ゴールデン・ウィークの関係で3週間ぶりとなってしまった2005年5月14日(土)定期上映会の報告です。
(なお、この記事にはネタバレの部分がありますので、映画の結末を知りたくない方はご注意ください。)
取り上げたのは、現在全国公開中の『炎のメモリアル』。Amazon.comから取り寄せたアメリカ版DVDを使った一足早い上映でした。
さすがにTHX認定のDVDです。CGを使わずに火事を描くこだわりを、見事な画質と音質で描ききります。特典映像も1枚ぽっきりのDVDとしてはかなりの充実です。上映会ではその中から主題歌“Shine Your Light”のプロモーション・ビデオを上映後に流して、本編の感動をさらに高めることができました。
このDVD、ゴウ先生はほとんどストーリーも知らずに買いました。あまり期待もしておりませんでした。それでも注文したのは、ジョン・トラボルタが出演しているからです。
現代のアメリカの大衆文化を映画で理解したいと思うならば、彼とカート・ラッセル主演の映画は見逃すわけにはいかないというのがゴウ先生の持論です。ラッセルはそれほど好きではないので適当にお茶を濁しますが、ファンであるトラボルタの方は出演作品をすべて見境なく買い続けています。
実は、このDVDも3ヶ月前には購入して、すでに一人で見ていました。その時の感想は、一言「地味すぎる!」。日本の2時間ドラマでやりそうなネタであり、ストーリー展開だと感じたのです。熱く語りたくなる華がありません。定期上映会にかけるかどうか悩み続けたほどです。
トラボルタが裏に控えてしまいます。『グラディエーター』であのアホなローマ皇帝を演じたアホキンじゃなかったホアキン・フェニックスが表を張るのです。地味です。
消防映画とくれば、『タワーリング・インフェルノ』(カート・ラッセルが出ているからといって、『バックドラフト』ではないのです)。あの時は消防士役を伝説のスティーブ・マックイーンが演じ、それをポール・ニューマンが受けきりました。そうしたバディ映画を期待していたら・・・。
『炎のメモリアル』は、同じニューマンでも『ハスラー2』のノリです。つまり、師匠と弟子の物語。それならば、『スティング』のようにいかないかと思うのですが、やはりそこまでのレベルには到達しません。なぜなら、脚本も凡庸ですが、フェニックスがダサすぎます。トム・クルーズにも、もちろん若き日のロバート・レッドフォードにも及びません。
そこでどのようにこの鈍重なフェニックスを使いこなすかと思っていたら、製作陣は禁じ手を出してきました。それが邦題にモロ現れてしまっています。
この邦題を知った時、ゴウ先生、マズイッショ、と思いました。最近の日本人の英語力は以前よりも高くなっています。
『炎のメモリアル』という邦題ではすぐにだれかが死ぬんだと分かってしまうではないですか!だってmemorialとは「追悼する」という意味の形容詞ですから。そしてだれが死ぬのかとすれば、天下のトラボルタを殺せない以上、自動的に決まってしまいます。
そんなわけで、原題にはネタバレになるmemorialなんて単語は使われていません。そっけなくても、Ladder 49。「第49はしご車隊」という意味であります。日本人は「四」とか「九」とか「死」や「苦」を連想させる不吉な数字がよく選ばれたと思う人が多いと思いますが、アメリカではそんなことは何も関係ありません。
でも、今回見直してみると、拾いものを幾つかしました。そしてそれがゴウ先生の評価を上げる結果となり、無事定期上映会の上映作品となれたのです。
まず、歴史のあるボルティモア市消防署が舞台になのですが、消防士がみんなカソリック信者であるという設定になっています。アイルランドの聖人を祝した聖パトリック・ディのパレード風景が映し出されたり、カソリック式の洗礼式や葬式、そしてミサの模様が何度も出てきます。
消防士というのは、死と隣り合わせの職業についているのですから、信仰を持っているというのは自然のことです。しかし、消防士の世界がここまでキリスト教原理主義的だとは・・・。
911以後の映画である影響がこのような設定に現れたのだと思われます。設定をカリフォルニアあたりの消防署にしていたら違っていたはずですから。
この意味で、イタリア系のトラボルタを消防署長役に起用したことはうなずけます。イタリア系アメリカ人にカソリックが多いことは常識ですから。しかも彼の役は三代に渡って消防士という設定です。つまり、消防士の世界というのは、外部の人間が入りにくい閉鎖された世界なのかもしれないと思わされました。
