不定形な文字が空を這う路地裏

キャッチ・ザ・スカイ









リコーダーの音色が遠くから聞こえる
折りたたまれた一日を鞄につめて
打ちひしがれた男が国道の端を歩いている
盲人用信号の機械的な音楽
リコーダーの音色が遠くから聞こえる
また連絡します、と言って切れた電話は
それきりかかって来ることはなかった
雨は降っていないが鬱蒼とした空だ
国道の端を歩いていた男は
スマートフォンを操作しながら運転していた若い女の車の下敷きになって死んだ
ちくしょう、と彼の口が動いた
リコーダーの音色が遠くから聞こえる
なにかお探しですか?と、気まぐれで立ち寄った服屋で五月蠅いくらい若い男の店員に付きまとわれたので
試着室で首を絞めた、ぐう、と彼は声を上げて、あっという間に死んだ
小便と糞を漏らしていた
彼をそのままにして、適当に欲しい服を選んで、レジで精算した、セルフサービスだ
合計額のぶんだけレジから頂いた
試着室からどうしようもない臭いが漂い始めたので店を出た
ドアのところに掛かっている「OPEN」の文字を見てちょっと笑った
開いたのは肛門だよ
数十メートル歩いたところに運動公園があって
そのなかにある球場のマウンドあたりで高校生の、野球部らしき男子とテニス部らしき女子たちが数十人で盛大な乱交をしていた、さすがにそれには驚いて警官を呼ばなくちゃと思ったが
警官は一塁側のスタンドで足を組んで楽しそうにその光景を眺めていたので
いったん観客席に出てスタンドの屋根から奇襲をかけてバールのようなもので警官の頭を潰し
彼が背中に担いでいたガトリングガンを奪いマウンドに向けて撃ちまくった、なかなか性能の良いガンで
マウンドに居た若年性変態共は赤い霧になって消えた
撃つのを止めるとその霧は風に流れ、あとには酸っぱい臭いだけが残った、電光掲示板が忙しげに動いてコールドゲームだと告げたので
ガンを捨てて一塁二塁三塁を回りホームインしてからそこを後にした
悶々としたので球場外の公衆便所の個室で丁寧に処理をした
公衆便所を出ると見るからに欲求不満そうな女がこちらを眺めていて、ねえあんたさっき個室でなにしてたのと聞いてくるので
なんなら見せてやるよと言ってもう一度個室に入るとのこのこ付いてきたのでカモがネギ背負ってやってきたと首を絞めた、女はぐう、と言ってすぐに死んだ、すぐに死に過ぎて張り合いというものが無かった、そして小便と糞を漏らした、「OPEN」の文字が頭に浮かんだ
それはそれとしていい身体をしていて、せっかくなので処理させてもらった
ふらふらになってトイレを出るとさっき頭を潰してやった警官が立っていて何事か問いかけてきたが、言葉がもの凄く早くなったり遅くなったりするのでまったく何を言っているのか判らなかった、なので個室に連れて行って処理させてもらった、やつもまんざらではなさそうだった
これ以上このあたりをうろうろしているとずっと個室に出たり入ったり、個室で入れたり出したりしなければいけなくなるなと思って、最初の女の死体を頭の潰れた警官に押しつけてそこを離れた
頭の潰れた警官は敬礼をして見送ってくれたが、頭が潰れた警官がそれをやるとまるで頭を探してくれと頼んでいるみたいだった
運動公園を出ると雨が降り始めたので雨宿りをしなければならないと思い、コインスナックが近いことを思い出してそこに向かうと子供達が自動販売機を無理矢理にこじ開けて食いものを盗もうとしていたので全員車道に放りだした、みんな撥ねられたり敷かれたりして死んだ
カレーカップヌードルを作って食いながら彼らの死体を眺めた
死体は
行きかう車のタイヤに敷き潰されてすぐに見えなくなった
コインスナックで食べるカップヌードルはどうしてこんなに美味いのだろう
空に問いかけても答えは返ってこなかった
リコーダーの音色が遠くから聞こえる

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