白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

本日の問題

2016年04月15日 23時59分59秒 | 問題集
本日は私の対局に出来た手筋を問題にします。
といっても難易度は非常に高いので、観賞用と思って頂いて結構です。


白に手番が回りました。
左辺の黒はダメヅマリで味が悪いですが、どう咎めますか?





白1と直接動くのは、これ以上続きません。





こちらも同様です。





これもダメです。






色々な動き方を保留して、単に白1とツケました。
利きが複数ある時は決めないのが手筋です。
実はこれで黒は困っています。





黒1なら白2、4です。
攻め合い白勝ちです。







黒1ならば白2が良い手です。
黒はダメヅマリに泣きます。





実戦は黒1と我慢しましたが、白は黒1子を切り離して成功です。
今回題材にした形は難しいものですが、ダメヅマリの恐ろしさはプロもアマも変わりません。
皆様もダメヅマリにはご用心ください!

本日の対局

2016年04月14日 23時59分59秒 | 対局
世紀の大一番、伊田十段が踏ん張りましたね。
伊田十段が序盤でリード、その後井山さんの粘りで勝負に持ち込まれるも、なんとか逃げ切りという印象でした。
伊田十段の碁は独特です。
今回の対局、中盤以降の打ち方は棋士の間ではかなり評判が悪かったです。
しかし結果は勝っているのですから、我々とは違う世界が見えているのかもしれません。
4月20日(水)の第4局がどうなるか、楽しみです。
さて、本日の題材は裏で細々と行われた私の対局です。



黒は鈴木伸二六段、ここで白番です。
どういう構想を描きますか?





右辺が気になって白1を打たれる方、結構多いかもしれません。
失格です(笑)
白3と打っても黒にひびかず、黒4となっては下辺のスケールが大幅にダウンしました。
この碁黒が遠慮気味に14までと進めてみますと、もう白は勝てません。
プロ同士なら勝負は終わりと言って良いでしょう。



信用できない方のために、ざっと境界線を引いた上で地を示してみました。
黒地が×、白地が△です。
1分ぐらいで作った図なのでちょっと雑ですが、当ブログはプロ向けではないので問題ありません(笑)
この図ですと黒地49目、白地36目ということになります。
右辺の2間開きは、攻めの対象になるので地とは見られません。
おまけして0目という所ですね。
序盤からこれだけの差になってしまうのは、それだけ右辺がつまらない場所だったということです。





白1カケというのは厳しい手で、ちょっと打ってみたくもあります。
しかし黒16までの進行が予想され、多くの白石が右辺に向かってしまうのが気分の良くない所です。
よってこれも廃案としました。





ストレートに押し切っていきました。
左下に白の勢力があり、これを生かして下辺一帯の白模様を拡大するべき所です。
黒16と切ってきても構わず模様を拡大し、白のスケールの方がはるかに大きいでしょう。





実戦は黒1と突入して、戦いになりました。
この戦いで優位に立ちましたが、終盤が拙くて勝ちきれませんでした。
若手は終盤が正確です。

本日の指導碁

2016年04月13日 23時59分59秒 | 仕事・指導碁・講座
皆様こんばんは。
明日はいよいよ皆様が待ち望んだ大一番ですね。
井山七冠誕生なるか、伊田十段意地を見せるか!
正直な所自分の対局よりも気になっています(笑)

さて、
本日の題材も五反田での指導碁です。
今回は6子局です。



黒は白3に対して小考、ボウシではなく1路手前の黒4と打ちました。
こういう手はどの本にも載っていないでしょう。
しかし序盤は1局の中でも最も自由な時間ですから、打ちたい手を打って頂いて良いのです。
アマの方がご自身で工夫されて打たれると、嬉しくなりますね。
黒10まで堂々の布陣です。



手数が進んでこのような場面になりました。
白が切るぞと言っていますが、どうしますか?





ツギは素直ですが、白2のブツカリを利かされるのが悔しい所です。
目を作る余地ができるため、白が楽になってしまいます。
黒も白の狙いを察し、ブツカリを打たせたくないと考えました。
そこまでは素晴らしかったのですが・・・





黒1!これが打ってはいけない手でした。
余計な手出しをしてしまう、これを私はいたずらをすると呼んでいます(笑)
いたずらの結果黒3の急所は打てたものの、白4と切られてしまいました。
切られれば黒9以下と逃げ出すしかなく、その間に白に中央でのさばられてしまいました。





ここは黙って黒1の急所に打っておけば良かったのです。
白2と切るわけにはいけません。



白も2と打っても空き三角になりますから、打たないところです。
後手を引いてしまい、黒5とかぶせられては終わりです。
相手が打たない白2の地点に打ってしまったというのが、いたずらである所以です。





結局白2と打つぐらいですが、黒3でしっかりつながることができます。
黒5と打てば白6と打たなければいけませんから(同点に打たれると取られる)、先手で生きも確保できます。
すると黒7のような攻めも安心して打てます。
白14までと切られても、黒は生きているので何の心配もありません。
続けて△の切りなども気になりますが、寛大な心で許して差し上げて黒17。
こんなことになったら白は投了したくなりますね。
黒、大勝です。

たった1手のいたずらで天国から地獄へ、という一局でした。
皆様、いたずらにはお気を付けください!