次の発見は、トラボルタの受けの演技の冴えです。
ゴウ先生のイメージは、いまだ『サタディ・ナイト・フィーバー』や『ガラスの中の青春』などで軽やかにステップを踏むトラボルタであり、『パルプ・フィクション』や『フェイス・オフ』での早口でしゃべる軽いトラボルタなのです。つまり、ツッコミのトラボルタこそ彼のイメージなのです。
それなのにこの映画では、重厚に消防署長を演じきります。悪くありません。フェニックスを救うために現場において無線で指揮を取るシーンは、同僚を失う辛さを押さえた演技で乗り切ります。そして最後の葬式のスピーチから行進にかけての場面では、彼の表情を見ているだけで涙が出そうになりました。
3番目に、主題歌“Shine Your Light”であります。
ロビー・ロバートソン(Robbie Robertson)が唄うバラードが、クライマックスで流れます。最高です。この歌と合わせてクライマックスを見ると大概の人が泣ける状態に連れて行かれると思います。地味な映画が一挙に華やかさを持つ瞬間です。
ちなみにDVDに収録されているPVは、この映画のエピローグのように、フェニックスの妻役を演じたジャシンダ・バレットを使って物語仕立てになっています。映画館でもここまで流せば、もっと人気が出るだろうにと保証します。できないことは分かってはいるのですが・・・。
というわけで、ゴウ先生ランキング:B+
911以後、アメリカ人の子供たちにとって花形職業となった観のある消防士の人生を誠実に描いた品のいい映画です。俗語もほとんど出てきません。お行儀がよすぎるのが地味すぎると言った理由の一つでもあります。
でも日本でヒットしているのはよく分かります。安心して泣ける映画ですから。お子さん連れならば、最高の一本かもしれません。この映画で英語を勉強したい人にも安心してお薦めできます。
付記:『ターミネーター2』のロバート・パトリックが老けていたのが、ゴウ先生、個人的に切なかったです。まさか彼が流体金属になってフェニックスを助けてくれる役を演じてもらえる映画ではないですしね・・・。
(なお、この記事にはネタバレの部分がありますので、映画の結末を知りたくない方はご注意ください。)
取り上げたのは、現在全国公開中の『炎のメモリアル』。Amazon.comから取り寄せたアメリカ版DVDを使った一足早い上映でした。
さすがにTHX認定のDVDです。CGを使わずに火事を描くこだわりを、見事な画質と音質で描ききります。特典映像も1枚ぽっきりのDVDとしてはかなりの充実です。上映会ではその中から主題歌“Shine Your Light”のプロモーション・ビデオを上映後に流して、本編の感動をさらに高めることができました。
このDVD、ゴウ先生はほとんどストーリーも知らずに買いました。あまり期待もしておりませんでした。それでも注文したのは、ジョン・トラボルタが出演しているからです。
現代のアメリカの大衆文化を映画で理解したいと思うならば、彼とカート・ラッセル主演の映画は見逃すわけにはいかないというのがゴウ先生の持論です。ラッセルはそれほど好きではないので適当にお茶を濁しますが、ファンであるトラボルタの方は出演作品をすべて見境なく買い続けています。
実は、このDVDも3ヶ月前には購入して、すでに一人で見ていました。その時の感想は、一言「地味すぎる!」。日本の2時間ドラマでやりそうなネタであり、ストーリー展開だと感じたのです。熱く語りたくなる華がありません。定期上映会にかけるかどうか悩み続けたほどです。
トラボルタが裏に控えてしまいます。『グラディエーター』であのアホなローマ皇帝を演じたアホキンじゃなかったホアキン・フェニックスが表を張るのです。地味です。
消防映画とくれば、『タワーリング・インフェルノ』(カート・ラッセルが出ているからといって、『バックドラフト』ではないのです)。あの時は消防士役を伝説のスティーブ・マックイーンが演じ、それをポール・ニューマンが受けきりました。そうしたバディ映画を期待していたら・・・。
『炎のメモリアル』は、同じニューマンでも『ハスラー2』のノリです。つまり、師匠と弟子の物語。それならば、『スティング』のようにいかないかと思うのですが、やはりそこまでのレベルには到達しません。なぜなら、脚本も凡庸ですが、フェニックスがダサすぎます。トム・クルーズにも、もちろん若き日のロバート・レッドフォードにも及びません。
そこでどのようにこの鈍重なフェニックスを使いこなすかと思っていたら、製作陣は禁じ手を出してきました。それが邦題にモロ現れてしまっています。
