皆様こんばんは。
本日は第41期名人戦挑戦手合七番勝負第5局の2日目が行われました。
結果は井山裕太名人が、高尾紳路挑戦者に白番3目半勝ちを収め、2連勝!
これでシリーズは2勝3敗となり、いよいよ面白くなってきました。
それでは早速振り返っていきましょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/06/56/eee1cf2084a650785188222734aefe3e.jpg)
1図(封じ手・黒67)
封じ手は・・・黒△でした!
封じ手予想はこの一手という確信があったので、まさか外れるとは思いませんでした![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_ase2.gif)
多くのプロも同じだと思います。
それには理由がありまして・・・
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/6f/6c4547f2ce6b366b3e3e0d3c2312ca71.jpg)
2図(変化図)
黒2、4と取っても眼ができるわけでもなく、白をただ固めるだけです。
逆に下方の黒を白Aで閉じ込める手が生じてしまいます。
これは黒全くダメな図なので、実戦の封じ手は廃案にしてしまいました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/9e/9445de34c457f7555dbb7af59ddcef83.jpg)
3図(実戦白68~黒71)
ですが高尾挑戦者は、凄い事を考えていました。
黒4と打ち、白Aと繋げば黒Bと切って大コウを挑むつもりです!
コウ立てはおそらく黒Cでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/19/0a/f7872578cc0e0cad8aa952af5533036f.jpg)
4図(実戦白72~白74)
ややこしい事情があり、実戦は違う形のコウができました。
白1、黒2の後、白Aと打てば黒がアタリになるコウですが、ここで白3と切ったのはコウ立て作りです。
どういう事かと言いますと・・・
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/d4/496524fa132dbe405ff3f7d5a5e6eaae.jpg)
5図(変化図その1)
すぐ白1とコウにすると、白5までの振り替わりが想定されます。
この図の難点は、白1が非常につまらない所にあるという事です。
大雑把な言い方ですが、この白1は一手パスみたいなものです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/9c/04ce3e994e10201f326f1ac63d8b2cfe.jpg)
6図(変化図その2)
そこでコウを仕掛ける前に、黒3まで右下の黒を太らせておこうという狙いです。
白4とコウを仕掛け、白6が強烈なコウ立てになります。
コウ替わりに白Aと4子抜けては白良しです。
黒が2回逃げてから取られたのは酷く、前図とは数字で表せば10目ぐらい違うでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/a2/18b2df21e847c283d60db705976540b7.jpg)
7図(実戦黒75~77)
という訳で黒も2子を逃げず、黒3までの振り替わりとなりました。
5図との違いはAの所に白石が無いという事です。
白としては満足の分かれでしょう。
左辺の黒地が大きく見えるかもしれませんが、何しろポン抜き30目と言います。
白の勢力ができて、周りの黒が弱くなっています。
この差は物凄く大きいのです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/49/64/0cbc58d29b1c424a12b46a55def88622.jpg)
8図(実戦黒85)
右下黒△と打った場面です。
殆どの方は右上白△を動く事を考えるでしょう。
それはプロも同じなのですが、井山名人は違いました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/3e/0f19fb0edea379d7651c28210bac5e0b.jpg)
9図(変化図)
白1などと打ちたくなる所です。
ここで井山名人が、具体的にどんな図を嫌ったかは定かではありません。
例えばこのような図でしょうか?
白は黒4子は取れますが、黒△をポン抜いてこれ以上なく強い石に、さらに手をかけて地を増やしているだけと見る事もできます。
黒4で上辺白の薄みを衝いて来られ、主導権を奪われるかもしれません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/75/1c/368a6436dbbb6ab641738f947f034796.jpg)
10図(実戦白86~白90)
という訳で実戦は白1~5、薄い上辺を守る打ち方でした。
理屈は分かるのですが、そうは言ってもなかなか井山名人のようには打てません。
黒を取れる所で、逆に自分の石を捨ててしまうのですから・・・。
この大局観、流石名人だと思いました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/17/1cadfe7c22e5747998b676da4f3714ae.jpg)
11図(実戦黒97)
形勢はやや白リードしている印象です。
ここで黒△が高尾挑戦者の勝負手です!
