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即時取得とは?

2024-08-29 10:36:07 | 日記

<ご質問>
問題の即時取得について、教えてください。



木村様(仮名)

お世話になっております。

即時取得は、民法第192条に規定されています。

(即時取得)
第192条
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

つまり、即時取得とは、「動産」を占有している無権利者を真の権利者と過失なく誤信して取引をした者に、その動産について完全な所有権または質権を取得させる制度です。善意による取得です。原始取得の一種とも言われています。

原始取得というのは、所有権を有している根拠を、前所有者からの権利移転による取得とするのではなく、「動産」を今、この瞬間、「持っている」からこそ、その持っている人に所有権(権利)がある・・・・・とみなすことです。

「即時取得」は、民法条文にも記載されているとおり、その対象は「動産」に限定されています。

例えば、私が道端で拾った腕時計を交番にも届けず、持っていたとします。

木村様と会った時に、

「最近、使っていた時計が壊れちゃってさ・・・金欠で新しいのも買えず、困ったよ。」

と木村様が言ったので、すかさず、私が

「良かったら、これ使ってくださいよ。俺、使わないから。」

と言って、拾った時計とは言わずに、木村様に渡しました。

「ええ、良いの?ありがとう!!」

と、木村様がその腕時計を自分の手に握った瞬間、その腕時計の所有権(権利)は木村様にあると判断されます。

木村様がその腕時計を腕に巻いたら、周囲の人達は、その腕時計の所有権は木村様にあると
当然、思いますよね。これが、「即時取得」です。

私が盗んだ時計でも同じです。盗んだ事実を知らずに、私からもらった時計を木村様が腕に巻いていたら、当然、腕時計の所有者は木村様だと周囲の人達は思うはずです。

動産のほとんどが、大量製品であり、また複製が可能なので、所有者が特定できないものばかりです。ブランド品のロットNoが記載されていても、そのロットNoとその所有権者を一致させ、特定するのは困難です。

絵画でさえ、模写を本物と思って購入してしまう美術館があるくらいなのですから。



一方、下記の問題の対象は「不動産(土地や建物)」ですので、即時取得は成立しません。

No1609
所有権登記済みの甲土地について賃貸人Aと売買契約を締結した賃借人Bが、平穏かつ公然と甲土地の占有を始め、善意無過失であれば、甲土地がAの土地ではなく第三者の土地であったとしても、Bは即時に所有権を取得することができる。


例えば、誰でも、気になる土地があれば、法務局に行き、その土地の登記簿を取得することができます。誰がその土地の所有権者なのか確認できるのです。是非、機会があれば、やってみてください。

<商業登記法>
(登記事項証明書の交付等)
第10条 何人も、手数料を納付して、登記簿に記録されている事項を証明した書面(以下「登記事項証明書」という。)の交付を請求することができる。

例えば、井真井が甲土地の登記簿謄本を請求したところ、所有権者は「加藤」という人物だとわかりました。実は甲土地は長い間、きちんとした管理がされておらず、長い間、草が生え放題の状態であることを井真井は以前から知っていました。

井真井は、勝手に甲土地に入ると、きれいに草を刈り、整備し、「加藤」に成り済まして、「土地を貸します」の情報をSNS上に公開しました。すると、木村様から申込が。

井真井は自分の土地と偽り、木村様に1箇月10万円で賃貸することにしました。しかし、木村様がその土地を売ってくれないかと言ってきたので、5,000万円なら、売っても良いですよと応えると、木村様は承諾しました。

井真井は、加藤に成り済まし、加藤名義で自作した名刺と登記簿謄本を木村様に見せました。

何の疑いも持たず、木村様は目の前の人物(井真井)を加藤だと信じ込み、5,000万円を後日、指定口座に振り込んできました。

井真井のような詐欺師のことを「地面師」と言います。数年前には業界最大手の積水ハウスさえも地面師に騙されて、世間を騒がせましたよね。ご存じありませんか?

積水ハウス地面師詐欺事件 - Wikipedia


こうやって、井真井は権利も有さない甲土地について、木村様に所有権者だと偽り、高額で売却したのです。

売買契約を締結し、実際に木村様が善意無過失で当該土地を占有し始めれば、即時に木村様は甲土地の所有権を取得できるのか?つまり、即時取得は成立するのか?

それは、無理です!!だって、今、木村様は単なる不法占有者なのですよ。

だから、真の所有権者である加藤さんが、不法占有している木村様を見つけたら、木村様は甲土地から追い出されます。

「私はこの土地を購入したのですよ!!」と叫んでも無理です。

仮に所有権移転登記が成功していたとしても、それは井真井の不法行為による所有権移転登記になりますので、認められません。

通常、所有権移転登記時の登記義務者の本人チェックの段階で、騙されたことに気づくケースがほとんどですが・・・・。

いずれにしましても、木村様は、どうやっても、真の所有権者である加藤さんには、甲土地を占有しただけでは、対抗できません。

以上から言える結論は・・・・・・・【不動産に即時取得は適用できない】ということです。

不動産はこの世に1つ。絶対に同じものは存在しません。緯度・経度上で測定しても「同一緯度、同一経度上」に「2つの同じ土地」という概念は絶対に生まれません。唯一無二ですので、即時取得は適用できないのです。

以上になります。

ご利用いただきまして、誠に有難うございました。引き続き、どうぞ、宜しくお願い致します。

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