白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

天元戦第3局

2018年11月23日 23時45分31秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
明日は女流本因坊戦第3局が行われます。
ここまで藤沢里菜挑戦者が2連勝しており、女流本因坊奪取まであと1勝です。
謝依旻女流本因坊は、この苦境を凌ぐことができるでしょうか?
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は天元戦第3局が行われました。
早速振り返っていきましょう。



1図(実戦)
井山裕太天元が白1と打って上下の黒を分断しましたが、山下敬吾挑戦者は黒2と反撃!
ならばと白は3と切っていきました。
早くもきな臭くなってきましたね。





2図(実戦)
白は中央に壁を作った後、満を持して白△とカケ、黒×を包囲!
この攻撃は厳しく、黒が苦境に陥った感があります。





3図(実戦)
白1の押しに対して、黒3と伸びていれば無難です。
しかし、山下挑戦者は黒2のハネ!
白3の切りがいかにも厳しいように見えますが、とにかく白にプレッシャーをかけなければチャンスは来ないとみたのでしょう。
山下挑戦者らしい選択です。





4図(実戦)
しかし、白△まで、上辺黒が再び包囲される形になってはやはり黒が苦しいですね。
この後は白が黒の無理手を咎め、短手数で勝ちを決めました。


本局は山下挑戦者にしては珍しく、あまり粘れなかったですね。
不本意な内容だったでしょうが、それにしても井山天元には隙がありませんでした。

第4局は12月10日(月)に行われます。
お楽しみに!

苑田勇一-羽根泰正戦

2018年11月22日 23時45分34秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
本日の対局は勝ちました。
内容はかなり押されていましたが、運が良かったですね。
来週も頑張ります。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
木曜日は日本棋院棋士の公式対局日です。
本日も多くの対局が日本棋院ネット対局幽玄の間で中継されました。
今回は苑田勇一九段と羽根泰正九段の対局をご紹介しましょう。
苑田九段は関西棋院、羽根九段は日本棋院中部総本部の所属です。



1図(実戦)
苑田九段の黒番です。
黒△はいかにも良さそうな手ですね。
単に白のハザマを衝いただけでなく、白A、黒B、白Cの切断を防いでいます。
攻防兼備の一着です。





2図(実戦)
黒△まで、白×を取り込むことになっては黒成功でしょう。
黒全体に不安が無くなったことが大きいですね。





3図(実戦)
白△の強烈なカケは、羽根九段らしいですね。
黒×を最も厳しく攻める手です。
中京のダイヤモンドの異名を取る羽根九段は、武闘派として有名です。





4図(実戦)
しかし、黒はさらっとかわしてしまいました。
黒×が取られると中央白は強力な厚みになりますが、働く場所が無いとみているのですね。
その判断は正しく、黒がこのまま押し切って中押し勝ちとなりました。


これで苑田九段は1000勝を達成しました。
西の宇宙流として有名ですが、それは一面に過ぎず、碁盤全体を見た打ち回しができることが強みなのではないかとみています。
付け加えるなら、名前も良いですね。
迷惑されているかもしれませんが・・・(笑)。

書評・第19回 すぐに使える 星の死活徹底ガイド

2018年11月21日 23時59分59秒 | 書評

<本日の一言>
明日と来週に対局があります。
今年も残り少なくなりましたが、最後まで全力を尽くしたいと思います。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日はこちらの書籍をご紹介します。



村川大介八段の「すぐに使える 星の死活徹底ガイド」です。
その名の通り、星打ちから派生する定石・型についての死活の知識がまとめられた内容になっています。
互先はもちろんですが、特に置き碁で活躍の機会が多いでしょう。
なにしろ、石を置くにしろ置かせるにしろ、必ず星が打たれますからね。
本局で採用されているテーマ図をいくつかご紹介しますと・・・。



<1図>
お馴染みの三々入り定石から派生する死活です。
初めて学んだ定石がこれという方は多いでしょう。
にもかかわらず、この隅の死活を正しく理解できていない方は少なからずいらっしゃるようです。
生きているのに手を入れてしまったり、何かの拍子に死んでしまったり・・・。
定石の理解に関して、死活は最重要の項目ですから、しっかりと押さえておきたいですね。





<2図>
星からコスミツケを打った形への三々入りです。
これも互先、置き碁を問わず、頻繁に現れますね。
そして、毎回対応策を間違える方も多いです。
毎回間違えるということは、下手をすればこれだけで棋力を1つ2つ落としている可能性すらあります。
恐ろしいですね。





