ヘビースモーカーだった私のフィアンセは、今年になって禁煙を決意しました。もちろん、私は手助けしたいと思いましたが、ニコチン依存症になったことがない人間としては、どう手助けしたら彼の禁煙が楽になるのか見当もつきません。長年の習慣をついに克服した彼と、数か月暮らしてみて学んだことをお話したいと思います。

禁煙するのは自分ではないことを忘れずに

何年もの間、私は彼に禁煙を促していましたが、決して脅かしたり、最後通告をしたりはしませんでした。「禁煙するのは自分であって、君じゃない」ということを、彼は私に対してはっきりさせていたからです。

彼がついに禁煙を決意したときは、自分で本当にそうしたくなったからで、そこが重要な点でした。新しい恋人ができたからという理由からよりは、自分で本当に禁煙したいと思ったときの方が、禁煙するのはずっと楽になります。

また、彼が禁煙を思い立った理由には、自分の喫煙習慣が周りの人にどのような影響を及ぼすか、はっきり認識したことが大いに関係していました。

そうは言ってもアドバイスはしてあげられます

最後通告は名案ではありませんが、いろいろ提案をしてあげることは効果的であることが研究によりわかっています。『Journal of General Internal Medicine(総合診療医学ジャーナル)』に掲載された論文には以下のように書かれています。

アメリカ公衆衛生局(USPHS)のガイドラインに記載されているのは、「喫煙について質問する」「喫煙をやめるように助言する」「禁煙しようとする意志を評価する」「治療を援助する」「フォローアップする」という5項目です。

特に強調されているのは、喫煙者にタバコをやめるようにアドバイスするべき、とはっきり宣言していることです。もし、喫煙者がタバコを止める意志が無いと評価されたら、5つのRを使ってモチベーションを与えるのも一案です。5つのRとは、すなわち、個人的に該当する(Relevant)禁煙情報に注目する、喫煙のリスク(Risks)、禁煙の利点(Rewards)、禁煙するときの障害(Roadblocks)、そしてこのアドバイスを繰り返すこと(Repeating)です。

試験により、こうした簡単なアドバイスには効力があることが実証されています。直近のメタ分析では、社交的なやり方でこのようなアドバイスを3分間しただけでも、禁煙できる率は1.3〜1.7倍高くなることがわかっています。


障害を乗り越えるのは私ではないとわかってはいましたが、背中を軽く押してあげると、彼がやる気を保てることも知っていました。友人や家族と一緒に、ときどき彼に禁煙の大切さを思い出してもらうようにしました。ガミガミ言ったりはせず、さりげないやり方でしたが、彼が禁煙することの大切さを必ず理解できるようにしました。

彼いわく「ちょっとウンザリしたのは確かだよ。でも、そのおかげで禁煙することをいつも気にかけていられたよ」周囲の粘り強さが、禁煙の助けになったのです。

引き受けようとしないこと

私自身が、自分の習慣をやめようとするときは何が効果的かわかっています。フィアンセが禁煙することを決意したとき、私の内なる支配欲が頭をもたげ、自分の経験と知識に基づいた行動プランを彼に提案したい気持ちになりました。

タバコを吸っているころの彼の朝の習慣は、起床、コーヒーを作る、コーヒーとタバコを手にポーチに出る、というものでした。タバコを止めたときも彼はこの習慣を続けていましたが、ポーチに出るときはコーヒーだけにしてタバコは持っていません。それでも私は、この習慣が彼にとってあまりにも誘惑的ではないかと心配しました。

彼は私のアドバイスのいくつかは取り入れましたが、ほとんどは割り引いて聞いていました。なぜならば、一日の終わりに自分の習慣を体験しているのは彼自身だからです。彼は自分の習慣の意味を知っているので、どうすれば一番いいのかわかっています。

それに加えて、試行錯誤するのもタバコをやめていくことの一部だということを受け入れる必要があります。平均的な喫煙者は、ちゃんと禁煙できるまでに何度も失敗しては再挑戦しているのです。何が効果的で、何がそうでないかを発見し、必要に応じて調整します。肝心なのは、誰かをサポートするときは、相手にあれをしろ、これをしろと言うのは価値の無いことで、相手の決心を信じてあげるしかないということです。

どんなフィードバックが一番効果的か知する

ネガティブなことも人にモチベーションを与えられることがあります。依存症の克服ぐらい大変なことなら、少しばかりネガティブであることもアリです。例えば、最近CVSが後援した研究によれば、お金を失うという考えが禁煙している人にモチベーションを与えることがわかりました。

 プログラムのうちの2つは、被験者が150ドルの前金を支払うことになっていました。これは、被験者がうまく禁煙できると払い戻されます。全体的に、インセンティブを与える4種類の禁煙プログラムに参加した被験者は、通常の治療の3倍も禁煙に成功する傾向がありました。

