忍之閻魔帳

ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)。
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億単位の人形劇「ポーラーエクスプレス」

2004年12月04日 | 作品紹介(映画・ドラマ)
■DVD:「ポーラー・エクスプレス」

この映画、監督はロバート・ゼメキスではなく飯野賢治氏なのでは。
ベッドで眠る少年が飛び起きた時、つまり映画開始3分ほどで、
DCで発売された「Dの食卓2」が脳裏をかすめた。
私は技術屋ではないので詳しいことは分からないが、
「D2」が金と労力の注ぎ方を完全に間違っていることだけはすぐに分かった。
「ポーラーエクスプレス」もまさにそんな映画だ。

進化し続けるフルCGアニメーションの最終到達点は「生身」なのだろうか。
私は違うと思う。
リアル系のCGにこだわった作品に共通しているのは、
姿形を似せることに執着しすぎて、肝心の「命」が入っていないことだ。
髪の毛の1本1本にまで気は配られていても、
そのキャラクターの性格などはまるで見えてこない。
本日より公開の「Mr.インクレディブル」と本作を比べた場合、
どちらの技術力が上になるのかは専門家に聞かなければ分からないが、
少なくともセンスにおいては「インクレディブル」の圧勝だと思う。

ピクサーやドリームワークスの映画にはあってこの映画にないもの、
それは「取捨選択」ではないか。
所詮CGで完全な人間など再現出来ない、という割り切りが出来ていないため、
いつまでも「もっとリアルに!」という呪縛から逃れられないでいる気がする。
たくさんのボーイが湧いて出てきてココアを振る舞うシーンなど、
おそらく夢のある楽しいシーンとして作ったつもりだとは思うが、私は単純に恐かった。
少女が椅子の下にココアを持って入って行った時、
「きっと恐いから逃げたんだな」と信じて疑わなかったぐらいだ。
(結局は別の理由だった)

巨大スクリーンで上映されることを念頭に置いているのか、
高いところから急降下したり、ジェットコースターに乗っているような視点になったりと
やたらとアトラクション的な演出が出てくるのも映画の雰囲気に合っていない。
この手の演出は20分ぐらいで終わるテーマパークのアトラクションならアリだが、
長編映画でこう何度も何度も使われると辟易してくる。
「信じることを止めてはいけませんよ」というクリスマスらしいテーマをもっと押し出し、
アトラクション的な要素をぐんと減らすだけでもずいぶん印象が変わったと思うのだが。

唯一、無条件に良いと思ったのは音楽(というか歌)だ。
少しだけサントラCDが欲しくなってしまった。

この映画ではトム・ハンクス本人の体を使って顔や動きをそっくりに再現しているが、
本物と寸分違わぬCGのトム・ハンクスが完成したからと言って、
生身のトム・ハンクスが用無しになるわけではない。
それはきっと、5年後でも10年後でも同じことであろう。
膨大な製作費をかけて壮大な人形劇を作ることで
「偽物はどこまでいっても偽物なんだよ。大事なのはやっぱり人間なんだよ」
という裏テーマを確信犯的に埋め込んでいるというのなら、
ロバート・ゼメキスはやはり偉大だ。

違うと思うが。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:ポーラーエクスプレス
    配給:ワーナー・ブラザーズ
   公開日:2004年11月27日
    監督:ロバート・ゼメキス
   出演者:トム・ハンクス
 公式サイト:http://www.polar-express.jp/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
コメント (9)
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