白△をただ取るだけなら簡単ですが、中央を目一杯に構えて丸飲みするぞと言っています。
白としてもそれを許す訳にはいきません。
さて、どこまで踏み込むかですが・・・
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/84/f99b73112a58df177a58cd46b131111f.jpg)
12図(実戦白98~白100)
実戦は白1と最大限の踏み込み!![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face2_shock_s.gif)
黒2と利かしに来るのに対して、白3と迫ってあなたも弱いですよと言っています。
井山名人らしい気迫溢れる打ち回しで、このあたりの数手が本局のハイライトシーンと言って良いでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/a4/a1be0fcdfcd210b0360ee48c9b09bd3a.jpg)
13図(実戦黒101~白108)
黒1からは戦力増強の狙いですが、白8まで上辺を受け切りました。
白△が所謂「3目の真ん中」の急所に来ており、黒は思うように攻められません。
相手の弱みを衝く、凌ぎ方のお手本のような打ち回しです。
黒〇をポン抜いた厚みも睨みを利かせており、どうやら白は死ぬ心配が無くなったようです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/a6/ffdbd62fbbe773a6d00d91cd7fc3b3b1.jpg)
14図(実戦白128)
結局白1まで凌ぎに成功しました。
黒は白△は取れましたが、全体の地は白の方が多そうです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/56/9c1baa18d8d88b4ea03356ffdf53cda2.jpg)
15図(実戦白134~白136)
白1から3のヨセも上手い!
白△を利用して最大限に踏み込んでいます。
このあたりで白の勝ちがはっきりしたと思います。
なかなか調子の出なかった井山名人ですが、猛然と追い上げ始めました。
ここ2局は内容も素晴らしく、いよいよ本領発揮といった印象です!
一方の高尾挑戦者も打ちたい手を打っており、連敗したとはいえ決して調子は悪くなさそうです。
第6局でどんな戦いを見せてくれるのか、楽しみですね!
第6局は10月26日(水)、27日(木)、静岡県河津町「今井荘」で行われます。
ぜひご覧ください!
本日は第41期名人戦挑戦手合七番勝負第5局の2日目が行われました。
結果は井山裕太名人が、高尾紳路挑戦者に白番3目半勝ちを収め、2連勝!
これでシリーズは2勝3敗となり、いよいよ面白くなってきました。
それでは早速振り返っていきましょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/06/56/eee1cf2084a650785188222734aefe3e.jpg)
1図(封じ手・黒67)
封じ手は・・・黒△でした!
封じ手予想はこの一手という確信があったので、まさか外れるとは思いませんでした
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_ase2.gif)
多くのプロも同じだと思います。
それには理由がありまして・・・
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/6f/6c4547f2ce6b366b3e3e0d3c2312ca71.jpg)
2図(変化図)
黒2、4と取っても眼ができるわけでもなく、白をただ固めるだけです。
逆に下方の黒を白Aで閉じ込める手が生じてしまいます。
これは黒全くダメな図なので、実戦の封じ手は廃案にしてしまいました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/9e/9445de34c457f7555dbb7af59ddcef83.jpg)
3図(実戦白68~黒71)
ですが高尾挑戦者は、凄い事を考えていました。
黒4と打ち、白Aと繋げば黒Bと切って大コウを挑むつもりです!
