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New York Timesの極東観はおかしくないか

2005年09月14日 13時20分22秒 | 時事放談: マスコミ編
自民党圧勝で浮かれる日本の裏側で、New York Timesが現地時間9月11日付で日本と中国との関係は1930年代のような危機的状況に陥っているという記事を載せていました。

Japan's Rivalry With China Is Stirring a Crowded Sea
By NORIMITSU ONISHI and HOWARD W. FRENCH

主題は、ご明察どおり、東シナ海における日本の排他的経済水域を超えたガス田開発を巡るものです。

やはりリベラル派というか左派のNew York Timesです。「日本と中国との敵対関係が、混雑した海を掻き乱している」という見出しにも、どこか中国側に配慮したようなものになっています。

中国側の一方的な開発がいまの日中間の軋轢を呼び込んでいるのは、日本人ならば当然の事実。しかも海が「混雑」してしまっているのも中国の軍艦や潜水艦がどこの国の領海も無視して動き回っているからに他なりません。にもかかわらず、New York Timesは、あたかももともと日本が中国を敵視していたかのような見出しをこの記事に与えているのです。

これが多くのアメリカ人の意識ではないだろうとは思っていても、なんとなく不愉快です。ましてアメリカのリベラル派のインテリが大好きな新聞です。これからの影響の大きさも無視できません。

そして一番悲しいことは、こうした中国寄りの報道をNew York Timesが繰り返していることを大半の日本人が知らないということであります。

英語を勉強するということは、英語で書かれた文章の裏側にある思想・行動を学ぶということです。そうした英語文化全面学習を標榜するINDEC、少し噛み付かせてもらいます。

(長い記事ですので、ここでは全文を引用しませんが、ぜひ通読してみてください。)

主旨は、9月9日に中国の春暁ガス田の周りに中国の軍艦5隻が示威行為をしたのを受けて(読売新聞の記事「春暁ガス田に中国艦隊、日本への示威行動か」を参照)、日中間の対立が台湾沖の海上を巡って激化しているというものです。

まず、New York Timesは今回の中国の軍事行動を偶発的なものではなく、日本の総選挙を睨んで圧力をかけようとしたものだと指摘します。

Although the fleet's mission was unclear, its timing suggested that it was no coincidence. The warships appeared two days before a general election in Japan, whose results could greatly influence relations between Asia's two great powers, and weeks before China is scheduled to start producing gas in the area, against strong Japanese protests.

それもこれも、日中とも戦略的に資源開発に着手したいと思ってのことであり、台湾沖の海上交通をめぐる鞘当てだと解釈します。

Both Japan and China are determined to wield a strong hand in the oil-rich seas and strategic shipping lanes that lie between them.

以上の点は、ゴウ先生も大いに肯けます。しかし、中国と日本の関係が1930年代のような危機的状況にあるという台湾の提督の言葉を引用したのは、いかがなものかと首を傾げるしかありません。

"It is like the 1930's again, when the central Pacific became a vital concern to both the United States and Japan, whose navy was expanding," said Adm. Lang Ning-li, who until his recent retirement was Taiwan's director of naval intelligence. "That means there could be conflict between China and Japan, which both see these seas as vital, and can't share this space."

いまの日本は戦前の日本とは違い、軍国主義も帝国主義も採らないオヒトヨシの国です。日本と中国との間の外交的軋轢が軍事衝突を引き起こすような短絡的なイメージを与える書き方は、決して許されるものではありません。東アジアのことをよく知らないアメリカ人に誤解を与えることにもなるのですから。

そして、戦後の冷戦構造における日本の役割を簡単に説明した後、日本がいまのブッシュ政権と連なって、強硬的な対中政策を採るようになったと指摘します。印象としては、憲法改正から軍国主義的転換を日本が見せることを匂わしているような書きぶりです。

The Bush administration, more suspicious of China than its predecessor, has pushed Japan to take a more assertive stance. It has called for closer ties between the countries' militaries and defense industries and has encouraged conservative Japanese politicians who have long wanted to change the Self-Defense Forces into a full-fledged military and revise the Constitution.

