枯れ草の積み上げられた空地
細長い雲が流れてゆく空
歌詞が思い出せないままの
途切れ途切れの鼻歌
何かしら心によぎるものはあるけれど
何ひとつ理由になるようなものはなかった
君は形の綺麗な色の無い藁を選んで
指先に幾重も絡ませて遊ぶ
心から心まで、届くとも届かないとも言えない
とめどない距離を僕たちは歩いて
秋の穏やかな空がそろそろ厳しい高さに変わる頃
初めてそれぞれの行く先を分かつことを選んだ
名前も分からない土地の、だだっ広い荒野の真ん中の
閃光が走り去った後の様な一本道
暢気な荷馬車の幻に溺れながら僕ら
すべては地平線の向こうで蜃気楼に変わるのだと知った
空を飛ぶ鳥に焦がれたら、水に泳ぐ術を欲しがるでしょう
肉を狩る牙を手に入れたら、草を食むのどかさを欲しがることでしょう
ひとつの幸せが両手に一杯になったら
新しい空っぽを欲しがってしまうのかな
君にその後に続くフレーズを教えてやりたいけれど
生憎僕もずっとその歌を思い出せないままで居た
巨大なホルンが唸る様な季節の風
がっちりと編まれた麦藁帽子が君の形のいい頭骨の上でプライドを見せている
二人で示し合わせて時計を隠してしまったから、ホテルに帰らなきゃいけない時間まで後どのくらいなのかよく分からない
帰れなかったら帰れなかったで
ふりだしに戻る、なんてわけにはいかないのかな
風の音にまぎれて、君のハミングが突然確かな旋律になる
それが別れの歌だったことを
突然
僕は思い出したのだ
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