白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

広島アルミ杯

2018年11月18日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
明日は王座戦第3局が行われます。
第2局と同じ対局場で中1日という、井山王座専用のスケジュールです(笑)。
体力的には大変でしょうが、きっと良い内容の碁を見せてくれるでしょう。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日、広島アルミ杯・若鯉戦の2日目が行われました。
決勝に進出したのは富士田明彦六段(27)と小池芳弘三段(20)でした。
早速振り返っていきましょう。



1図(実戦)
富士田六段の黒番です。
白△まで、上辺白模様が大きくなったように見えますね。
しかし、黒は白×への攻めで十分取り返せるとみているのです。
富士田六段のペース配分は独特のものがありますね。





2図(実戦)
小池三段も、どちらかと言えばじっくりタイプだと思います。
しかし、ここでは鋭く仕掛けました!
この後は黒が打ったばかりの黒△を切り離すことになり、白成功したかと思いました。





3図(実戦)
その後、下辺で気合の振り替わりが演じられました。
黒が白×を取り、白が黒×を取っています。
見た感じ、形勢は良い勝負でしょうか?





4図(実戦)
と思いきや、さらなる大変化が起こりました!
左下隅の白が復活し、その代わり黒が白×を取る振り替わりです。
魅せてくれますね~。

ただ、この結果中央の白がかなり薄くなってしまいました。
白が勝てない碁になってしまったかもしれません。


結果は富士田六段が勝ち、初優勝を果たしました。
新婚パワーでしょうか?

王座戦第2局

2018年11月17日 23時29分10秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
本日から広島アルミ杯・若鯉戦本戦が行われています。
2連勝でベスト4に残ったのは富士田明彦六段、安達利昌五段、藤沢里菜四段、小池芳弘三段の4名でした。
リーグ戦に在籍している棋士が何人も敗れており、若手の層が厚くなっていることを感じますね。
棋譜は日本棋院ネット対局幽玄の間で中継されておりますので、明日もぜひご覧ください!
</本日の一言>

皆様こんばんは。
昨日は投稿をお休みしました。
理由は・・・いつも通りです。

さて、本日は王座戦第2局が行われました。
個人的には、過密スケジュールでボロボロになった井山王座の戦いぶりに注目していました。
本局の内容が悪いようだと、次々にタイトルを失いかねませんからね。



1図(実戦)
一力遼挑戦者の黒番です。
黒×と攻めを狙いましたが、井山王座は白×や白△と、反撃する気満々ですね。
いつも通りの井山流です。





2図(実戦)
白△は空き三角の愚形であり、この手で白Aなら好形です。
しかし、石の形は美しければ良いというものではなく、効率も求められます。
白△は形が悪くても1手で白B、Cという2つの狙いを作っているのです。
積極的な棋風の井山王座としては、この一手というところでしょう。





3図(実戦)
白△とぶつかった場面です。
現状、黒×が取られており、黒〇も直ちに危なくなることは無いとは言え、まだ生きていません。
しかし、白も×の大石に眼が無く、白〇も危険です。
一歩間違えればすぐに終わってしまいかねない、大変な難戦になりました。





4図(実戦)
白△と守りましたが、黒AやBのコウ仕掛けの余地が残っており、まだ不完全です。
一方、黒大石の眼形も失われています。
大石同士の攻め合いの可能性すらある、スリリングな状況です。


結果は、井山王座が優位を保って勝ちきりました。
どうやら強い井山が戻ってきましたね。
名人失冠から僅か2週間ですが、井山王座には十分な休養になったようです。
シリーズはますます面白くなるでしょう。

荒らし

2018年11月15日 23時59分59秒 | 幽玄の間
<本日の一言>
第1回SGW杯中庸戦の大盤解説会が開催されます。
解説は趙治勲名誉名人です!
趙名誉名人は、トップ棋士には珍しい自由な解説に定評があります(笑)。
皆様、ぜひ日本棋院にお越しください。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
木曜日は日本棋院棋士の公式対局日です。
本日も幽玄の間で多くの対局が中継されました。
今回はその中から、平田智也七段(黒)と工藤紀夫九段の対局をご紹介しましょう。



1図(テーマ図)
白△と大きく構えたところです。
このまままとまっては大きすぎるので、黒としては手を付けていきたいところですが・・・。





2図(実戦)
その第一歩は黒1でした。
これは形の急所であり、衆目の一致するところです。
白2と受けさせれば利かしですが、さてこれからどうしたものでしょうか?
黒A、白B、黒Cなどと打っても死にはしないでしょうが、一方的に攻められて苦しみそうです。





3図(実戦)
実戦は、黒1、3の切り!
これが鋭い仕掛けでした。

打って返しを防ぐ白4、6は絶対ですが、黒7となって白は少々困りました。
黒に眼形を与えないために白Aとつなぎたいですが、黒Bとつながれるとダメ詰まりの白8子が心配になります。
黒×が役に立つ展開になっていますね。
実戦は仕方なく白Bと切ることになりましたが・・・。





4図(実戦)
黒△まで、白模様の中で楽々生きてしまいました。
黒大成功でしょう。

地や模様を荒らす時のコツは、相手の弱点を衝くことです。
本局は良いお手本になりますね。


<おまけ>
平田七段は今週のTwitter日本棋院若手棋士アカウントの担当者ですが、こんなことをつぶやいていました。



9月27日の十段戦予選、星合志保二段との対局ですね。
現在、黒×の大石の眼が無い状況です。
黒1に対して白2とカニ挟みされ、AとBが見合いになったように見えます。
しかし、黒の平田七段には妙手の用意がありました。
それはどこでしょうか?

