シェルティー ラン吉

拙者シェルティーラン吉でござる ラン吉のランは「団らん」のラン 一度しかない今日もろもろをラン吉ママがしたためまする

ポチの思い出ものがたり 24

2012-12-17 12:50:40 | ポチの思い出ものがたり

ポチをとむらってくれたお寺の住職の話に、S少年と姉たちは心が落ちつきました

でも、家に帰ってくれば、主のいない犬小屋が、ぽつんと庭におかれています

ポチがいない庭は、ただガランとした、活気のない空間になりました

 

子どもたちは、ポチの顔を見るのが、朝いちばんの日課でした

でも今は、小屋をのぞいても、もうポチはいません

ご飯の時間になれば、ついつい、ポチ用の茶わんに手がのびます

みそ汁のだしの煮干しをポチにわけてあげるのも、朝夕の日課でした

でも今は、煮干しを待っているポチは、もうこの世にはいないのです

 

S少年は、学校の授業中でも、なぜか急にポチの姿が頭にうかびます

そんな時は、泣きそうになるのをごまかすのに、せきやくしゃみを連発しました

机に落書きしていたポチの絵は、砂消しゴムで消しました

給食のパンのかけらを、ポチのおやつに持ちかえるのもやめました

放課後に友だちとあそぶ約束は、わざと家から遠い場所にしました

ポチのことは忘れない

でも、ポチが亡くなったことは、思いだしたくなかったのです

かわいかったポチが、この世からいなくなってしまった・・・

もっと一緒にいたかった、もっと一緒に遊びたかった・・・

もっともっと、かわいがって、甘えさせてやりたかった・・・

夜になると、姉たちは、布団の中でしくしくとよく泣きました

姉が寝言でポチの名前をよぶのが、寝ていたS少年の耳にも聞こえます

S少年は気づかないふりをしながらも、かわいそうでなりません

亡くなったポチも、そして、その愛するポチを夢にさけぶ姉のことも・・

 

しばらくして、S少年のお父さんは、庭にあった犬小屋をとりこわしました

S少年のお母さんや姉たちは、だまってそれを見ていました

庭に犬小屋がなくなってしまうと、ふしぎと、ポチも遠くに感じられました

犬小屋をとりさった場所に、草木をうえると、ポチはますます遠くに感じられました

あんなにかわいがって、あんなに楽しく、毎日いっしょに遊んでいたのに・・・

どんどんポチが、遠くへはなれて行く・・・

そう思うと、逆にますます、ポチがいとおしくてたまりません

 

S少年は、おもわず「ポチに会いたいなあ」とつぶやきました

すると、姉が「ポチも会いたがって、待ってるわよ」と言います

「えっ、ポチが待ってる?どこで?」

「犬たちは、天国の前で、会いたい人が来るのを待ってるそうよ」

「ポチが会いたい人って、ぼくたちのこと?」

「当りまえよ。ほかにだれがいるって言うの?」

「じゃあ、一匹目のポチも、待ってるかな?」

「当りまえよ。待ってるにきまってるでしょ」

「そうか、二匹のポチが待っててくれるのかあ・・」

 

二匹のポチは、ほんとうに自分たちを待っているのか?

天国の前っていうのは、馬頭観音様と、なにか関係あるのか?

S少年のあたまのなかは、混沌として、わけがわかりません

でも、S少年は、いつかポチに再会できるような気がしました

いつどこで再会できるかまでは、わかりませんでしたけれど・・・

 

時はすぎて、平成20年代

かつては少年だったSも、りっぱなオジサンになりました

こども時代に飼っていたポチを思いだしては、語り草にしていました

 

そして、縁あって、今

2代目のポチとおなじような、ちょっぴり臆病な犬とくらしています

「ラン吉、お前、ポチの生まれ変わりか?」などと話しかけながら・・・

 

つづく

 

 


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