『冬のソナタ』を読む
「道に迷う小鳥」(下p5~23)
3 「人を殴るのはいけないとでも教わったのか?」
三角関係が激化して、ミニョンはチュンサンに似てくる。まるでユジンとサンヒョクの不和が人格化したみたいだ。
*
サンヒョクは、側(そば)にいてくれるだけでいいとの気持ちまでも拒否されると、ユジンの肩を強く揺さぶりながら睨み付けた。
「何の真似です?」
突然ミニョンの声がした。レストランを出てから散歩をして宿舎に戻って来たミニョンが二人を見つけ、怒鳴るサンヒョクに言った言葉だ。
ミニョンは二人に近づくと、ユジンに部屋へ入るようにと言った。ユジンがその言葉に従うべきかどうか迷っていると、サンヒョクがミニョンの胸ぐらを摑んだ。
「殴りたなら、どうぞ。僕はいくら殴られても構わないけど、ユジンさんに乱暴をするのは我慢ならない」
ミニョンが睨み付けながら言った。
「どうしました? 殴れないんですか? 人を殴るのはいけないことだとでも教わりましたか?」
ミニョンは冷ややかな笑みを浮かべながらサンヒョクに言った。その言葉を聞いた瞬間、サンヒョクはミニョンから手を離してしまった。その姿に、昔のジュンサンが重なったからだ。
そう、十年前の体育の時間、そのときもサンヒョクは今のようにジュンサンの胸ぐらを摑んでいたのだ。
「どうした……? 殴れないのか? 人を殴るのはいけないとでも教わったのか?」
挑発的な言葉や世の中を判断する独特な物差し……二人はあまりにも似ていた。
(下p14~15)
*
チュンサンの空想では、「人を殴ってはいけない」とサンヒョクに教えたのはサンヒョクの父親だ。ミニョンの空想では、誰だろう。
このすぐ後、ミニョンはサンヒョクの父親に出会う。
(終)