棋譜は幽玄の間ホームページか、スマートフォン版幽玄の間アプリからご覧頂けますので、正解はそちらでご確認ください。
正解に感動した方は、ぜひ平田七段を褒めてあげてください(笑)。

SGW杯予選2回戦

2018年11月14日 23時13分02秒 | 対局
<本日の一言>
本日は有楽町囲碁センターにて指導碁を行いました。
お越し頂いた皆様、ありがとうございました。
来月の指導日は12月5日(水)です。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日もSGW杯予選を振り返りたいと思います。
2回戦の相手は高梨聖健八段(47)でした。
阿含桐山杯の準優勝経験者ですが、何故か歌手デビューを果たしており、日本棋院の売店にCDが売っています。



1図(実戦)
私の黒番です。
黒△とは怪しげな構えですが、直感に従って打ってみました。
黒×同士を結んだ線の真ん中と考えれば、そう悪い手でもないでしょう。
これで上辺が全部黒地になるわけではありませんが、白の侵入を誘って攻める作戦です。





2図(実戦)
しかし、黒1は酷く甘い手でした。
どう見ても黒Aとハネる一手なのですが、考え過ぎて悪い方に手がいってしまいました。
白2の大場に先回りされては、明らかに遅れました。





3図(実戦)
現状、攻めによる利益が全く上がっていません。
このまま左上白に治まられては、何の楽しみも無くなりそうなので・・・。





4図(実戦)
黒1、3と食い付いたのは必死のところです。
無理筋の感もありますが・・・。





5図(実戦)
がむしゃらに攻めている間に、下辺黒模様がかなり盛り上がりました。
まだ悪いのでしょうが、勝負形に持ち込んでいます。
結果的には黒模様が目一杯にまとまり、どうにか抜け出しました。


本局は悪い手は色々とありましたが、逃げ腰の手が出なかった点は良かったですね。

SGW杯予選1回戦

2018年11月13日 23時59分59秒 | 対局
<本日の一言>
大谷翔平選手、ア・リーグ新人王に!
いやー、凄過ぎますね。
イチロー選手のような、日本人の限界を超える選手になって欲しいですね。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
最近、第1回SGW杯中庸戦の予選が行われていますが、まだ棋戦の概要を説明していませんでしたね。

本棋戦の参加条件は、「日本棋院所属の31歳以上60歳以下かつ七大棋戦、竜星戦、阿含桐山杯の優勝経験が無い棋士」となっています。
若手ではなく、シニアでもなく、タイトル棋士でもない、故に中庸ということでしょう。

囲碁の勝負に絶対は無く、理屈の上では誰にでもタイトルを取れる可能性がある、と言えなくもありません。
しかし、現実的にはどうでしょうか?
全棋士参加棋戦において、優勝してもおかしくないと言える棋士は、全体の3%~5%程度ではないかと思います。
何しろ勝ち続けなければなりませんし、どこかで井山裕太や張栩のような棋士も倒さなければならないのですから・・・。

しかし、本棋戦には井山裕太や張栩はもちろん、一力遼のような若手も出てきません。
これはチャンスと、目の色を変えている棋士は多いのではないでしょうか?
本棋戦に優勝して、弾みをつけて一般タイトルも狙うプランを立てている棋士もいるでしょう。
本棋戦の誕生によって勉強に身が入る「中庸棋士」が増えれば、囲碁界全体のレベルアップにもつながるのではないかと思います。


ところで、私もSGW杯にエントリーしており、本日が予選対局日でした。
結果は、なんと3連勝して枠抜け!
どうしようもない1年かと思っていましたが、良いこともあるものですね。

それでは、今回は予選1回戦、宮崎龍太郎七段(46)との対局を振り返ってみたいと思います。
宮崎七段はNHK囲碁フォーカスで講師を務めた、「ドラゴン先生」ですね。



1図(実戦)
私の白番です。
白1の詰めは黒2と反撃されて打ち過ぎかもしれませんが、こう打ちたくなりました。
右上黒の攻めを狙う作戦です。





2図(実戦)
白△ではAかBが普通の打ち方ですが、何故かこの手に惹かれました。
隅の守りはスカスカですが、あえて黒Cの三々入りを誘って打つつもりです。

本局は1手20秒、1分の考慮時間が5回という対局条件であり、NHK杯よりもさらに短いです。
ですから、研究していない手を思い付きで打つべきではないでしょう。
しかし、自分の感性を優先するのが今の私のスタイルです。





3図(実戦)
白△とハネ出したのは勢いですね。
白×からの流れがあるだけに、こう打たなければ面白くありません。





4図(実戦)
白△とコスミを打った場面です。
次に白A、黒B、白Cで黒×を取る狙いと、白D、黒E、白Fで黒〇を取る狙いが見合いになり、どうやら白が上手くいったようです。


本局は手の良し悪しはともかく、後悔する手が少なかったです。
いつもこうありたいものですね。