因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

ドラマツルギ2011 tamago PURiN&劇団ING進行形

2011-06-10 | 舞台

 フェスティバル公式サイトはこちら タイニイアリス 今夜はどちらも初見の劇団。
*『さいあい~シェイクスピア・レシピ~』 26日まで
 鈴木拓朗(tamago PURiN) 作・演出・振付
 パフォーマンス集団「たまご」と、ダンスカンパニー「chairoi PURiN」とで結成された集団。
 母親が自分をかばって交通事故死した。少女は悲しみと罪の意識から車道に身を投げ出そうとする。と、アスファルトのあいだから野菜たちが飛び出して・・・。
*『一輪の、華をはなむけ 手向けることも赦されず』 25日まで
 ラディー (劇団ING進行形)作・演出
 密室で白いドレスの女が自分の体験したことを語る。しかしその内容は中世ヨーロッパで祖国を救うために立ちあがった、あの少女の話である。女はジャンヌ・ダルクの生まれ変わりか、そして周囲の人々の思惑は?
 

『さいあい~シェイクスピア・レシピ~』
 昨夜の記事に「日替わりで2劇団ずつ上演するため、大掛かりな舞台美術は組めず、小道具のたぐいも限られる」と書いたばかりなのだが、一夜にしてこれが打ち破られた。
 登場人物、いや人物ではなくて「野菜たち」が道路から現れる場面において、「こういうやり方があるのか」と驚嘆する。野菜たちはそれぞれ個性豊かなかぶりもの姿で、楽器や調理道具など、手作り感あふれる小道具のたぐいも多く、紙に大きな刷毛で文字を書いたり、小さなステージを大胆に使い、短い上演時間やこのあとに違う劇団の上演が控えていることなど諸般の事情など、ぶっとばす勢いである。さらに「(カーテンコールの)この音楽がかかっているあいだに撤収します」と宣言して、ビゼーの「カルメン」が勇壮に流れるなか、出演者総出で舞台上の片づけをはじめ、音楽が終わると同時に客席に見栄を切って幕を落とす。これを毎回やるのか・・・とあっけにとられ、舞台裏まで楽しませる発想に唸った。
 「制約がある芝居は、きっとシンプルな作りになるだろう」などというのは、まったく賢しらな思い込みであることを思い知らされた。
 本作は野菜とシェイクスピアと愛の物語だ。シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』、『オセロ』、『夏の夜の夢』、『ヴェニスの商人』を通して、野菜たちが人間の心、愛を学ぶ。パフォーマンス集団とダンスカンパニーによる舞台は躍動感にあふれ、シェイクスピア批評的な面もあって飽きさせない。

『一輪の、華をはなむけ 手向けることも赦されず』
 tamago PURiNのステージが大変盛りあがり、高揚した気分で次の舞台を迎える。
 今度はまったくの裸舞台で、俳優の台詞と動きのみで勝負する趣向である。白いドレスの女を演じる女優さんは香椎由宇を思わせる美女で、出演者全員がダンスというより、ほとんどアクロバットのようなアクションを軽々とこなす。
 しかし俳優の台詞を聞きとり、劇の内容を理解、把握することがむずかしく、ぜんたいを楽しむには至らなかった。「七五調、韻、割り台詞、渡り台詞を駆使した劇作」、さまざまな劇作家の作品を潤色・再構成したり、「目に視えにくい情念や衝動を具象化しようと、演舞(ダンサンブル・アクション)という誇張表現を提唱し、模索中」とのこと。厳しい鍛錬の成果であろう、俳優の身体は息をのむほど力強い。心と頭をもう少しやわらかく、肉体とのバランスをとりながら、ときにはバランスのとりにくいことも劇表現に活かすくらいの貪欲で柔軟な取り組みを期待する。
 
 

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