*THE WHO音楽 いのうえひでのり演出 湯川れい子、右近健一訳詞 日生劇場 公式サイトはこちら 東京公演は31日まで
中川晃教ファンの友人に早々と良席を予約してもらったものの、幕開けからネットでの酷評に少々びびりながら観劇。全編大音響のロックにのって展開する物語だ。CGを駆使して場所の転換や時間の経過、登場人物の心情まで表現しているところにまず驚いた。こうすれば大掛かりな舞台装置を組むことなく、教会から工場から病院から何から自在に描くことができ、主人公トミー(中川晃教)の両親の結婚式からはじまる物語をどんどん進めることができるのだ。しかし反面、人物の顔や姿までもが延々と映し出されると、「ほんもの」が舞台に立っているのになぁ、もったいないと思った。
幼いころのトラウマによって三重苦になってしまった少年が、叔父の性的虐待やいとこの暴力を受けながらも、ピンボールの才能によって一躍有名人になり、突然三重苦から解放されて人々の教祖的に祭り上げられて・・・という大変に盛りだくさんなお話なのである。ロックオペラだから音楽や歌を楽しみながらみることができたが、これがストレートプレイなら、相当に重苦しいものになったのではないか。思い出したのは劇団四季の『エクウス』である。ほとんど裸舞台に近い空間で、少年が起こした事件の真相、彼の心の闇が示されていく様子は呼吸が苦しくなるほどスリリングであった。音楽や映像など、観客を楽しませたり、リラックスさせる要素はまったくといっていいほどなかったと記憶する。今回の『TOMMY』と比較するのはあまり意味がないことかもしれないし、自分はTHE WHOの音楽をまったく知らず、映画も昨年来日したブロードウェイ版も見ていない。本作への思い入れや関わり方が実に浅いのである。そのせいだろうか、彼の物語を敢えてロックで、という必然性がいまひとつ伝わってこなかった。
それだけに本作に対する自分の期待は、劇団☆新感線のいのうえひでのりの演出の手腕と、中川晃教の歌を聞きたいという2点であった。2004年帝劇公演『SHIROH』の組み合わせならと。しかし前者は映像過多な舞台作りにいささか肩すかしをくらい、後者については、マイクを通した声ではなく、もっと生の声で聞きたくなった。中川晃教は日本人の歌手、俳優で他に類を見ないタイプで、「ステージアーティスト」という呼び名が自分の中ではぴったりくる。歌によって劇的世界を造形することができる点で、カリスマを感じさせる存在だ。カーテンコールで投げキスをしてこれほど様になる人は、ちょっとほかには思い浮かばない。非常に特殊な才能をもった人である。コンサート、ライブのスタイルで『TOMMY』を聴けたら。
中川晃教ファンの友人に早々と良席を予約してもらったものの、幕開けからネットでの酷評に少々びびりながら観劇。全編大音響のロックにのって展開する物語だ。CGを駆使して場所の転換や時間の経過、登場人物の心情まで表現しているところにまず驚いた。こうすれば大掛かりな舞台装置を組むことなく、教会から工場から病院から何から自在に描くことができ、主人公トミー(中川晃教)の両親の結婚式からはじまる物語をどんどん進めることができるのだ。しかし反面、人物の顔や姿までもが延々と映し出されると、「ほんもの」が舞台に立っているのになぁ、もったいないと思った。
幼いころのトラウマによって三重苦になってしまった少年が、叔父の性的虐待やいとこの暴力を受けながらも、ピンボールの才能によって一躍有名人になり、突然三重苦から解放されて人々の教祖的に祭り上げられて・・・という大変に盛りだくさんなお話なのである。ロックオペラだから音楽や歌を楽しみながらみることができたが、これがストレートプレイなら、相当に重苦しいものになったのではないか。思い出したのは劇団四季の『エクウス』である。ほとんど裸舞台に近い空間で、少年が起こした事件の真相、彼の心の闇が示されていく様子は呼吸が苦しくなるほどスリリングであった。音楽や映像など、観客を楽しませたり、リラックスさせる要素はまったくといっていいほどなかったと記憶する。今回の『TOMMY』と比較するのはあまり意味がないことかもしれないし、自分はTHE WHOの音楽をまったく知らず、映画も昨年来日したブロードウェイ版も見ていない。本作への思い入れや関わり方が実に浅いのである。そのせいだろうか、彼の物語を敢えてロックで、という必然性がいまひとつ伝わってこなかった。
それだけに本作に対する自分の期待は、劇団☆新感線のいのうえひでのりの演出の手腕と、中川晃教の歌を聞きたいという2点であった。2004年帝劇公演『SHIROH』の組み合わせならと。しかし前者は映像過多な舞台作りにいささか肩すかしをくらい、後者については、マイクを通した声ではなく、もっと生の声で聞きたくなった。中川晃教は日本人の歌手、俳優で他に類を見ないタイプで、「ステージアーティスト」という呼び名が自分の中ではぴったりくる。歌によって劇的世界を造形することができる点で、カリスマを感じさせる存在だ。カーテンコールで投げキスをしてこれほど様になる人は、ちょっとほかには思い浮かばない。非常に特殊な才能をもった人である。コンサート、ライブのスタイルで『TOMMY』を聴けたら。
洋楽、特にロックを好んで聴いていた自分にとって、今聴くこのTHE WHOの旋律は、懐かしい記憶を呼び覚まされるような感覚がありました。
映画も、そして来日公演の『TOMMY』も観ていたので、因幡屋さんとは異なるアプローチで観たようですね。
音楽を体にまとって、あとは作品から受ける衝撃を感じていました。
『TOMMY』2度目の観劇は中川晃教の歌声に導かれ、そして私も『エクウス』が頭をよぎりました。
この『TOMMY』、コンサート、ライブのスタイルで、是非観たい、聴きたいですよね。大きな世界観で実現して欲しいと思います。
アプローチの仕方が違っても、着地点は似ているかな?
同じ作品を観るのって、こういう意見交換ができて面白いです。
そういえば一緒に観た『SHIROH』、‘生’投げキッスに驚きましたっけ・・・。