忍之閻魔帳

ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)。
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音楽以外はまだまだ同人レベル「雲のむこう、約束の場所」

2004年12月05日 | 作品紹介(映画・ドラマ)

■DVD:「雲のむこう、約束の場所」


日本酒は等級が上がると酒税も上がるらしい。
その為、安価で良質の酒を提供したい小規模の酒蔵などは
一級の認定を断り、敢えて二級酒のまま販売すると「夏子の酒」で読んだ。

本作で晴れてメジャーデビューと相成った新海監督だが、
一級を名乗る(メジャーに乗る)のは少々早過ぎたと思う。
監督はもとより、製作に関わったスタッフも、配給を請け負ったコミックスウェーブの担当者も
非常に結束力の強いグループで製作されたであろうことは伝わってきたが、
そこに「商売人」としての視点を持つ人間は存在していなかったのではないか。
関係者全員が新海監督を崇拝していると言うか、
やることなすこと全てOKにしたのではないかと思うフシがある。
好きなことだけをやり、分かってくれる人だけ分かってくれという
やり方が許されるのは同人レベルまでだ。
新海監督が本気でメジャーの土俵で勝負していくつもりなら、
一見好き放題にやらせているようで、
要所要所ではちゃんと軌道修正をしてくれる女房役を早急に見つけるべきだろう。

最大の失敗は、登場人物が「多くを語り過ぎる」ことだ。
主人公も脇役もとにかく饒舌な上に使っている言葉がいちいち説明っぽい。
私の周りにもPCのエロゲーやギャルゲーが大好きな人間が何人かいるが、
「これはいいから!泣けるから!いやホントに!騙されたと思って!」
と言われて借りてみたソフトの90%にも同じことが言える。
どれほど泣けるエピソードを用意しようが、
肝心の文章力が文語と口語の区別すらついていないようなレベルでは
世界に没入する前に萎えてしまう。

声優に吉岡秀隆や萩原聖人などの俳優を起用しているのも疑問だ。
この手の絵(オタク向け)と話(オタク向け)なら、現役の声優だけで作っても良かったと思う。
吉岡も萩原も、よく理解しないままに黙々とこなしているように聞こえた。
際だって下手なわけではないが、彼等を起用した理由も見つけられなかった。

今回、手放しで絶賛出来るのは天門が手掛ける音楽だろう。
これは本当に素晴らしい。
DVDが発売される時には、台詞を抜きにして音楽と絵だけで鑑賞出来るモードを付けて欲しい。
サウンドトラックアルバムの発売は来年2月とまだ少し先だが、
その時まで覚えていたら購入したい。覚えていたら。

新海監督は良質な二級酒を提供する酒蔵の杜氏の方が向いているかも知れない。
吉岡や萩原のような一般の映画ファンにも知名度の高い俳優をキャスティングし、
「ポスト宮崎」だ何だとフカしまくりの広告展開で煽れば、
私のように「それほどかぁ?」と思う人間が絶対に出てきてしまう。
監督の年齢からしても、
住み慣れた世界でもう少し鍛えてからでも決して遅くはないと思うのだが。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:雲のむこう、約束の場所
    配給:コミックス・ウェーブ
   公開日:2004年11月20日
    監督:新海誠
   出演者:(声)吉岡秀隆、萩原聖人、他
 公式サイト:http://www.kumonomukou.com/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
コメント (24)
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