*ヘンリック・イプセン作 笹部博司上演台本 タニノクロウ演出 公式サイトはこちら あうるすぽっと 15日まで
舞台をみるとき、いたずらに比較することは慎みたいと思う。同じ演出家の前回と今回、同じ作品のあの劇団とこの劇団と。作り手側それぞれに主張があり個性がある。事情も理由もあるだろう。みる側にとって比較に終始することは前に進めない、楽しめないことだからだ。タニノクロウ演出の本作には、比較の対象がある意味で整っている。2007年秋にタニノが演出した『野鴨』の印象は忘れがたく、2008年夏のshelf公演『Little Eyolf-ちいさなエイヨルフ』 も与えられるものの豊かな舞台であった。こうして迎えるタニノ演出の『ちっちゃなエイヨルフ』。期待せずにはいられない。無理というものだ。もっと深く豊かな時間を求める気持ちは止められない。
まずこの劇場を選んだのはなぜだろう。プロセニアム型で天井が高く、中サイズとはいえ舞台が遠く感じられる。次に人物の出入りを客席にみせる舞台(美術は朝倉摂)の作り、演出にもしっくりしないものがある。冒頭、暗い室内にしどけない姿で横たわる妻(とよた真帆)の姿を暗示的に見せ、再び暗転して本編が始まるのは、デヴィッド・ルヴォー演出の『ヘッダ・ガブラー』の冒頭場面を思い起こさせる。文庫本として出版されている笹部博司の『ちっちゃなエイヨルフ』が「上演台本」として物販に出ていたが、実際の上演でカットされている台詞もあったし(それが上演ぜんたいにどのような影響を及ぼしていたかまではまだ考察できないが)、終幕ボルグハイムが半旗を掲げるところが、なぜ燭台に火を点すことになったのか…などなど疑問が尽きず、ぜんたいとして何とも居心地の悪い、ちぐはぐな印象が残る。
そのしっくりしない気持ちは土曜の昼公演というのに充分に埋まっていない客席や、何度も鳴る携帯電話、客席で物音を立て続けたり、カーテンコールで俳優に贈り物をする観客と、舞台以外の場に対してもどんどん広がっていくのである。なぜだ、どこがどうだからなのだろう?終演後の昼下がり、同道の友人と近くで一息入れ、劇場から池袋駅までをゆっくり歩く。広い通りは空いていて、まとまらない気持ちを反芻するのにいい空間である。しかし駅が近づくと当然のことながら喧騒のただ中である。だんだん戦闘的な気分になってくる。このまま喧騒に紛れて忘れてしまってはいけない。今日の『ちっちゃなエイヨルフ』を、どう捉えるのか。このしっくりしない気持ちは何なのか。
舞台をみるとき、いたずらに比較することは慎みたいと思う。同じ演出家の前回と今回、同じ作品のあの劇団とこの劇団と。作り手側それぞれに主張があり個性がある。事情も理由もあるだろう。みる側にとって比較に終始することは前に進めない、楽しめないことだからだ。タニノクロウ演出の本作には、比較の対象がある意味で整っている。2007年秋にタニノが演出した『野鴨』の印象は忘れがたく、2008年夏のshelf公演『Little Eyolf-ちいさなエイヨルフ』 も与えられるものの豊かな舞台であった。こうして迎えるタニノ演出の『ちっちゃなエイヨルフ』。期待せずにはいられない。無理というものだ。もっと深く豊かな時間を求める気持ちは止められない。
まずこの劇場を選んだのはなぜだろう。プロセニアム型で天井が高く、中サイズとはいえ舞台が遠く感じられる。次に人物の出入りを客席にみせる舞台(美術は朝倉摂)の作り、演出にもしっくりしないものがある。冒頭、暗い室内にしどけない姿で横たわる妻(とよた真帆)の姿を暗示的に見せ、再び暗転して本編が始まるのは、デヴィッド・ルヴォー演出の『ヘッダ・ガブラー』の冒頭場面を思い起こさせる。文庫本として出版されている笹部博司の『ちっちゃなエイヨルフ』が「上演台本」として物販に出ていたが、実際の上演でカットされている台詞もあったし(それが上演ぜんたいにどのような影響を及ぼしていたかまではまだ考察できないが)、終幕ボルグハイムが半旗を掲げるところが、なぜ燭台に火を点すことになったのか…などなど疑問が尽きず、ぜんたいとして何とも居心地の悪い、ちぐはぐな印象が残る。
そのしっくりしない気持ちは土曜の昼公演というのに充分に埋まっていない客席や、何度も鳴る携帯電話、客席で物音を立て続けたり、カーテンコールで俳優に贈り物をする観客と、舞台以外の場に対してもどんどん広がっていくのである。なぜだ、どこがどうだからなのだろう?終演後の昼下がり、同道の友人と近くで一息入れ、劇場から池袋駅までをゆっくり歩く。広い通りは空いていて、まとまらない気持ちを反芻するのにいい空間である。しかし駅が近づくと当然のことながら喧騒のただ中である。だんだん戦闘的な気分になってくる。このまま喧騒に紛れて忘れてしまってはいけない。今日の『ちっちゃなエイヨルフ』を、どう捉えるのか。このしっくりしない気持ちは何なのか。
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