白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

電王戦&教室のこと

2016年04月10日 22時39分07秒 | AI囲碁全般
今日はニコ生で将棋電王戦を見ていました。
将棋自体はほとんど理解できていませんが、解説を聞いてわかったつもりになれるのがアマの特権ですね(笑)。
個人的にはコンピュータを相手にした山崎八段の姿に注目していました。
人間代表として出場している以上、凄まじいプレッシャーの中で戦っている様子でした。
それだけに負けがはっきりしてからの山崎八段の姿は痛々しいものがありましたね。
指す手が見つからず、投げることもできない・・・。
盤自体を取っ払ってしまえば、囲碁棋士も将棋棋士も勝負師としての姿は同じです。
あのつらさ、身に覚えのある囲碁棋士は多かったのではないでしょうか。
私にもありますが、そういう時は声が全く出なくなってしまいます。
しかし山崎八段ははっきりした声で「負けました」と頭を下げました。
見事な負け姿だったと思います。
次戦はぜひ勝利を挙げて欲しいですね!


話は変わりますが、明日から五反田にて指導碁専門の会場をオープンします。
詳細はホームページへどうぞ。
ご都合の合う方は、ぜひお越しください。

本日の指導碁

2016年04月09日 23時59分59秒 | 仕事・指導碁・講座
本日は永代塾囲碁サロンで指導碁でした。
開始前にはトークショーも・・・。
下坂さんのようにはいきませんが、30分持っただけでも良しとしておきましょう!

さて、それでは今日の指導碁を題材にして置き碁の打ち方(双方)を学びましょう。

3子局で、白が猛烈に攻められている場面です。
どう対処しますか?



こういう時にただ逃げるだけでは一方的に攻められてしまいます。
黒地もどんどん固まってしまうでしょう。



黒も腰が伸びた形であることに目を付けます。
白1、3の出切りで反撃しました。
シチョウに取られない事はご確認ください。



黒は大石を守らなければいけませんが、白4で目がありません。
上下の薄みが絡み模様になってきました。



最終的にはこのような形になり、白は中央の2子を取って大威張りの生きとなりました。


古来より伝わる「囲碁十訣」のひとつに、こういう言葉があります。
攻彼顧我(攻める時には自分を顧みよ)
特に3子局では、この心構えが非常に重要になってきます。
置石が少なくなってくるので、がむしゃらに攻めるだけでは危険です。
しっかりと足元を固めながら攻めましょう。
逆に白の立場としては、攻められている時こそ相手の隙を探しましょう。
蟻の一穴から堤が崩れるというのは、碁ではよくあることなのです。

本日の対局

2016年04月07日 23時59分59秒 | 対局
本日は対局でした。
碁盤の貼り付けテストを兼ねて振り返ってみます。
私の黒番です。


白1とハネて来られた場面、どうしますか?




素直に受けると、左辺を目一杯に止められてしまいます。
これが白の注文です。




相手に都合の良い図は許してはいけません。
黒1と反発しました。
勢い白2の分断に、黒11まで左辺を荒らして治まることに成功、黒優勢となりました。




手数が進みましたが、黒は優勢を維持しています。
ここで白1、3の仕掛けが来ました。
黒はどう対処すべきでしょうか?




黒1は堂々の戦い方です。
しかし白Aなどで隅を抉って来る狙いもあり、気持ちが悪い。
優勢の黒としては避けたいと感じました。




シチョウが悪いので、この図も取りづらい所です。
中央が大きくなってしまいます。




黒1の二段バネも手筋です。
黒9までとなれば白10が必要(下がられると死にます)、黒11とポン抜けば十分です。




しかし二段バネは際どい手なので、瞬間白2と工作してくるかもしれません。
白14となって、左右の黒がはっきりとは生きていません。
これでもなんとかなりそうな気もしますが、あえて危険を冒す必要はないと考えました。




実戦はポン抜かせて2線を渡る、アマの皆さんに大人気の打ち方です(笑)
この碁は黒に弱い石が全くないため、ポン抜きを許しても厚みとしては働く場所がありません。
黒9に回って勝ちが決まりました。

基本に忠実に打つことは非常に大事です。
しかし、アマ高段者ともなれば時には基本に拘らず臨機応変に打つことも必要です。
ご参考になれば幸いです。
級位者の方はあまり真似をしないでください!(笑)


ところで今日日本棋院ネット対局「幽玄の間」で中継された武宮九段-平田七段の対局は面白かったですね。
平田七段、大先生に対してこんなに自由奔放な布石を打てるとはすごい度胸です。
元々かなり個性的な碁を打っていましたが、最近さらに磨きがかかって来た気がします。
今後も平田七段の碁にご注目ください!