この邦題を知った時、ゴウ先生、マズイッショ、と思いました。最近の日本人の英語力は以前よりも高くなっています。
『炎のメモリアル』という邦題ではすぐにだれかが死ぬんだと分かってしまうではないですか!だってmemorialとは「追悼する」という意味の形容詞ですから。そしてだれが死ぬのかとすれば、天下のトラボルタを殺せない以上、自動的に決まってしまいます。
そんなわけで、原題にはネタバレになるmemorialなんて単語は使われていません。そっけなくても、Ladder 49。「第49はしご車隊」という意味であります。日本人は「四」とか「九」とか「死」や「苦」を連想させる不吉な数字がよく選ばれたと思う人が多いと思いますが、アメリカではそんなことは何も関係ありません。
でも、今回見直してみると、拾いものを幾つかしました。そしてそれがゴウ先生の評価を上げる結果となり、無事定期上映会の上映作品となれたのです。
まず、歴史のあるボルティモア市消防署が舞台になのですが、消防士がみんなカソリック信者であるという設定になっています。アイルランドの聖人を祝した聖パトリック・ディのパレード風景が映し出されたり、カソリック式の洗礼式や葬式、そしてミサの模様が何度も出てきます。
消防士というのは、死と隣り合わせの職業についているのですから、信仰を持っているというのは自然のことです。しかし、消防士の世界がここまでキリスト教原理主義的だとは・・・。
911以後の映画である影響がこのような設定に現れたのだと思われます。設定をカリフォルニアあたりの消防署にしていたら違っていたはずですから。
この意味で、イタリア系のトラボルタを消防署長役に起用したことはうなずけます。イタリア系アメリカ人にカソリックが多いことは常識ですから。しかも彼の役は三代に渡って消防士という設定です。つまり、消防士の世界というのは、外部の人間が入りにくい閉鎖された世界なのかもしれないと思わされました。
次の発見は、トラボルタの受けの演技の冴えです。
ゴウ先生のイメージは、いまだ『サタディ・ナイト・フィーバー』や『ガラスの中の青春』などで軽やかにステップを踏むトラボルタであり、『パルプ・フィクション』や『フェイス・オフ』での早口でしゃべる軽いトラボルタなのです。つまり、ツッコミのトラボルタこそ彼のイメージなのです。
それなのにこの映画では、重厚に消防署長を演じきります。悪くありません。フェニックスを救うために現場において無線で指揮を取るシーンは、同僚を失う辛さを押さえた演技で乗り切ります。そして最後の葬式のスピーチから行進にかけての場面では、彼の表情を見ているだけで涙が出そうになりました。
3番目に、主題歌“Shine Your Light”であります。
ロビー・ロバートソン(Robbie Robertson)が唄うバラードが、クライマックスで流れます。最高です。この歌と合わせてクライマックスを見ると大概の人が泣ける状態に連れて行かれると思います。地味な映画が一挙に華やかさを持つ瞬間です。
ちなみにDVDに収録されているPVは、この映画のエピローグのように、フェニックスの妻役を演じたジャシンダ・バレットを使って物語仕立てになっています。映画館でもここまで流せば、もっと人気が出るだろうにと保証します。できないことは分かってはいるのですが・・・。
というわけで、ゴウ先生ランキング:B+
911以後、アメリカ人の子供たちにとって花形職業となった観のある消防士の人生を誠実に描いた品のいい映画です。俗語もほとんど出てきません。お行儀がよすぎるのが地味すぎると言った理由の一つでもあります。
でも日本でヒットしているのはよく分かります。安心して泣ける映画ですから。お子さん連れならば、最高の一本かもしれません。この映画で英語を勉強したい人にも安心してお薦めできます。
付記:『ターミネーター2』のロバート・パトリックが老けていたのが、ゴウ先生、個人的に切なかったです。まさか彼が流体金属になってフェニックスを助けてくれる役を演じてもらえる映画ではないですしね・・・。
キリスト教のくだり、初めて目にした意見なので
とても勉強になりました。
ホアキンの腕にびっくり!!太腿かと思うような・・・
ところで、あんな上司に恵まれるのなら私も転職しようかしら?笑
師弟関係良好!!見ていてほほえましかった分、最後は悲しかったです・・・
先生がご指摘されているように、主題歌“Shine Your Light”は
いい曲でした。泣けました。