その男性は男子校出身だった。ゲイだと分かってはいたが、ゲイとして認めないまま大学に進学した。大学生活は都会生活でもあった。地方の進学校に通っていた時とは全く違う、娯楽に溢れた毎日が楽しかった。色々な女性が彼の部屋に泊まり、色々な友人に囲まれ、ひとつの幸せがここにあるのではないかとさえ思ってしまうほど、先の人生は目に入らなかった。
大学3年になり、女性との恋愛が楽しくなくなってきた。男友達といる方が楽しかった。もっと言うと、男の方が好きになっていた。嘘はつけない、自分にだけは。どんなに偽っても、真実の方へと物事は進んでいくのかもしれない。彼は自分がゲイだということを、この時初めて認めることにした。
「見て、これ。オレの学生時代(笑)!!」
彼の部屋に初めて行ったとき、なぜか卒業アルバムを見せてくれた。
「この人のこと、ちょっと好きだったんだよね。」
彼が恥ずかしそうに話す顔が可愛かった。
皆、ゲイなら誰もが通った道なのかもしれない。好きな人に「好きだ。」と言えないこうした時代は。オレは新入社員時代がそうだったが、彼は男子校の時だったのだろう。自分はゲイだと認めていなかったとしても。