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SaaSがもたらすインパクト―――システムはフローからストックへ

SaaSビジネスが本格的に立ち上がってきた。
ベンダー各社も取り組みを強化している。例えば、

●NTTは、SaaSオーバーNGNを掲げ、NTTグループ総力でSaaS事業に参入する。
●SAPジャパンは、ライセンス使用許諾権(EULA、エンドユーザーライセンス契約)をパートナーによる間接販売から、直接販売に切り替える。SaaSを見越して販売戦略を変更した可能性が高い。
●NECは2008年3月からSaaS提供を本格的に開始する。
●NECネクサソリューションズは、成果連動型で課金するSaaSを開始。
●丸紅情報システムは、メールなどの業務システムをSaaSで提供し始めた。

フェーズはちがえども着実にSaaSへ向けたテイクオフが進む。
ユーザーでは、自社システムからSaaSへシステムの切り出しが始まるだろう。ただし、SaaSを利用できないカスタムアプリケーションのシステムは自社所有のまま残る。だが、ICTコストを削減するには、自社システムを最小限にしなければならない。

自社システムがフローだとすれば、SaaSはストックだ。会社財務では、ストックは資産・負債(貸借対照表にあたる)だが、フローは損益になる(損益計算書にあたる)。システムのあり方にパラダイムシフトが起こると考える。ただし、100パーセントSaaSでまかなうというケースはないだろうから、混在型が続く。

販売パートナーやリセラーもビジネスモデルの大幅な転換が求められる。SaaSは、ISVが直接ユーザーにサービスデリバリを行なう。だが、販売パートナーやリセラーのビジネスがなくなるわけではない。SaaSベンダー1社ですべての顧客ベースをケアすることはできないからだ。SaaS導入コンサルティング、SaaSのカスタマイズなどを提供することになる。また、障害時にSaaSベンダーとユーザーの間に入ってトラブルシューティングすることも重要なサービスになるだろう。そういう意味で、販売パートナーやリセラーが長年顧客に密着して培ったSIサービス力はかたちを変えて必要とされ続ける。

またSaaSは、近年好調なアウトソーシングビジネスとも競合する。アウトソーサーにとっては脅威だ。アウトソーシングからSaaSへ切り替えるユーザーもでてくるとみる。

なお、ASP・SaaS事業者の業界団体であるASPインダストリ・コンソーシアム・ジャパン(ASPIC Japan)によれば、国内のASP・SaaS市場規模は、2007年で8,070億円、2010年には1兆5,000億円以上の規模に拡大すると予測している。
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