅうと鳴っている、目覚めはそのまま枕の上で凍結している、夏程度の温度ではそれは溶けることがない、空洞の体内に木霊する生は亡霊のようなものだろうか、風の音を聴いている、古い小説のように時代錯誤だ、だけど、そうだぜ、魂は変換出来ない、デジタルの信号には…データ化されたものを掻き集めても一生腹なんか張らない、判るだろ、食らう理由は、どんなに時が流れても古生代と変わらないものだ、俺がしきりに周囲をうたうのはそのことを知っているからさ―テーマなんか始めたときから死ぬまでずっと変わらない、俺はそのことを知っているのさ、頭で描いたものは人間の限界を超えやしないってな…人間とは概念の生物だ、人間が最も人間らしいのは、内訳だけの姿になった時さ―体躯を維持したまま、そんなものと何の関係も無いところへ突き抜けた瞬間さ―そんなの感じたことあるかい?ロックミュージックなんか必要ないさ、俺は指先だけでそういう場所へ行ける、脳味噌をアテにしないで…ただ閃きを並べていくんだ、古代の遺跡を造り上げるように…そうさ、描く理由なんてものもやっぱり、大昔から何も変わりはしないんだ、モアイ?ピラミッド?地上絵?作ったやつにだってもしかしたら、理由なんて判っちゃいないかもしれないぜ、だけどそれは、そいつには絶対必要なことだったんだ、その場所にそれらを残すことはさ…ゴッホが耳を削ぎ落とした理由は、そうすれば自分が残した絵となることが判っていたからかもしれないぜ―空洞のまま、凍結したまま寝床から起き上がる、何を恥じることがある、人は皆神に操られるままに動く人形だ、だけどそう、そいつらは自分で意思を発することが出来るのさ、俺はそれを言葉とは呼ばない、それは選択された手段に過ぎない、手段にこだわると大半のものは駄目になる、何故だか判るか?乗っかることだけがお題目になっちまうからさ…生き残ってる者たち、発し続けている者たち、彼らは表向き、何も変わっていないみたいに見える、求道的にたったひとつのことを延々とやり続けてきたみたいに見える、だけど、いいかい、彼らのその佇まいは、変わることを恐れなかったからなんだ―六十年近く歌い続けている者が、ずっと同じように歌っていると思うかい?そんなことを信じてるやつは十年も歌うことは出来ないさ…変わらずに続けようと思ったら、変わり続けることのほうが大事なんだ、手段に固執するやつは覚悟が足りないのさ…そういうやつらはやたらと覚悟を喋りたがるだろ、言いふらさなきゃ伝える自信がないからさ―自分で自分に尊大なコピーを貼り付けることにばかり躍起になっているんだ、そんなことをしているうちに何のために自分がそこに居たのかすら忘れちまう、無駄口を叩くだけの発声器になってしまうのさ…ルー・リードって男が昔こう言ったよ、「トランスフォーマー」ってアルバムを出した男さ、「変わらないのは変化だけだ」って、そんな風に言ったんだ、何とも素敵なフレーズだと思わないか、あのおっさんにはきっといろんなことが判ってたんだ、それ以上知る必要が無くなったから死んじまったのかもしれないな…「ロックは死んだ」ってどこぞのカッコつけが宣言してから何十年もあとの話だぜ―キャッチコピーが真理を語れるならマーケットのチラシは聖書のごとき輝きを放つだろうな―使い込まれない真実なんかみんな嘘さ、本当に価値のあるたったひとつは、百万の穴を掘らなくちゃ見つけられないものだ、宝探しを想像するといい、すぐに見つけられる宝になんてろくな価値はないだろう?もうひとつ言えば、宝探しをするときに、それがどんな宝なのかなんてことはどうだっていいことだ、それはたまたま見つからないでいるだけで、ただの宝に違いないんだからさ…宝に価値があるのは、血眼になってそれを探すからだ、注ぎ込んだ金と労力はお宝の価値を超えるかもしれない、だからこそそれは世界中に散らばっているんだ、さあ、起き上がるぜ、何も決まっていなくても、何も見つからなくても、どんなふうにすれば判ってさえいれば、少なくとも今日を生き延びるための何かは掘り出すことが出来るだろう…。

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