本日の指導碁

2016年04月12日 23時59分59秒 | 仕事・指導碁・講座
皆様こんばんは。
本日の指導碁には、10数年前にお会いした方がいらっしゃいました。
こういった嬉しい再開も、囲碁をやっているとしばしばあります。
年齢に関わらず楽しめる、囲碁の大きな魅力の一つですね。
さて、それでは本日も指導碁を題材にしていきます。



4子局で黒番です。どこに目を向けますか?





危ない石を逃げる黒1は素直な手ですが、攻められて白に主導権を握られてしまいます。
置碁で白に石を攻められるというのは、概ね負けパターンです。





隅の石を逃げても苦しむだけと見て、手を抜きました。
素晴らしいセンスです。
しかし白6までと進行してみると、黒の主張できる場所があまりありません。
黒1の着点が問題でした。





黒1が正解でした。
左辺一帯に黒の勢力があり、これを生かして大きく構えます。
白は荒らしに行かなければなりませんが、前図と違って1手違うので、白は非常に苦しい姿です。

置碁で非常に重要な要素の一つに、どちらを主導権を握るかという事があります。
ですからこの最終図の黒1のように、戦いが起こりそうな場所に予め石を配置しておくのは非常に有効です。
身に付ければ必ず置碁の勝率アップにつながりますので、皆様ぜひお試しください!

オープン初日

2016年04月11日 23時59分59秒 | 仕事・指導碁・講座
五反田の指導碁教室がオープンしました。
また、お祝いのお花も頂きました。
ありがとうございます!


他にも1人目のお客様、1人目の会員など、嬉しい事が多い1日でした。
これからも頑張っていきたいと思います。

さて、今日は私の指導方針についてのお話をしたいと思います。
私は棋士になってから5000~6000局ほど指導碁を打ってきました。
それだけ打ってきた中でわかったことは、プロから見て最善の手を教えるのが良い指導法とは限らないということです。
本日の指導碁を題材に、具体的に見てみましょう。



2子局です。
白に3子アタリにされた場面、黒はどうしますか?




実戦は3子を捨て、黒1、3と安全を確保しました。
その代わり3子を取った白は猛烈に厚くなり、白8までと攻めを開始しました。
上辺の黒もまだ生きていないため、三方絡みの可能性もあります。




3子は助けるべきでした。
白2と目を取りに来ても、黒9までと打っているぐらいでも逆に白の薄みを狙うことができます。
また、いざとなれば左辺黒11、13と打っていつでも生きられます。
勝負所ではゆるまず、しっかりと読み切るように心がけましょう。

・・・というのがこの方への局後の指導でした。
2子で対局されるぐらいですし、この方には読みの力があるという判断がありました。
しかし、もしも読み切る力が無い方だったらどうなるでしょうか?




仮にプロから見て正解の黒1を打ったとして、白12までと死んでしまった・・・。
こういったことはよくあることです。
この場合の指導は、3子に拘ったのが失敗で最初の図のように大石を守っておくべきだった、ということになります。
正反対の教え方になっていますね。
いきなり最善を身に付けられる見込みがないのに頑張れ頑張れと教えるのは意味がありません。
むしろ無理をする癖がついてしまう恐れがあります。
最善の指導は、一人一人の棋力や棋風によって違ってくるものです。

皆さんもご自身で勉強される時はそのあたりに気を使って頂けると良いかと思います。
例えばプロの棋譜並べにしても、世界戦の激しい碁は意味がわからない、という方は無理に並べる必要はありません。
国内の穏やかな碁の方が身に付きやすいのであれば、そちらを並べるべきです。
詰碁が苦手な方が無理にぎりぎりの難易度の問題ばかりやっていれば、ますます詰碁が嫌になってくるでしょう。
難易度を下げて楽に解くようにすれば、逆に詰碁が楽しくなってくることもあるでしょう。
ぜひ皆様それぞれの最善の勉強法を見つけて頂きたいと思います。