因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

角角ストロガのフ『人間園』

2009-02-27 | 舞台
*角田ルミ作・演出 公式サイトはこちら 王子小劇場 3月2日まで
 タイトルは「にんげんえん」と読むそうだ。当日チラシにイラスト入りで人物配置図が描かれており、開演前にそれを見ながら想像するに、舞台手前上手に教室、下手が職員室、2階部分の下手は産婦人科医院らしい。一杯道具の中に複数の場所が存在する作り。タイトルや公演チラシからは、どのような話になるのか全く読めず、これが初見の角角ストロガのフ、おもては生憎の雪模様だが、客席は次々に埋まっていく。さてどうなるのか。
 非常に大雑把な印象を述べると、大人には大人の悩みや秘密があり、それは子供も同様である。今、目の前で起こっていることだけではなく、幼い頃の母親との確執、本人や家族の責任とは言えないまでも、いささか理解に苦しむ特殊な性癖、現実のストレスからの解放を求めて大人も子供も弱いものを苛め、やがて立場が逆転し、もっと凄惨な結果を迎える。

 入試に備えて学力をアップし精神的にも強くなるため、クラスで敢えていじめの推奨をする教師が登場したときには、天海祐希の『女王の教室』を連想したが、その描写は遥かに陰惨で執拗だ。教師同士も秘密の交わりがあったり、仲間はずれをしたり、そんな中で唯一まっすぐな心をもって生徒に接している倫先生(栗原瞳)がいて、異様な状況のなかでまっすぐな生き方をしようとしている人が次第に追いつめられている様子か、と思ったが倫先生にも隠された過去があり、それが生徒の1人の現実とだぶってくるあたりには見応えがあった。

 しかしぜんたいに盛り込み過ぎの印象があり、また生々しくグロテスクであるにも関わらず細部が作り物めいて見えることが気になった。冒頭はカニバリズムを題材にした猟奇的な話かと思ったが、結局今回の舞台が何を最も強く伝えたかったのか計りかねる。作者は強い筆力を持っている方だと思う。狭い舞台空間を登場人物がめまぐるしく行き来する様子、みる方もそうだが、演じる側にとっても気を緩められるところがほとんどない。これだけの緊張感を保ったまま2時間を必死に走り抜く俳優の力は大きい。だからこそ、もっと研ぎすまされたやり取りが欲しい。人間の醜いところ、グロテスクなところ、しかしそれでも生きていこうとする姿をみたいのである。いや、こんな印象を持ってしまうのは、もしかすると作者が描こうとしている世界を自分がまったく理解できていないからなのだろうか。
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1 コメント

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はじめまして!! (角田より)
2009-03-06 22:33:35
はじめまして!!

うわぁぁ!素敵なコメントありがとうございます!
角角ストロガのフの角田です!
すごく丁寧に見て下さり、とてもかっこよく説明してくださってありがとうございます!
役者さんが、わたしの作りたい世界をどどんと表現してくれ、わたしはとても助けられました。

あれが、わたしが今現在思う「人間園」なので、見ていただけてすごくうれしいです!
ブログにも書いてくださってすごくうれしいです!
「筆者」とか書いていただけるとにゃんともうれしくて、えへへっと照れてしまいますがありがとうございます!

これからもどうかよろしくお願いします!!
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