白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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藤沢三段、タイトル奪取!

2016年10月24日 22時28分06秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日、第35期女流本因坊戦(共同通信社)第4局が行われました。
結果は挑戦者の藤沢里菜三段謝依旻女流本因坊を黒番中押し勝ちで破り、3勝1敗でタイトルを奪取しました!
それでは早速振り返っていきましょう。
なお、この対局は幽玄の間にて、林子淵八段の解説付きで中継されました。



1図(実戦白26)
序盤から戦いの碁になっています。
白△とツケた場面ですが、「ツケにはハネよ(ノビよ)」ですから、黒AかBが通常の応手です。





2図(実戦黒27~黒29)
ところが、実戦は何と黒1のハネ出し!
ハネと名前が付いていても、全く意味が異なります。
ハネは自然な手、ハネ出しは強手です。





3図(実戦白30~黒41)
思わぬ振り替わりになりました。
白11まで、白としては全く変化の余地がありません。
つまり、黒12までが藤沢三段が目指した図という事です。
左下の黒を捨てて勢力を築こうという、何とも思い切った作戦でした。





4図(実戦黒43~黒59)
白が右下にカカって来たのに対し、黒15まで戦いに持ち込んだのも一貫した作戦です。
左下の分かれで得た勢力を生かし、戦いでポイントを挙げていく狙いです。





5図(実戦白60~黒65)
白1から下辺の黒を切り離して反撃しましたが、黒6が落ち着いた好手でした。
次に黒AとBを見合いにしています。





6図(変化図)
白1と左下を守れば、黒12で中央の白を取りに行くつもりです。
黒8まで、黒△が働いている事が分かります。





7図(実戦白66~黒77)
という訳で、白1と中央を守ったのは止むを得ませんが、黒2がもう1つの狙いです。
黒12まで、白地を破りながら下辺に根拠を持っては、黒大成功です。
白は上下に弱い石が残っています。





8図(実戦黒95~白98)
その後下辺の白は生きましたが、黒1と中央の白を攻める事になっては黒大優勢です。
白4に対し、黒Aと震えて守っていても地は十分でしょうが・・・。





9図(実戦黒99~黒107)
藤沢三段は、逃げて勝つつもりはありませんでした。
黒1と上下を分断!
どちらかの白を取ってしまおうという、最強手です。





10図(実戦白108~白112)
白は1から黒2子を切り離し、さらに白5のツケと撹乱します。
黒にも色々弱みがあり、白に逆転のチャンスが来たようにも感じました。





11図(実戦黒113~黒119)
しかし、藤沢三段に迷いはありませんでした。
黒1、3を利かし、黒5、7と切って行ったのは最強手です。





12図(実戦白120~黒125)
白5まで隅を破られたようですが、黒6となって外側の黒が強化されました。
こうなると、次に黒Aと眼を取りに来られると、中央の白は助かりません。





13図(実戦白126~黒127)
白1と中央を生きたのは仕方ありませんが、黒2に回られて右上の白がピンチです。
黒勝勢ですが、藤沢三段はここからも緩みません。
白はコウに持ち込もうとしたのですが、それを拒否して無条件で取りに行きました。
結果、見事仕留めてここで決着を付けました。

本局、藤沢三段には明らかな悪手が全く見当たりませんでした。
そして謝女流本因坊の僅かな隙は的確に咎め、優勢を確立していきました。
素晴らしい内容だったと思います。
私が見た限りですが、藤沢三段としては今までで一番の内容ではないでしょうか。

これで謝女流本因坊の五冠独占は崩れました。
しかし、まだ四冠持っていますから、今後も藤沢三段をはじめとした女流棋士が挑戦していくことになります。
今後も謝一強時代が続くかもしれませんし、世代交代で藤沢時代が到来する可能性もあります。
また、他の棋士も黙って見てはいませんから、群雄割拠の時代になるかもしれません。
今後も女流囲碁界から目が離せませんね!

さて、独占と言えば、もう一つ気になる事がありましたね。
10/26(水)、10/27(木)には、第41期名人戦第6局が行われます!
井山裕太名人が七冠維持に向けて粘りを見せられるか、高尾紳路九段が独占を崩すのか!?
見逃せない戦いです。
ぜひご覧ください!

なお、明日は本日行われた、一力遼七段と中国の李欽誠九段の対局をご紹介する予定です。
そちらもぜひご覧ください。
(追記)明日も対局があるようなので、ご紹介する碁は変わるかもしれません。