さらに、前金の支払いを要求するグループに入ることになった被験者は、単純なインセンティブのあるプログラムの被験者より、実験への参加を断る確率が高かったのですが、他の種類のプログラムに比べて6か月の禁煙の成功率は2倍近くになりました。

もちろん、ここではたくさんの要素を考慮しなければなりません。例えば、前金を払うのに十分なモチベーションがある人は、禁煙に対して平均以上の覚悟があるのかもしれません。喜んでそのお金を賭けるのは、安全な賭けだと確信しているからです。

そうは言っても、人によっても場合によっても何が効果的なフィードバックになるかは違ってきます。禁煙しようとしている人へのサポート方法に関するアドバイスのほとんどは、常に楽観的でいるようにというものです。それは理に適ったことです。そして、私の筋書きでは、彼といた時間の95%は恐らく楽観的でいました。相手を誇りに思っていることや信頼しているということや、その種のあらゆることを相手に伝えるとモチベーションを与えることになるのは明らかです。でも、私が不注意だった残りの5%についてお話ししましょう。

あるとき、フィアンセがうっかりタバコを吸ってしまったとき、私は彼にがっかりしたと言ってしまいました。そのせいで、彼に罪悪感や恥じる気持ちや、自分は小さい男だという感情を抱かせてしまったのです。私はそのときの感情に任せて行動して、その反応が彼の進捗にどれだけ影響を与えるか考えていませんでした。

でも、この反応が実際に助けになったと後になって彼に言われました。彼は恥ずかしくて赤面しただけではなく、欲求に屈することを分析したおかげで、それ以降は誘惑を何とか回避できたのだそうです。

でも、誰もが同じように反応するとはかぎりません。そして、ほとんどの場合は、ポジティブでいた方が役に立ちます。しかし彼はもともと皮肉屋なところもある人です。たまに「あなたのことを誇りに思うわ」と言われると喜びましたが、いつもそれを言われたり、私が過剰に張り切ったりすると、彼はバカバカしくなってしばらくの間イライラしました。

要は、人はそれぞれ違うということです。ほとんどの場合はポジティブな言い方が功を奏するのですが、自分のパートナーに耳を傾けて、そのときの状況によりどんな種類のフィードバックが一番良いか察知する方がそれ以上に効果的だと気づきました。

よりうまく共感するために

彼はタバコを止める前に、自分は大変なことになるかもしれないと私に言いました。短気になったり、普段より疲れやすくなったりするかもしれないし、家事をしたくなくなるかもしれないと言ったのです。

サポートするということは、これを受け入れることを学び、そのことで彼に辛い思いをさせないようにすることです。そして、彼によれば、これが一番のサポートだったそうです。私は彼がタバコを吸いたくならないような環境を作りたいと思いました。そのために私が試みたことは、

彼の家事の負担の一部を引き受け、ちゃんとこなせていなくても良しとしました。私自身のストレスレベルに注意しました。それが彼に影響することが多いからです。彼が疲れていたり、イライラしていたりしても責めないようにしました。タバコを吸いたくなるような場所に彼を行かせないようにしました。例えば、バーで会いたいという友人がいるとき、アルコールはタバコを吸うきっかけになってしまうので、かわりに私が行きました。

要は相手の気持ちになってみることが大切だということです。私は一度もタバコを吸ったことはありませんから、タバコをやめる苦労はわかりません。彼の状況をもっとよく理解するために、依存症にはどのような作用があるか、喫煙をやめるとどのようなことを体験するかを学ぶように心がけました。結果として、私の共感力に磨きをかけ、彼により良いフィードバックとサポートを提供するのに役立ちました。

禁煙は楽なプロセスではありません。サポートしてもそれを楽にすることができないのは確かですが、大変さを軽減してあげることはできます。私の経験では、パートナーに耳を傾け、学び、彼の判断を信じることが、相手に一番役立つサポートになりました。

Kristin Wong(原文/訳:春野ユリ)

**********

とはいえ、支援者がいてくれれば、必ずタバコと縁を切る離煙ができるというものではありません。それでも、ずいぶん役に立つはずです。まずは、周囲のスモーカーに、ストーカーのようにならずに、さりげなく離煙するといいことがあると優しく諭し続け、実際に離煙したら、ほめ続けてやるべきです。

当英語塾INDECは、当初はスモーカーが多かったのですが、貧乏英語塾長が11年前に離煙派に転じてからは、喫煙率が下がりました。離煙派になるアドバイスと実際に離煙派に仲間入りしたときの賞賛に効果があったからだと思っています。

まあ、いまどき離煙もできないようでは、ビジネスの世界で大成功を収めることは難しいので、意識が高い若者ほどあっさりとタバコをやめてくれたのも否定できない事実です。

離煙は、本人がハッピーになるだけでなく、周囲の人もハッピーにできます。今日にでも離煙派に入られることを心より祈念します。