モロシになりそう。
~松方弘樹
深夜に目覚めて思い出した。目黒祐樹の兄は松方弘樹だ。
弟の名前を思い出しても、兄の名前がしばらく思い出せなかった。二人の名字は違うが、下の名は同じだ。そう思って兄の〈○○祐樹〉を探し続けた。
だが、考え直した。兄弟で下の名がまったく同じだなんて、ありそうにない。ただし、〈樹〉は同じだ。間違いない。
そう思うと、〈春樹〉という文字が浮んだ。村上春樹という知人がいた。あの有名な小説家とは別人だ。戦後、「春樹」という名が流行した。ちなみに、知人の春樹の従妹の名は「真知子」だった。
とにかく、〈春樹〉ではない。〈春〉の字が抜けて空白になり、その左に〈宏〉という字が出て来た。これは知人の名前の一部だ。〈宏〉の字が消え、空白の右に〈弘〉の字が出た。これも知人の名前の一部なので、違うと思ったが、すっと空白に収まり、名字の頭に〈松〉が出現した。〈松島〉と思ったが、いや、違う。すぐに「松方」を思い出した。
不思議だ。〈ヒロ〉という音を思い出す前に〈宏〉や〈弘〉の字が出て来たのだ。
目黒がデビューしたとき、私は「祐樹」を〈ヒロキ〉と読み、〈親の七光りを拒むようでいて、兄の威光を利用するのだ〉と誤解し、冷笑した。
Ⅰ 二人の下の名の音は同じだ。
Ⅱ 二人の下の名の字は別だ。
Ⅲ 二人の下の名の字は同じだ。
意識はⅠを否定した。ところが、無意識はⅡをも否定してしまい、その結果、Ⅱの主語とⅠの述語が混合して、Ⅲが生じたらしい。
反省によって、否定されたⅠの〈ヒロ〉が無意識に〈宏〉を呼び寄せ、これが媒介となって〈弘〉に繋がったのだろう。
松方弘樹を思い出してから、また眠った。夢に松下奈緒が出て来た。前夜、テレビでちらりと彼女を見た。インタビュアーをやっていたようだ。松の下の名は?
私はある男と夜道を歩いていた。彼は、二人の知人が合体したような感じだった。なぜか、急いで横断歩道を渡った。救急車が停まっていた。以前住んでいた共同住宅の近くだ。彼女が寄ってきて、歩きながら質問をした。以下、省略。
ところで、ヒロシを漢字で書くと何だろう。博士か。疲労死じゃないよな。
(終)