ようやくにして、一生涯中、一番喜ばしい日が来ました。この日の事はいかなる些細な事でも深く頭脳のなかに浸み込んで忘れることが出来ません。まず朝早くから快く目が覚め、童貞方の友達との挨拶、それから雪のように純白の衣装を着たこと、聖堂に入りました時「天使達に取り囲まれた祭壇よ!……」と、讃美歌が始まりました時のことを皆よく記憶しております。しかし、実際を申せば私はこの日の事柄をみな言い表すことが出来ません。よし、これを言い表す事が出来ましてもこれを申したくありません。なぜならばちょうどある物の中には、一度空気に触れるとすぐその良い香りを失うものがあります。それと同じく心のなかにある深い喜び、感想を、この地上の言葉を以って言い表せば、すぐにその深い意味と天の香りとを失うからであります。
読んでくださってありがとうございます yui