囲碁とは何か

2016年04月06日 22時07分15秒 | 囲碁について(文章中心)
哲学的なタイトルになってしまいましたが、盤面の広さについてのお話です。
プロアマ問わずほとんどの対局は19路盤で行われ、囲碁未経験の方のイメージもそちらだと思います。
19路盤以外が存在することすら知らない方も多いでしょう。
囲碁未経験の方に囲碁についてのイメージを聞くと、多くの方はこう答えます。
「戦国武将やご隠居さんがじっくりと時間をかけて対局するゲーム」
実際にそういう文化はしっかりと根付いており、これからも続いていくことでしょう。
しかし、それだけで良いのでしょうか。

先日囲碁未経験の社会人の方とお話ししましたが、その方はこういうことを仰いました。
「囲碁みたいな時間のかかるゲームをやるぐらいなら、社会人は仕事の勉強をするべきだ」
世間の多くの人がそう考えているとすると、これは問題です。
「短い時間で気軽に楽しめるゲームではない」そのイメージが囲碁普及の大きな障害になっていると思います。
あらゆる世代、生活リズムの方に普及していくためには、まずこのイメージ改善が必要であると考えています。
「時間をかけてゆっくり楽しむこともでき、短い時間で気軽に楽しむこともできる」というイメージであれば、試しにやってみようかと思う方も増えるのではないでしょうか。

Q.では、実際に囲碁を短い時間で気軽に楽しむことはできるのでしょうか?
A.はい、できます。
そもそも囲碁はどんなゲームかと言いますと、
1、黒と白交互に1手ずつ打つ
2、石を打つ場所は線と線の交わる場所
3、相手の石を完全に囲んだら取れる
4、最後に囲った陣地の多い方が勝ち
その他の細かいルールはありますが、基本的には囲碁の概念を表すにはこれだけで十分でしょう。
これに制約が増えていけばいくほど、囲碁のハードルは上がっていきます。
自分からそういったものを求めていく分には良いのですが、周りがそれを押し付けてはいけません。
さて、それでは冒頭に挙げた本題です。


○碁盤の広さ
「19路盤以外は囲碁ではない」
囲碁を打てる方でも、こういったイメージを持っている方が非常に多いですね。
ですから20分、30分の空き時間にちょっと1局打つというのは難しくなってしまいます。
また初心者は早く19路盤で打たなければならないと思って焦ってしまいます。
本来は7路、9路、11路、13路・・・といった狭い碁盤で対局数を重ねる方が遥かに効率的に上達できるのですが、19路盤デビューが早すぎて壁にぶつかってしまいます。
「広すぎて何をしたら良いのかわからない、囲碁って難しい」・・・こうなってしまうケースが非常に多いですね。
最悪の場合は「自分には向いてない、やめよう」となってしまいます。

しかし実際には、狭い碁盤であっても囲碁というゲームであることには何ら違いがありません。
違うのは布石、中盤、終盤の割合だけです。
9路盤はプロでさえ必勝法を見つけられていないのですから、アマの方なら毎局違った展開が楽しめるはずです。
それが11路、13路となってくればこれは人間では極めるのが不可能というレベルになってくるでしょう。

近年、プロ参加の13路盤棋戦が行われるようになってきました。
↓現在予定中のイベントです。1口3000円から、どなたでもスポンサーになれます。
第1回13路盤プロアマトーナメント
碁盤の一部分と全体という概念がはっきりしてくるのは13路盤ぐらいからですね。
序盤を徹底的に研究して相手が1手でも間違えたら必ず勝つ、というのはプロでも不可能になってきます。
その上で19路に比べてやはり石がぶつかりやすいので、棋力の低い方にも分かりやすく、楽しみやすいと思います。
同様に15路や17路もあって良いと思います。
あるいは方向性は逆になりますが、21路盤、あるいは思い切って23路盤対局などのイベントも面白いのではないでしょうか。
碁盤そのものが大きくなってしまうので、普段打つには不便でしょうけど(笑)
いずれにしても、プロの側としても囲碁という枠を広げていくべきと考えています。

○コミについて○
ついでにコミについて触れておこうと思います。
盤上に見えない物のせいで勝敗が変わる・・・なかなか納得し難いのではないでしょうか。
囲碁の入門時に少なからずマイナスになっているように思われます。
そもそも日本棋院は日本囲碁規約という囲碁のルールを定めていますが、その中にコミというルールはありません。
コミというのは、あくまでプロ同士の対局における追加ルールです。
トーナメントの開催により1回の対局で勝者を決める必要上、特別に定められているものです。
ですから大会などを除いて、必ずしもアマで採用する必要はないと思います。
2局1セットで考え、前回は黒だったから今回は白、という形でも良いのです。
昔の人は皆そうやっていました。
またコミを導入するにしても、6目"半"などとしないで、6目とか7目としておけば良いのです。
囲碁はコミュニケーションツールとしての役割もありますから、引き分けが生じることはむしろ歓迎すべきことでしょう。
初心者の場合は習慣に従わざるを得ませんから、まずは今囲碁を打っている方々から変わっていく事が大事かと思います。