コウ立てはおそらく黒Cでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/19/0a/f7872578cc0e0cad8aa952af5533036f.jpg)
4図(実戦白72~白74)
ややこしい事情があり、実戦は違う形のコウができました。
白1、黒2の後、白Aと打てば黒がアタリになるコウですが、ここで白3と切ったのはコウ立て作りです。
どういう事かと言いますと・・・
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/d4/496524fa132dbe405ff3f7d5a5e6eaae.jpg)
5図(変化図その1)
すぐ白1とコウにすると、白5までの振り替わりが想定されます。
この図の難点は、白1が非常につまらない所にあるという事です。
大雑把な言い方ですが、この白1は一手パスみたいなものです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/9c/04ce3e994e10201f326f1ac63d8b2cfe.jpg)
6図(変化図その2)
そこでコウを仕掛ける前に、黒3まで右下の黒を太らせておこうという狙いです。
白4とコウを仕掛け、白6が強烈なコウ立てになります。
コウ替わりに白Aと4子抜けては白良しです。
黒が2回逃げてから取られたのは酷く、前図とは数字で表せば10目ぐらい違うでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/a2/18b2df21e847c283d60db705976540b7.jpg)
7図(実戦黒75~77)
という訳で黒も2子を逃げず、黒3までの振り替わりとなりました。
5図との違いはAの所に白石が無いという事です。
白としては満足の分かれでしょう。
左辺の黒地が大きく見えるかもしれませんが、何しろポン抜き30目と言います。
白の勢力ができて、周りの黒が弱くなっています。
この差は物凄く大きいのです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/49/64/0cbc58d29b1c424a12b46a55def88622.jpg)
8図(実戦黒85)
右下黒△と打った場面です。
殆どの方は右上白△を動く事を考えるでしょう。
それはプロも同じなのですが、井山名人は違いました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/3e/0f19fb0edea379d7651c28210bac5e0b.jpg)
9図(変化図)
白1などと打ちたくなる所です。
ここで井山名人が、具体的にどんな図を嫌ったかは定かではありません。
例えばこのような図でしょうか?
白は黒4子は取れますが、黒△をポン抜いてこれ以上なく強い石に、さらに手をかけて地を増やしているだけと見る事もできます。
黒4で上辺白の薄みを衝いて来られ、主導権を奪われるかもしれません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/75/1c/368a6436dbbb6ab641738f947f034796.jpg)
10図(実戦白86~白90)
という訳で実戦は白1~5、薄い上辺を守る打ち方でした。
理屈は分かるのですが、そうは言ってもなかなか井山名人のようには打てません。
黒を取れる所で、逆に自分の石を捨ててしまうのですから・・・。
この大局観、流石名人だと思いました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/17/1cadfe7c22e5747998b676da4f3714ae.jpg)
11図(実戦黒97)
形勢はやや白リードしている印象です。
ここで黒△が高尾挑戦者の勝負手です!
白△をただ取るだけなら簡単ですが、中央を目一杯に構えて丸飲みするぞと言っています。
白としてもそれを許す訳にはいきません。
さて、どこまで踏み込むかですが・・・
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/84/f99b73112a58df177a58cd46b131111f.jpg)
12図(実戦白98~白100)
実戦は白1と最大限の踏み込み!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face2_shock_s.gif)
黒2と利かしに来るのに対して、白3と迫ってあなたも弱いですよと言っています。
井山名人らしい気迫溢れる打ち回しで、このあたりの数手が本局のハイライトシーンと言って良いでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/a4/a1be0fcdfcd210b0360ee48c9b09bd3a.jpg)
13図(実戦黒101~白108)
黒1からは戦力増強の狙いですが、白8まで上辺を受け切りました。
白△が所謂「3目の真ん中」の急所に来ており、黒は思うように攻められません。
相手の弱みを衝く、凌ぎ方のお手本のような打ち回しです。
黒〇をポン抜いた厚みも睨みを利かせており、どうやら白は死ぬ心配が無くなったようです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/a6/ffdbd62fbbe773a6d00d91cd7fc3b3b1.jpg)
14図(実戦白128)
結局白1まで凌ぎに成功しました。
黒は白△は取れましたが、全体の地は白の方が多そうです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/56/9c1baa18d8d88b4ea03356ffdf53cda2.jpg)
15図(実戦白134~白136)
白1から3のヨセも上手い!
白△を利用して最大限に踏み込んでいます。
このあたりで白の勝ちがはっきりしたと思います。
なかなか調子の出なかった井山名人ですが、猛然と追い上げ始めました。
ここ2局は内容も素晴らしく、いよいよ本領発揮といった印象です!
一方の高尾挑戦者も打ちたい手を打っており、連敗したとはいえ決して調子は悪くなさそうです。
第6局でどんな戦いを見せてくれるのか、楽しみですね!
第6局は10月26日(水)、27日(木)、静岡県河津町「今井荘」で行われます。
ぜひご覧ください!