(書評)
塚原洋一:漫画/片岡健:原作『マンガ「獄中面会物語」』(笠原出版社)
能動的に動く人の考えを知ることが大事だ。被害者ではなく、加害者の気持ちを知ること。
*
殺人犯との面会を 重ねる中 私はある時期から 強く感じるようになったことがある
それは「悪人」だと思える 殺人犯が まったくいない ということだ
(『マンガ「獄中面会物語」』「終章」)
*
獄中で性格が変わったのかもしれない。だが、そうとも言い切れないようだ。
(終)
(書評)
塚原洋一:漫画/片岡健:原作『マンガ「獄中面会物語」』(笠原出版社)
能動的に動く人の考えを知ることが大事だ。被害者ではなく、加害者の気持ちを知ること。
*
殺人犯との面会を 重ねる中 私はある時期から 強く感じるようになったことがある
それは「悪人」だと思える 殺人犯が まったくいない ということだ
(『マンガ「獄中面会物語」』「終章」)
*
獄中で性格が変わったのかもしれない。だが、そうとも言い切れないようだ。
(終)
月夜の笑まい
詩 L
夕暮れの市場で見え隠れした
因果
指先で手まさぐると
そいつは男の肩になった
ので
あたしときたらばしめやかに
優しい小動物に戻ってやった
うしろめたいような風が頬をさすり
猫が一匹 月のお山に駈けていった
月はひたすら冴え冴えて
淫らな笑まいを降りそそぐ
めくるめく渦中に
また行ってしまった 小手先の淫蕩
かすかな痛みは遠のく汽笛でごまかした
兩切り煙草を口にくわえて
黄泉の国まで行こうなら
あたしの口紅は
いつだって赤い
(終)
(書評)
岸本裕史『ドラえもんの学習シリーズ ドラえもんの算数おもしろ攻略 改訂版 算数まるわかり辞典 4~6年生』(小学館)
(12)わり算の商を分数で表す(p92~93)
〈18÷0=?〉は無意味だ。このことについて、ネットでいろんな説明がしてあるが、私の見た限り、どれも数学的説明であって、算数的説明ではない。だから、小学生や小学生並みの大人には納得できない。ある手品のトリックを別の手品で解き明かしているみたいに思えるわけだよ。
*
正の整数、小数、分数および量の計算を中心に、数量に関する日常の具体的な計算や知識を取扱う数学の初歩的段階。
(『ブリタニカ国際大百科事典』「算数」)
*
「日常の具体的な」という点が肝腎なのだ。「数学の初歩的段階」というのは怪しい。
〈18÷0=?〉を日常語に言いかえてみよう。〈18の中に0はいくつあるか〉となる。
さて、〈0〉とは何か。「数えるべきものが一つもないこと」(『広辞苑』「零」)だ。したがって、先の文は〈18の中に「数えるべきものが一つもないこと」はいくつあるか〉となる。無意味だろう。
たとえば、〈18㎏の砂糖を入れる袋が1袋もないとき、1袋に何㎏入れるか〉って、どういうこと? 〈分けないけど、分けよう〉なんて、まったく話にならない。
*
問題
2㎏のさとうを、3つのふくろに等しく分けると、ふくろ1つ分のさとうの重さは、何㎏になるでしょう。
(p92)
*
解答後、偽ドラえもんは、突然、「3/5と0.6は、等しい大きさの数だってことだよ」(p93)と言い出す。話が違う。
そもそも、分数の横線(/)と割り算の〈÷〉は同じ意味の記号だ。計算してみたら、たまたま、あるいは必ず、同じ答えになるというようなことではない。ついでに言うと、比例の記号〈:〉も同様。つまり、割り算の答えと、分数と、比の値は、同じ。だから、さっきの〈18:0〉なんて無意味なのだ。比べるものがないんだからね。
偽ドラえもんは、「2÷3=0.6666…となって、ちゃんと表すことができないよね。でも分数を使えば、わりきれない数でも、きちんと表すことができるんだ」(p92)と言う。いや、「0.6666…」で「ちゃんと表すこと」ができている。〈0.6あまり0.2〉でもいい。
2㎏の砂糖を3つの袋に分ける場合、日常的には、ほぼ0.5㎏をそれぞれの袋に入れてから、残ったほぼ0.5㎏をさらにほぼ三等分する。それは、0.1㎏より多いが、0.2㎏より少ない。1袋に入れるのは〈0.6㎏と0.7㎏の間〉だ。
つまり、〈0.6<2/3<0.7〉ということ。
この不等式を実感するには、たとえば、〈2mのテーブを三つ折りにしてその1本の長さを物差しで測る〉というような作業の方が簡単だろう。
偽ドラえもんは、わざわざややこしい問題を拵えている。変なロボット。
(終)