白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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名人戦第6局・封じ手予想

2016年10月26日 18時27分04秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日、第41期名人戦挑戦手合七番勝負第6局が始まりました!
高尾紳路挑戦者の3連勝から始まって、どうなるかと思われたシリーズでしたが、井山裕太名人も2勝を挙げ、俄然面白くなって来ました。
相手が相手だけに、もはや高尾挑戦者にも余裕は無いでしょう。
両者必死の戦いです!

それでは早速、1日目の対局の模様を振り返っていきましょう。
なお、この対局は幽玄の間にて、高梨聖健八段の解説付きで中継されています。
また、ニコニコ生放送でも観戦できます。



1図(実戦黒15)
右上で定石が進行中ですが、手を抜いて黒△のカカリに先行した手が、井山名人の工夫です。





2図(変化図)
黒1、3と右辺、上辺をしっかり守る打ち方が定石です。
黒が高尾挑戦者なら、こう打ったのではないでしょうか。





3図(実戦白16~黒23)
実戦は1、3の点は白が占める事になりました。
白はがっちり治まり、周囲の黒は弱くなっています。
高尾挑戦者好みの展開でしょうが、それは井山名人も承知の上です。
黒8に先行し、全体的に薄くても、スピードで圧倒する作戦でしょう。





4図(実戦白24~黒33)
左下で白1とじっくり力を溜めた手に対しても、黒2、4と足早作戦です。
下辺と左辺を両方打っていきました。
ここで私なら白Aと打ち込んで、黒2の石の攻めを狙う手が思い浮かびますが・・・。





5図(実戦白34~白36)
実戦、ここでさらに白1とは!
高尾挑戦者らしい重厚な一手です。
足が遅い手なので、余程追い込みに自信が無いと、こうは打てません。

また、力を溜めたので、次は白Aから出切って仕掛けるのかなと思っていたら、実戦はあらぬ方向に白3!
見た瞬間は、白Aが上手く行かないとみての、予定変更かと思いましたが・・・。





6図(変化図その1)
この後、もし黒1と受けてくれれば、白2と右辺に入って行く予定でしょう。
ただ地を荒らすだけではなく、黒△の攻めを狙っています。
高尾挑戦者は、最初からこの方面が大きいと見ていたのでしょう。
では、何故その前に白△と打ったかというと・・・。





7図(変化図その2)
いきなり白1と打つと、このような展開が想定されます。
前図との違いは、白Aに石が無い事です。
後から白Aと打っても、下辺の黒を固めた後なので、もう黒Bなどと守ってはくれません。
最初に白Aと打ったのは、左下に力を入れていると見せかけ、その実白1を有効に打つための作戦だったとみられます。
部分に拘るような手を打ち、実は全局を見ている・・・何とも深い打ち方です。





8図(実戦黒37~白38)
井山名人としても、6図のような相手に都合の良い図を許すわけにはいきません。
黒1と反撃し、白2を迎え撃って戦う事になりました。
6図の実現はあり得ないので、この展開は高尾挑戦者の想定通りでしょう。





9図(実戦白62~黒67)
右下の白は、とても取れる石ではありません。
黒は自分の石を強化しながら攻め、白は1と脱出して一段落です。
そして先手を取った黒は、2~6までと、あくまでもスピードを重視して走り回りました。
左上の白が心細くなりましたが・・・。





10図(変化図)
ここで白1と、がっちり根拠を確保しておく手は本手ですが、黒2と左辺を黒地にされては、流石に追い付けなくなります。
せっかくの白△が働いていません。





11図(実戦白68)
実戦は白1でした。
白△を生かした手で、黒△を取り込みました。
この一手でしょう。
さて、ここで封じ手になりましたが・・・。





12図(封じ手予想)
封じ手予想は、黒△の這いです!
白の手抜きを咎め、左上白の根拠を奪って攻める狙いです。
当たる自信はありますが、しかし前回は絶対に当たると思った手を外しているので、あまり当てになりませんね。

1日目は戦いもあったとはいえ、第5局までと比べれば、非常に落ち着いた展開だったと思います。
しかし双方に薄い石ができており、2日目は一転して激しい戦いになるかもしれませんね。
明日もお楽しみに!

※明日は私も対局があるため、その間twitterでの実況等は行いません。