<3図>
カカリへの1間挟みからの変化ですね。
私が指導碁を打っていると、白1と打ち込む状況は珍しくありませんが・・・。
大半の方が、この後の変化をマスターしていないのです。
生きるか死ぬかコウか、といったことを知らない方も珍しくありません。
はっきり言って、それでは定石を覚えた意味が無いと言えます。


本書はこのように、実用性の高いものばかりが収録されています(コメントは私のものです)。
死活絡みの知識は、決してマイナスになることがありません。
また、それぞれのテーマ図が独立しているので、一部分だけ読んでも全く問題がありません。
万人に役立つ内容と言えるでしょう。


SGW杯予選決勝

2018年11月20日 22時51分15秒 | 対局
<本日の一言>
本日もSGW杯予選が日本棋院ネット対局幽玄の間上で行われました。
これで予選の全日程が終了し、16名の本戦出場者が決定しました。
12月8日、9日の本戦をお楽しみに!
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日はSGW杯予選決勝の中尾準吾八段との対局を振り返りたいと思います。
内容は酷いものでしたが・・・まあ、運も大切ということにしておきましょう。
解説付き棋譜はこちらからご覧頂けますが、単独では見づらいかと思います。



そこで、私はこのように幽玄の間ソフトと並べて見ています。
これならば並べながら解説を確認できますね。
本当は幽玄の間の生中継や情報会員向けの解説のように、参考図を交えながら解説すると見やすいのですが・・・。

そんなわけで、ここでは既に公開されている自戦解説の補足をすることにします。



1図(実戦)
私の黒番です。
黒1(実戦黒11)はこのような狙いでした。
こうなれば黒の勢力が大きくなり、自然に白×が動けなくなりそうです。





2図(実戦)
白△(実戦白32)はこのような図を目指しています。
黒の傷が多く、手に負えません。





3図(実戦)
実戦黒91では、黒1とでも打っておくべきでした。
白Aのコウ仕掛けがありますが、白も負けた時の被害が大きいです。
黒はコウを恐れている場合ではありませんでした。






4図(実戦)
実戦白132(本図白A)では、白1と守っておくべきでした。
黒2と打たれても、白3、5と生きておくぐらいで地合い十分です。
白Aの逃げ出しも残っており、はっきり白勝ちでしょう。

実戦は直後にラッキーパンチが入って勝勢になりましたが、その後の乱れっぷりは恥ずかしかったですね。
しっかり反省して、本戦に臨みたいと思います。

王座戦第3局

2018年11月19日 21時33分21秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
第1回SGW杯の予選決勝の棋譜(自戦解説付き)がこちらのページに掲載されています(トーナメント表内)。
ぜひご覧ください。
ただ、解説を見ながら並べることが難しい仕様になっており、改善の余地がありますね。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は王座戦第3局が行われました。
早速振り返っていきましょう。



1図(実戦)
井山裕太王座の黒番です。
この2線をずらずら這う展開には驚きましたね。
結果的に、2線に8本も黒石が並ぶことになりました。

その代わり、右下白×がバラバラになっており、どちらの罪が重いのかということになりますね。
個人的には断然白良しと感じますが、皆様はいかがですか?





2図(実戦)
黒△と押した場面です。
ここで大多数の棋士は、A~Cの3通りの中から選ぶことになるでしょう。
他の手は考えもしないと思います。
ところが・・・。





3図(実戦)
白1から強引に切りに行きました!
これは私にとって、先の2線這いが霞むほどの驚きでした。
何と言うか・・・「筋悪おじさん」みたいな打ち方ですね(笑)。
白5の切りは空き三角の愚形ですし、直接的には何も生み出さないからです。

もちろん、一力遼挑戦者としてはそんなことは百も承知です。
多少強引でも、戦いの中でチャンスを掴もうとしたのでしょう。
これはおそらく、相手が井山王座だからです。
例えば私相手なら、さらさら打って綺麗に勝てますからね。





4図(実戦)
井山王座のこの手には敬服しました。
目一杯白に迫っています。
このあたりから黒の優勢が拡大していったように見えるので、勝因の1つではないでしょうか。


本局に勝って、井山王座が防衛に王手をかけました。
第4局は11月30日に行われます。
その前の11月23日には天元戦第3局が行われますが、そこでの山下挑戦者の頑張りも影響してきそうですね。