しかし、そんなことがないのは日本のことを少しでも研究したことがある人ならば、明らかです。与党がこれほど圧勝したとしても、即座に戦争を起こすような国にはなれるものではありません。そんなことをすれば、またもや日本は世界の孤児になってしまいます。日本人も日本政府もそれほど馬鹿ではないのです。

ここまででも相当な異論があった記事ですが、中国の外交政策に関するものにはさらに賛成できないものが出てきます。

まずNew York Timesは、これまでの中国の台湾対応を実に「注意深い」ものだったとみなします。それもこれも軍事的にアメリカ政府と対抗できるようにするためだというわけです。

China's leaders have always felt the need to tread carefully in challenging Washington over its security commitments to Taiwan, preferring to bide their time as the economy grows and the military, particularly its air force and navy, develop into world-class fighting forces. Already, by some estimates, the country has deployed 40 to 60 submarines in the East China Sea, and China is rapidly modernizing this force, acquiring quieter models from Russia and developing increasingly sophisticated nuclear submarines of its own.

しかし、このような中国の軍備拡張を肯定するような書き方をされても、戸惑うだけです。ゴウ先生に言わせれば、現共産党政府の中華思想的領土拡張政策こそ、朝鮮戦争以後の極東の平和を乱した最大の要因だからです。

さらに、中国は、膨大な軍事力を背景に、日本に対して台湾問題に関して首を突っ込むなと脅しをかけ続けています。New York Timesもさすがにそのことは正しく伝えています。

But lately, China has shown no such patience with Japan and has moved swiftly to warn its neighbor in unusually blunt terms that any interference with Beijing's designs over Taiwan will be dealt with forcefully. "I would like to say calmly to Japan, the Taiwan issue is a domestic affair and a matter of life or death to us," China's foreign minister, Li Zhaoxing, told his Japanese counterpart recently. "It is dangerous to touch China's matter of life or death."

しかし、次の物言いは何たることでしょうか。

Indeed, a potentially explosive tussle is already being played out over large natural gas reserves and potentially important oil reserves beneath the East China Sea. The two rivals disagree over how to draw the maritime dividing line between them in those waters. China has offered to jointly exploit the energy resources in the area, but Japan has refused. Tokyo, meanwhile, has asked China to share seismic data and other information, and more recently has unsuccessfully urged Beijing to freeze its plans to begin pumping gas.

どうしてNew York Timesは「中国の天然ガス開発とは日本の排他的経済水域の中から天然ガスを掠め取るものである」と書いてくれないのでしょう。太字のところを見れば分かるように、あたかも中国側が一歩下がって好意的に日本に対して共同開発を呼びかけているように見えます。そんな甘いものでは全くないのに!

ともあれ、ブッシュ政権を痛烈に批判し続ける同紙の場合、その政権と蜜月状態にある小泉・日本は、擁護の対象ではありません。むしろ嘲笑の対象であるかのような論評も少なくないのが同紙の特徴です(9月13日付け New York Times社説参照)。それゆえ、以前このブログでも紹介したように(「中華思想にNew York Timesもやられる?」)、結果的に中国寄りの立場を取る記事が多くなるのです。

だからこそ、われわれ日本国民は、日本政府に対して、自国の正当な外交要求をしっかりと世界に向けて発信させていかなければなりません。アメリカ=日本の味方という単純すぎる思い込みに溺れて、適切な国際意識からずれていかないようにしていくべきなのです。

新しい自民党政権にはこの問題の解決をくれぐれもよろしくお願いいたします。
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1 コメント

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勉強不足 (M)
2005-10-25 00:14:14
フェアでない論説が日本に対してなされているのを先生に教えていただくまで気付きませんでした。まったく勉強不足です。
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