こりゃあ、アウトかもね、腹腔鏡手術は免れまい、
と観念していたけど、間に合いました。恩寵により。
ランナーは三塁ベースを蹴ってホームは目の前となったが、どう見てもタイミングはアウト! 立ちふさがるキャッチャーには絶好球が戻ってきた。審判も右手を挙げかかっている。
ところが、ところが、次の瞬間、驚いたことに、キャッチャーミットから白球がポロリとこぼれる。審判はあわてて両手を大きく水平に開き、「セーフ!」と大声で宣言した。
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前報のとおり、3月3日に“巨大大腸ポリープ”の切除を受け、切除したモノを視認するに医師もおらもその醜悪さに一驚し、「これじゃあ、間違いなくがんだわな」ということになりました。問題はそのがんがどこまではびこっているかです。切除したモノの精密な検証結果がわかるのが、2週間後の去る18日でした。
2週の間、おらとしては、じりじりするような思いでおりました、ずっとね。どうやらがんの根っこというか触手というか、そいつは大腸の壁の外まで滲出している可能性が高く、たぶん腹腔鏡手術は免れないなーという感想というか、心の持ちようというか、諦めというか、そんな精神状態にありました。手術のため少なくとも10日程度の入院を余儀なくされたら、例の猫「にゃ」をどうすんべか、と、そのことに一番心を煩わせていました。
18日当日は、午前10時半から11時までに来院せよ、との指示でしたが、間違いなく診察がずれ込むから、再診受付のリミット11時に受付に入れば十分とのことでした。案の定、順番が回ってきたのは午後零時半近くで、それまでは外来患者の大方が帰って閑散としたあちこちのベンチを移動しながら、じりじり心境の総決算をやっておりました。
やっと順番、最後の人から3番目、が回ってきて、K医師と対面すると、彼はパソコン上の例の画像をじっと眺めており、「ああ、あの大きなポリープを取った人だね」とポツリ。同じような患者が多くて、とても個々の人間まで覚えていられないのでしょう。おらのことなど覚えておらんわけですが、切り取ったモノはちゃんと覚えているってわけなんですね。
んで、次の画面を開くと、なにやら、書いてある文字群が見えるが、それだけ。すると、彼は奥のほうに向かって、「画像が入ってねーぞ!」と大きな声でのたまうが、奥の看護婦だか事務だかのおしゃべりがピタッと止んだだけで、返事はなし。入ってねー、というのは検体の画像なんだろうけど、ない、つうのはどうゆうこと? どないしてくれるンねんと思いつつ、おらはややうつむき加減で彼の次の言葉を待っていました。
彼は画面の文字群を読んでいるようでしたが、やがて、「ウーン」。このお医者は、ウーン、が口癖のようです。「切り取ったモノを顕微鏡で詳しく検査しましたがね、やっぱりがんになってましたね。早期がん!」 うーん、来たか、やっぱそうだよな、あれじゃあ。この「うーん」は、おらの内心の声です。
何秒たったのか、彼の次の言葉は、「しかし、うまい具合に粘膜あたりでがんの根っこはとどまっていたんだねえ。そういう所見が書いてある」。そして、おらが画面の記載を読むように勧めてくれた。確かに、精査の結果、がんは「粘膜下層」(または「粘膜」だったかも知れないが、やや動転していて明確でない) にとどまっているとの趣旨が書かれていた。
思い返せば、切り取ったモノのきのこの傘の部分は相当のひどさだったが、軸の部分に着目したK医師が「軸は意外に程度が良い」と述べたのはまさに正鵠を射ておったわけです。ちなみに、おらのように、長期にわたって放置された大腸ポリープは多くの場合がん化していくが、それは腸壁の反対側、つまり、きのこ状のポリープならきのこの傘のほうからがん化していくとのことです。おらのは、発見が遅いようではありましたが、大げさではなく、タッチの差で間に合ったのであります。
「それでね、検査結果がこういうことだとね、この間も話したように、がんでもいいような取り方をしているから大丈夫、これで治療は全部終わりですわ。あなたの大腸がんは、もはや治っちまったと考えてよいでしょう。」
「へっ、がんというと、今後、抗がん剤とか放射線とかいうことにはならんのですか」と、浅学なるおらの質問。
「ウーン、それはね、がんの全部を取り去っているんだから、狙う相手がおらんわけだよ。おらん敵に鉄砲撃ってどうすんだよってことだよね。半年ばかりたったら、いっぺん中を見てみたいから、また来てちょうだい」。つうことで、早々に診察室を追い出され、従いまして、「先生の神業的腕前で助けていただきました云々」などと、おべんちゃらとも言い切れないお礼を述べる暇もなく、おん出てきた次第です。
思いがけず、大腸がんの手術を覚悟する事態になってしまいましたが、これもまた思いがけず、その事態から解き放たれて、帰宅いたしました。 (③につづく)
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K医師の切除後の説明には、「もしかして大腸の外までがんが滲出していると云々」ということがありましたが、そういう事態は下の画像の「T4a」ということになり、腹腔鏡、場合によっては開腹手術となるわけです。おらの場合は、まさに恩寵により、「T1の後期程度」におさまってくれていたということなのでした。From ・大腸がんの病期(ステージ)とは?|小野薬品 がん情報 一般向け (ono-oncology.jp)
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付記・分類の仕方がやや異なるのですが、下のような仕分けもあります。なんにしても、みなさま、どうぞ大腸にもよくよくご注意なさるようお願いしますよ。「大腸がん検診」(検便による潜血反応検査)は機会あるごとに必ず受診して、怪しいやつがどんどん育っていかないよう見張りましょう! 出来れば、たいした費用ではないので、胃と大腸の内視鏡検査をしたら良いと思います。
大腸がんステージ分類
ステージ0:がんが粘膜の中にとどまっている。
ステージⅠ:がんが大腸の壁(固有筋層)にとどまっている。
ステージⅡ:がんが大腸の壁(固有筋層)外まで浸潤している。
ステージⅢ:リンパ節転移がある。
ステージⅣ:遠隔転移(肝転移、肺転移)または腹膜播種がある。
from/大腸がんを学ぶ 大腸がんのステージ(病期)分類と治療方針|大腸がんを学ぶ|がんを学ぶ ファイザー (ganclass.jp)