漫画の思い出
林静一
『赤色エレジー』
名作。大流行。
あがた森魚が歌にして、さらに流行。彼が歌っている後ろで舞踏家がヒクヒクと踊っていた。
この作品のおかげで、漫画青年は文学青年よりも偉くなった。ただし、文学はすでに滅びつつあった。
この作品は、面白くもないし、おかしくもない。凄いだけだ。やがて、林は、漫画家の漫の字を取って、画家になる。その象徴のように、作中の漫画青年は死ぬ。
幸子の指鉄砲で一郎は撃たれる。ところが、床を流れる血は本物だ。
「明日になれば 朝がくれば 苦しいことなんか忘れられる 昨日もそう思った」
ジャーン!
白黒反転。
漫画の甘ったるさを極限まで追求したら、ひりひりするようなえぐみだけが残った。
(終)