笑うしかない友
~882-6262
「葉っぱ煮ろ煮ろ肉腐れ」って知ってる?
聞いたこと、ある。
何だっけ。昨日、突然、口を衝いて出たんだ。
大橋巨泉でしょ。
あれは「はっぱふみふみ」
何、それ。
CM。
何の?
万年筆。
ああ。何となく。
「みじかびのきゃぷりきとればすぎちょびれすぎかきすらの」
「はっぱふみふみ」
そう。
どういう意味。
短めのペンで、キャップをきりっと取ればすぐに書けて、すらすらと葉っぱを踏むようにぱっぱと楽に手紙が書ける、みたいな。
思い出した。その万年筆、持ってた。
便利だったね。
わかった。ルートでしょ。
違うよ。
違う?
「一夜一夜に人見頃」は?
ルート2。
「人並みに奢れや」はルート3で。
「富士山麓に鸚鵡鳴く」はルート4よね。
ルート5。
ええ? じゃあ、ルート4は?
あのねえ、ルートってのは……。ああ、もう、いい。ルートじゃない。
「水兵リーベ……」って違うよね。
言わず鼯鼠。
語呂合わせなら、88262629930でしょう。
思い出した。「腐れ」は〈9去れ〉だ。
面倒くさい。
だから、8826262だ。
七桁ね。
電話番号かな。
そうだ。電話番号だ。882の6262。
誰の?
ええっと。知り合いじゃないな。
会社とか?
読んだんだ。そうそう、あの有名な歌人。
歌人って、いつの?
昭和。で、評論家。
塚本邦雄?
そうだ。あいつだ。自分の電話番号の語呂合わせをやって自慢してた。
ああ。読んだ。思い出した。エッセイのタイトルが「葉っぱ煮ろ煮ろ肉腐れ」だ。
「肉腐れ」で、ついダイヤル9を回しそうになっておたおたする人の姿を想像すると楽しい、とか書いてたね。
意地悪。
はっきり思い出した。そのページも見えてきた。
それからよ、あなたが語呂合わせを始めたのは。
そうかな。思い出せない。
私んちの、作ってくれたじゃない。
忘れた。
忘れたの?
思い出せない。
それ、ボケよ、きっと。
今、君の090は「送れ」だよね。
あなたのは?
僕のは「遅れ」だ。
(終)